8.流れる時の中で、君は
どうも、ReiL=デス。
処女作故至らない点しかないと思いますが、どうぞお付き合い下さい。
「痛っ」
「キャアッ」
唐突に闇に薄い光が射し込んだと思ったら、人ひとり分ぐらいの高さに放り出され、尻餅をつく。上を向くと漆黒の闇が人の頭ほどの大きさで浮かんでおり、どうやらそこから出てきたようだ。横でかわいらしい悲鳴が聞こえたのでそちらを向くと、リィンと目があった。どうやら二人一緒に飛ばされたらしい。
「ったく、どこだここ…」
とりあえず現状確認だ。立ち上がりながら頭の中で念じ、ステータス、アイテムなど変わっているところがないか確認する。特に異常は見受けられない。なにか異物感があるのだが、具体的に念じられない限り分からない。少々不便だが背に腹は変えられないだろう。
立ち上がり見回してみると、モノクロで分かり難かったがマール中央広場近くの裏路地のようだ。モノクロの景色の中で唯一2人だけが色彩を帯びており異常なほど目立つが、それを見る者はいない。
「リィン、大丈夫?何か異常はない?こっちは何もなかったけど…なんか異物感があるくらい…かな…?」
「うん、大丈夫。ステータスとか色々見たけどなにも変わってないよ。うん、なにも…」
後半やや自嘲気味になるリィン。リィンには悪いけど二人とも特に良くも悪くも変わってなかったのは良かったと言うべきかな?
「異物感は私にもあるよ。只何か分からないのがもどかしいなぁ…」
苦い顔を浮かべながら頭を掻くリィン。すごく様になっている……っとと、こんな事考えてる場合じゃないな…
「どけっ!邪魔だっ!」
走る足音がしたと思うと、怒気を含んだ表情で一人の男が駆けてくる。思わず道を譲ると、あっという間に走り去って行った。
「なんだ今の…」
「どうやら決闘中みたいね。相手を追っているように見えたけど相手方はどこにいたのかな…?」
「逃げてきてただけじゃないのかな?それにしても決闘…か…」
ーーそう?嫌ならいいんだけど、ただ君は死ぬかもねー?ーー
無邪気な、しかし一方で不気味な声を思い出し、アイドは身震いした。影の塔で決断を迫られ、家臣になることを断っていたらどうなっていただろうか。ロキに自分たちを含めた箱庭のすべてを支配されていることを改めて実感する。
「とりあえずなにをすればいいんだろ…。リィン、どうする?」
「確か私たちに課された任務は決闘をしてプレイヤーの箱庭への帰還の妨害…あとは陽の塔に行ってプレイヤーを殲滅すること…だったかしら」
やはりリィンは頼りになる。こちらが頼られなきゃいけないのに恰好がつかないな…
ー ……ジッ……
「…ん?」
「…あれ?」
静寂を破る唐突なノイズ。念話というかテレパシーというかその手のことが始まる前兆だったかな、今まで読んできた小説の話だけど。兎も角今このタイミングで考えるのは一人しかいない。
ー ……よし、繋がったかな?やっほー!聞こえてるー?ロキだよー!
…やはりロキだ。そしてなぜか声が女性のものに変わっている?それはおいておいて、リアリティを求めているこのゲームでテレパシーができるとは驚いた。俺たちが呆気にとられている間もロキは騒ぎ続ける。
ー おーい聞こえてるー?あれー?あ、返事は普通にしゃべればこっちに届くからねー!
「…聞こ…えてる。」
俺が答える。
ー よかったー!いやいやー新たに追加したシステムだったからちょっと不安だったんだよねー!繋げても二人とも黙っちゃってたから分かんなかったよー!全くもう!あ、因みに君たち二人の間でもできるからねー!
拗ねたように言うロキ。とても可愛らしい声なのだが、この箱庭の現状を鑑みるとその可愛らしさも霧散する。それにしても今のロキの姿はどんなものなんだろうか。ちょっと見てみたくはある。
俺がそんな煩悩を働かせている間にも隣でリィンはなにか考え込んでいるようだ。
「ロキ、俺たちはどうすればいいんだ?」
とりあえず指示を仰いでみる。未だ勝手がわからないこの箱庭で放り出されても思うようにことが進められないからな。
ー 指示もしたいんだけどー、とりあえずルール説明からー!裏箱庭の細かいルール君たち知らないでしょ?
「わかった。教えてくれ。」
隣でいまだにリィンが黙っているのが不安ではあるが、ロキの言葉に従っておく。ここでヘンに意地を張る意味もないしな。
ー んじゃ始めるよー!とりあえずここが箱庭のコピーだってことは話したよね?
ロキを初めて見たときが思い出される。
「それと決闘の世界…ってことは分かってるが、細かいところが分からないんだ」
ー りょーかいりょーかい!んじゃ細かい条件だったりの説明すると…裏箱庭への転送条件は箱庭での戦闘不能。これはいいよね!そして裏でのスタート地点は表で死亡した位置に対応しているんだ!
楽しそうに話すロキ。
ー 決闘についてだけど、非戦闘型のプレイヤーに救済措置があるって言ったよね?それが自動マッチングシステム!できるだけ同じ武器、同じ防具、同じステータスの人と決闘が行われるんだ!ほとんど近い戦闘力の人との決闘になるね!
…なるほど、確かにそれなら公平といえるだろう。よく考えたものだなぁ。。
ー 表での戦闘不能からすぐには決闘できないんだ!午前と午後のちょうど12時に自動マッチングシステムが働いて、決闘が始まるよ!12時間を一回区切りとしているんだ!その間に決着がつかなかった場合は仕切り直しされるよ!
なにがこんなに楽しいんだろうってくらいのテンションで話すロキ。しかし、あれ?さっきのはどうなるのだろう。ゲーム自体始まってから大して時間は立っていないが…
「さっき決闘中っぽいのを見たんだけど…」
ー それはちょろっと説明用にこちら側で勝手に始めさせてもらいました!とりあえずあとで説明するからね!
改めてロキの力を思い知りつつ、承諾する。
ー 決闘が始まったら相手の居る方向が念じるとわかるようになるんだ!だから隠れるとかは無駄なんだよね!不意打ちとかも相手が気を抜いていないとできないかな!正面からぶつかりあってもらうことになるね!
公平性はかなりあるだろう。不意打ちとかの小手先の技が通用しないのであれば、全力でぶつかるしかない。そして先ほどの男の行動にも納得がいった。
ー 決闘に勝った場合は表に戻るよ!最寄の街にてリスタートされるんだ!
死んだ地点の近くに敵がいることを考慮してのシステムだろう。リスタートしてからすぐに死亡とかシャレにならないからな…まぁ俺には関係ないか。
ー 負けた場合は裏のどこかでリスタート!ペナルティは次の回のマッチングされる時から24時間、マッチング対象外になって決闘ができないんだ!つまり2回分のマッチングが終わるまで待機しなきゃいけない。さすがに負けてもすぐに決闘できちゃったりすると張り合いがないからねー!
俺らの任務の一つに決闘をして相手プレイヤーの箱庭への帰還の妨害があったよな…。ってことは…
ー そして君たちにしてもらいたいのは相手に勝ってペナルティを与えること!でも君たちにはちょーっと特殊なことをしてもらうんだ!
不安になるようなことを言うなよ…まぁ今更かな…
ー それは決闘への介入!君たちにはすべての決闘の観戦と介入できる能力を付与させてもらったよ!ちょうど一組の男が決闘をしているみたいだからちょっと試してみてよ!
ロキに言われ、念じてみる。するとリストのようなものが浮かび、一組のプレイヤーの名前が現れた。その一組を念じると、現在の二人の様子が鮮明に分かった。先ほどの見た男が攻勢に出ており、相手方の男は応戦しているが防戦一方だ。
ー 出来たみたいだね!じゃあさらに念じて介入してみてよ!
念じる。すると決闘開始のファンファーレが頭の中で鳴り響く。念じるみると、二人のいる方向も分かったが、観戦の能力も同時に使えたので、状況把握にはこちらのほうが良さそうだ。2人も一瞬止まったのは恐らくこちらの参戦を認識していたからであろう。しかしすぐに戦闘に戻っていた。
ー よしっ!じゃあ早速二人を倒してみよう!今戦っているのは君たちの介入はわかるが何処にいるかは分からないよ!言いたい事はわかるよね!あ、あと君たちが勝っても表には戻れないよ!家臣だしねっ!
声が変わっても特徴的なロキの笑いを耳にしながら、仕方なく駆け出す。当たり前ながらリィンも同じことをしていたようで、駆け出していた。
*
案外離れていなかったようで、戦闘中の二人はすぐに見つかった。細い路地裏でリィンと打ち合わせて俺が後ろに回り込む。念話でリィンに合図を出し、同時に一気に駆け出す。俺が担当するのは攻撃側。こちらに背を向けて攻めているため気付かれない。防戦してる方がこちらに気づき、現在の状況が変わるであろうことに笑みを浮かべる。が、その後ろにはリィンが近づいていた。恐らくリィンの側も似たようなものだろう。どちらも自分の危機に気付かずにいた。
「はぁっ!」
「たぁっ!」
俺とリィンが、一息に狙った首を切る。驚いた顔をした二人は倒れ、ポリゴンとなって霧散する。どこかに転送されたのだろう。そして勝利のファンファーレが鳴り響く。
ー 初陣の勝利おめでとう!こんな感じで倒して行ってね!陽の塔の方に行って欲しい時はまたボクから連絡するよ!じゃあねー!
プツッという感じで念話が切れる。どこまでも自分勝手な奴だ。こちらが人を一人、倒したと言うだけで限りない罪悪感に苛まれているというのに。これを受け入れられるのはいつになるだろうか。そして受け入れることを考えてる自分が嫌になる。
ー あ、君たちが逆にやられても何度でも裏で生き返るし、自害はできないよ!あと動きは全部監視してるからキリキリ働いてねー!
再び念話を繋ぎ、逃げ場をなくすロキ。やるしかないのか…
「リィン、だいじょうわっととと…」
リィンの方を見て声をかけようとすると、ちょうどリィンが崩れ落ちるところだった。慌てて抱きとめるが、リィンが立ち上がる気配はない。
「少し…こうさせて…」
こちらに縋り付くようにしながら震える声で言うリィン。抱きとめた体も震えていた。
微かに漏れてくる嗚咽。この一連の中で、リィンの中でなにかが決壊したのだろう。
リィンを抱きとめながら、俺は再びリィンを守る決意を固めた。
こうして時は、過ぎていく。
後
お詫びする点が何点か
・投稿が遅い
・短い
・内容が薄い
・内容が自慰。泣かせたかっただけ。
・キャラ、口調が定まらない
練習あるのみですね。
ありがとうございました。




