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双剣の英雄  作者: ラズ
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1-4

「そういえば。さっきのお前の名前がわからない件だが……。わかるかもしれない」

 カナエがそんなことを言い出したのは、僕が気恥ずかしさから回復してからだった。

「え?」

「さっき身を清めていた時に気が付いた。ステータスを見れば、わかるんじゃないかと思う」

「ステータス?」

 僕は聞き覚えのない言葉に首をかしげる。

「……そこもおぼえていないんだな」

「――ごめん」

 どうやら、僕は一般知識でさえ抜けているらしい。カナエの口調からして、ステータスは一般常識の範囲にある知識みたいだ。

「いや、お前が悪いわけじゃない」

 カナエが首を振ると、僕の方を見た。

「お前には命を助けてもらった恩がある。ずっととは言えないかも知れないが、俺のできうる限りは側に居て、お前を守ろう。足りない知識も俺が教える」

「へ? え? ち、ちょっとまって! そこまでしてもらうなんて……」

「じゃあ、お前はこの状況下、放り出されて生きていける自信はあるか?」

 僕は言葉に詰まった。自信がなかったからだ。

「俺もみすみす、恩人を死なせたくはない。俺はお前に会う前、死にかけたあの時、命を諦めていた。それに……俺に戻るところはもうない。諦めていたところをお前に拾われた。――だから、お前の傍にいようと思う。だめか?」

「……いや、だめじゃないけど……。」

「なら、決まりだ」

 かなり強引に話がまとまったような気がする。けど、カナエが行くところが無いっていうなら、側に居ても……いいのか?

 僕はすこし、途惑いつつカナエを見るが、カナエの表情は無表情のままだ。

 なんというか、喜怒哀楽が乏しいのかな? カナエって。

 そう思いつつ、一般常識ですらあやしい僕にとっては願ったり叶ったりの申し出だったので、こくりと頷いた。



「じゃあステータスの話からだ」

 気を取り直して、カナエは僕に説明を始めた。

「ステータスとは、簡単に説明すると、個人に刻まれた、その個人の詳細な情報の塊のことだ。これは個人個人でそれぞれ能力値や種族、職業の違いがあり、これによってこの世界では身分が証明されるように出来ている。尚、『ステータスオープン』と心の中か声に出して唱えることで、自分の情報が自分にのみ開示される。ちなみにこの情報を他人にみせようとするならば、『ステータスフルオープン』と開示するという意識をのせつつ、声に出して唱えなければならない。……ここまではいいか?」

「うん」

「だが、これらの呪文による情報開示は非常に危険な側面を持っているんだ。だから、通常は……そうだな実際に見た方が早いな」

 カナエはそういうと、懐から、薄い手のひらサイズの透明な板を取り出した。

「これは、データクリスタルというものだ。このデータクリスタルに、然るべきところで、開示しても問題にならないステータスの写しを登録することができる。だから、通常は、このデータクリスタルで身分や能力、種族を証明することができるようになっている」

 そう言うと、カナエは僕を見た。

「それで、お前はこのデータクリスタルに見覚えはあるか?」

「ない」

「そうか。なら仕方が無いな。データクリスタルをもっていないなら。『ステータスオープン』しか方法が無いだろう。本当は、あまり使わない方がいいんだが……」

「どうして?」

「『ステータスオープン』は、通常は自分にしか見えないものなんだが、特定のスキルを持っているものには丸見えになる。もし、悪人に見られでもしたら目も当てられない状況になるんだ」

 そこまで、一気にカナエは話すと、ため息を吐いた。どうやら、カナエは僕が『ステータスオープン』を唱えるのを躊躇っているようだ。僕は首をかしげる。

「で、どうして、今、あまり使わない方が良いの? カナエしかいないのに」

「――正直に話そう。俺はその特定のスキルを持っている。……だから――」

 僕はもう一度首をかしげて、カナエを見て言った。

「カナエは僕のステータスを悪用するの?」

「するわけがない」

 即答だ。

「なら、いいじゃないか。心配することはないよ」

「……だが。――すこしは警戒しろ」

「したって意味がない。大体、個人の情報と言われても、僕は覚えていないから、もしかしたら開示された情報も理解出来ないかも知れない。だったら、僕はカナエがいてラッキーだったね。その上、スキル?で同じものが見られるんだから、説明してもらえるだろうし」

「――」

「ま。もし、カナエが僕の情報を悪用するなら、それは僕のカナエをみる目がなかったってことで自業自得ってことだよ。カナエが気にすることは無い」

「……お前」

 カナエの変わらなかった表情がすこし驚いているように見えた。だから、

「僕はカナエを信じるよ」

 僕はそう言って笑った。



「精神を集中して、唱えるだけだ。雑念は捨てろよ。情報がよくわからなくなる」

僕は今、初の『ステータスオープン』の挑戦に緊張していた。

カナエのアドバイスをしっかり聞いて、精神を集中させていく。

「わかった。じゃあいくよ」

『ステータスオープン』

呪文を唱えた瞬間、浮遊感に襲われる。

すると、眼前にブルーの透明な背景が現れ、その上に金色の文字が書き込まれていく。

そうして、浮遊感がおさまると、文字が書き込まれるのも止まった。


―――――――――――――――――――

名:シュライク 性別:男性

種族:精霊 年齢:0歳(0ヶ月)

傾向:混沌/善

属性:無属性

職業:―――

状態:封印 現出


体力:C

魔力:S

筋力:S

守備:C

精神:A

俊敏:A

幸運:D


職業スキル

~封印~


身体スキル

~封印~


個人スキル

~封印~

―――――――――――――――――――


「「……」」

 僕たち2人はあまりの予想外の結果に呆然としてしまった。

「――え? え!? ……僕ってもしかして記憶が無いわけじゃなくて生まれたてだったってこと? ていうか、精霊? 人じゃ無くて、精霊!?」

「ま、まて。落ち着け……」

「カナエ! 僕、人じゃ無かったの!? ていうか、封印って何!? 現出って??」

「落ち着け!」

「無理! 落ち着いてられるかぁ!!!」

 パニックに陥った僕が洞くつのなかで叫んだのも、仕方の無いことだと思いたい。

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