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第4話

≪松北手羅side≫


私が戦っている途中鈍い音が響き渡った。

私は戦いながら横を見る。

そこには倒れている杉目女子が目に映った。


ガンッ!


研究員の側頭部を蹴り抜く。

目の前の研究員は倒した、だが杉目君の方は倒せなかったようだな・・・・ふむ。

ここからが問題だな。

「動くな!」

研究員の声が響く。


やっぱり・・・か。

研究員は小さなナイフを取り出し気絶している杉目矢飛の首筋に当てていた。

今すぐ退かせ!そんな物を私の友達に向けるな!!

いろんな言葉が浮かんだがどれも相手を早まらせるだけだ・・・

私が無言で立ち止まっているのを良いように思ったのか研究員に不細工な笑い顔を見せられた。


下衆が・・・・・・


「ふぅ・・・手こずらせやがって・・・お前ら、もう逃げられると思うなよ!」

それは人質を取られているのだ逃げられる訳が無いだろう。

「にしてもコイツも結構いい女だな・・・」

研究員の手が杉目女子に伸びようとしていた。

睨むが怯むようすもない。

やがて私は見てられず目を閉じてしまった。


『矢飛に触るなぁ!!』

・・・ヂヂヂ・・・バチッ!!


電気の流れる音、スッと目を開ける。

そこには、スタンガンで研究員を気絶させた。御勘直喜が立っていた。

私は思わず笑ってしまった。

本当に・・・まるでゲームの主人公のようでは無いか。



≪御勘直喜side≫


僕が裏口にたどり着くとそこには誰も居なかった。

しばらく走りまわっていると駐車場の片隅に首筋にナイフを突き付けられてる矢飛とそれを見ていられないというように目をふさいでいる松北さんが居た。

あたりには3人の研究員が倒れているのが分かる。

自分の周りを警戒する、誰もいない、敵は一人、こっちには気づいていない、だったら・・・


僕は足音を消し出来る限り見つからないように死角に入って近づく。

研究員は矢飛に触ろうとしていた。

僕の友達に・・・そんな手で矢飛に・・・矢飛に・・・


「矢飛に触るなぁ!!」

勢いに任せスタンガンを研究員に当てる。

ヂヂヂ・・・バチッ!!

研究員は白目を向けて倒れた。

松北さんの方を見る。彼女は目を点にして驚いていたが、安心したのか僕に微笑んだ。


それから数分。

僕等は裏口の駐車場から逃げ出し、今はすっかり廃れている旧校舎に逃げ込んだ。

旧校舎はずいぶん前から使われていないが、それほど老朽化しておらず割と奇麗だった。

そこで松北さんから全容を聞いた。

松北さんもシックスセンスの実験体であった事、触覚の事、自分も裏切った事も全部教えてくれた。

「ありがとうございます。矢飛を助けてもらって」

「いやいや、私もシックスセンスには飽きていたのだよ、今は君達といるときの方が楽しい。飽きないからな」

「それでもありがとうございます。松北さん」

矢飛を助けてもらったお礼をしっかりする。

すると松北さんは少し照れながら

「まぁなんだ、同じ実験体としていた身だからな。助けるのは当然だ。あ・・・あと、私の事は今度から手羅と呼べ」

言い終わると松北さ・・・手羅さんは顔を真っ赤にしていた。

「分かりました。手羅さん」

というと少し不服そうな顔をしていた。


「さん付けか・・・(ボソ」


「え?」

「なんでもない!」

少し小突かれた。

「しかし少年、君はやっぱり何かのゲームの主人公のようだったな。ピンチに陥った時に颯爽と現れる」

「まずピンチなんかに陥りたくはないですけどね」

「それはそうだ。だがしかし、そこはフラグなのだから仕方ない」

「何も仕方なくはないから!」

「そういえば、西木女子は無事なのか?」

「ああぁ・・・今回のこれは奈美聴を逃がすためのものですから。恐らく今頃家の中じゃないかな?」

だけど流石に心配だ・・・・・

僕はポケットから携帯を取り出す、電話帳から奈美聴の番号へとかける。

プルルルル・・・プルルルル・・・プルルルル・・・プルルルル・・・

出ない。っと思ったすぐに電話は繋がった。

「奈美聴?大丈夫だったか?」


「西木奈美聴なら先ほど確保した」


返事をしたのは奈美聴ではなく4・50歳のくらいの男の声だった。

「私は超心理学科第六器官の総管理者、倉木だ。君は勢和高校2-A御勘直喜だな?」

「そんな事より奈美聴はどうした!」

「落ち着きたまえ。我々としても彼女は必要なのだ。しかしそちらにはまだ『視覚』と『触覚』がいるのだろう?」

確かに今横には『視覚』の覚人である杉目矢飛と『触覚』の覚人である松北手羅がいる。

「そこでちょっとした『ゲーム』で決着をつけるというのはどうだろう?」

「内容は?」

「簡単だ。君が一人で幾重にも分かれている道の中で正しいものを選び西木奈美聴の部屋へとたどり着けば君達の勝ちというものだ」

あきらかな罠だった。

それに幾重にも分かれている中で正しいもの一つだけを選ぶなんて普通出来ない。

「当然、たどり着ければ西木奈美聴は解放しよう。ただし道を間違えればトラップがある。君が死ねば彼女達は実験体になってもらう」


あまりにも分が悪かった。行けば3か0行かなければ2・・・・・

死ぬのが怖いんじゃない。彼女達が実験体になることの方が遥かに嫌だ。

「なんだ?少年よ。何を躊躇っているのだ?」

「だって・・・・・」


「だってじゃないでしょ、全く」


「矢飛・・・お前もう大丈夫なのか?」

「大丈夫に決まってるじゃない、あと今はそんなことじゃないでしょバカ!」

「・・・・・・・・・」

「何自分じゃなく私達の心配なんてしてるのよ。私達は御勘君に心配される程弱くないわ!」

手羅さんが頷いていた。

それから矢飛が諭すように言う。

「それに奈美聴ちゃんを守るって約束したんだから・・・約束を守らないとね?」


僕の決意は固まった。


「さぁ、このゲームに参加するかね?」

「あぁ!参加してやる!!」


僕はシックスセンスの提案したゲームに参加する事にした。

でないと奈美聴は助けられない。

学校の校門前に1台のワゴン車が止まっていた。

そこに僕達は乗せられる。

ワゴン車は15分そこらで止まった。

「ここから先はお前一人で行け、覚人はこのまま車で待ってろ」


僕は一人ワゴン車から降りる。

「御勘君・・・奈美聴ちゃんを頼むわよ」

矢飛が今にも泣きそうな顔をしていた。

僕にここへ来る事を決意さておいて・・・やっぱり心配してくれるんだな。

ありがとな、矢飛。


「少年!私はなこの選択が間違いでないと思っているからな」

「そうさせて見せます!」

僕は目の前にある研究所を見る。

相当でかい建物だ。学校の2倍くらいはあるだろうか?

初めは怖いと思った。だが今は怖くない。

『いってらっしゃい!』

だって僕はこんな心強い仲間に支えられているんだ。「いってきます!」

僕は研究所へと足を踏み入れた。




≪????side≫


なんだ?今日はやけに研究所がおとなしいじゃねぇか。

誰も叫び声も聞えやしねぇ・・・・・・


・・・ピクッ・・・なんだ?

知らない人間の臭いだな・・・新入りか?


ガチャ・・・「おい!実験体No、57出てこい!」

ったくなんだよ、うるせぇな。

だが久々に外に出られるのか。しかもこれはなんかあるな?

んな事はどうでもいい、今度こそあの総管理者って奴をぶっ殺す!




≪御勘直喜side≫


僕は研究所に入ると中にいた3人の研究員に連れられて広いホールに出た。

少し嫌な予感がする。このホールからじゃない・・・・・何かから

「よく来たね御勘直喜君」

出てきたのは電話に出ていた声の主だった。

嫌な予感はコイツからか?

「私が倉木だ。説明したがこれからゲームに参加してもらう。だがその前に君には彼と戦ってもらう」

戦う?話が違う!

「話が違うと言いたげだな?当然だろう。そんな道を進み部屋にたどり着くだけなの簡単すぎるだろう?だから最初に挑戦権があるかどうかを試すのさ」

ふざけやがって!!

「僕は誰と戦うんですか?」

怒気を含めた言い方だが構わない!

僕は絶対に奈美聴を助けだすんだ!

「そこの通路をまっすぐ行きたまえ、その先に君の対戦相手がいる」

僕はその対戦相手はいる方へと向かった。



≪????side≫


今日は広いとこにでたな・・・新入りの臭いもこっち来てる・・・

ってことは新入りと俺を殺り合わせるのか?

ふん!新入りなんてどうでもいい、総管理者さえ殺せれば!!

チッ・・・だが先に新入りを殺さないとダメか・・・なら仕方ない。

死んでもらうぞ!新入り!!



≪御勘直喜side≫


通路を抜けるとホールほどではないが広めのところに出た。

その真ん中に一人腕をダラリとさせた男が立っていた。

男が顔をあげる・・・・・


ゾクッ・・・・・


目があっただけで分かった。僕のさっきまでの嫌な予感は・・・コイツだ!

僕はすぐに行動できるように構えをとる。

男の射抜くような眼光が僕をとらえると


「ぶっ殺す!!」


とけたたましい叫び声あげて突っ込んできた。

早い!!

10メートルほどあった距離はほとんど一瞬で埋まった。

あまりの事で行動ができず、僕は男の攻撃を防ぐしかなかった。

男の行動は恐ろしく早くこっちが手を出す隙が無かった。


ガガガッ!!ガガガガガガガガッ!!!


その時男は一瞬手に力を込めた。

ここだ!!

僕は右手に力を溜めている隙に男の顔面に全力で拳を振るう!


ブンッ!!


風を切る音しか聞えなかった。

しかも男の姿はどこにも見えなかった。

「遅えぇ!!」


ガンッ!!!


男のパンチが背中にモロに入った。




≪????side≫


なんだよ・・・全然弱いな・・・

こんな弱い奴殺してなんになるんだよ!!

「おい!てめぇ弱すぎる!」

俺は強くなんなきゃいけねぇのに!こんな弱い奴よこしやがって!

あんだけボコればまず、立ってくる奴なんて


ジャリ・・・・・・・


・・・立ちやがったか。

フン、そこらの奴より根性はあるかもな。

だが、もう足がフラフラしてやがる。

これじゃまともな勝負にもなりゃしねぇ。

お前もそれぐらい分かってんだろ?俺にはかなわねぇ事ぐらいよぉ!

なのに、なんでそんな目してやがんだよ!



≪御勘直喜side≫


頭がボーっとする。


体中が痛い。


足がふらつく。


でも、負けられない!だから立つ!

僕が負けちゃダメなんだ!誰も救えない!誰かを救いたいなら立て!立って構えろ!!


僕はそう心に喝をいれる。

ふぅー・・・深い深呼吸。

頭が軽くなってきた、やる事は単純なんだ。

目を男に向ける。

そう、目の前の男を倒せばいい、今はただそれだけだ!!


僕は戦える意志を拳をかまえる事で示した。

男も僕にまだ戦意があることに喜んでいるようだったが、瞳の奥には何かに対する憤りみたいなのが感じられた。

男がこっち向かって走りだす。

さっきと同じような構図になった。

男は僕に永遠に思えるよう連撃で僕に手を出させない。


ドスッ・・・・・


「グフッ」

男の連撃が横腹に入る。


痛い・・・けどまだだ!

目を男に向けようとする。しかに目の前にはまた男はいなくなっていた。

「だから遅えぇんだよ!!」

後ろだった。


頭は軽かった。だからか?次に男は首を薙ぐような攻撃をしてくる。

僕はなぜかそれが分かった。

だから僕は男の攻撃が避けれるように体制を低くする。


シュッ!・・・・・


男の拳が頭の上をギリギリで通りぬける。

当たると思っていた男は突然の事でバランスを崩す。

今だ!!

ここで初めて、僕は男を殴った。



≪????side≫


なんだ。結局かわんねぇな。

俺は新入りであろう奴をボコボコにしていた。

目の色がかわったから何かと思ったが・・・さっきと同じだな。


ドスッ・・・・・


「グフッ」

横腹に拳を突き刺す。

怯んだ隙に後ろに回りこむ。

「だから遅えぇんだよ!!」

これで終わりだ!!

俺は首を薙ごうとする。


シュッ!・・・・・


感触が・・・無い?どういう事だ?


グラ・・・・・

しまった!!勢いよく振りすぎt・・・


ガンッ!!


俺は殴られた。こんな奴に!!




≪御勘直喜side≫


「お前!なんて名だ!」

男は叫んでいる。

結局1発入れたあと男はバックステップで距離をとった。

それにしても今更名前か・・・そういや向こうの名前も知らないや。

僕は正直に答える事にした。

「御勘直喜だ」

声は落ち着いていた。

さっき一発入れれたからじゃない。

何かを掴んだから。

「御勘直喜か・・・覚えたぜ!」

「お前の名前は?」

「そんな物ねぇよ!そうだな・・・あえて言うんなら実験体No、57だ!」

実験体No、57・・・そうか、コイツも・・・

「大体分かってると思うが俺は覚人だ!特殊部位は『嗅覚』!今から俺は全力でお前を潰す!!」

恐ろしい程の怒声だった。けど、なぜか怖くない。

研究所に入る時もそうだったけど、今は恐怖心でもマヒってるのかもな。

頭は軽い。


体も動く。


問題無い!

「来いよ!No、57!!俺は友達のためにお前を倒す!」

「行くぜ!!!」


カチッ・・・・・

突然ホールを照らしていた照明が消えた。

目の前にいたNo、57が見えなくなる。

だけどむこうは『嗅覚』でこっちの位置が分かるのだろう。

足音だけ聞える。僕には、No57がどこにいるかは分からない。

けど、次に何をしてくるかは分かった。

顔面に右ストレート・・・・・


シュンッ・・・・・

顔を後ろに反らしかわす。

次に右側に回って横腹に3発


シュシュシュン・・・・・

ステップで横にズレて3発ともかわす。

・・・背後に回って・・・ナイフ!!


シュッ!・・・・・

ここだ!!


ガッ!!

「ぐうぅぉ・・・」

よしうまく入った。

カランカラン・・・ナイフが落ちる音がする。

「ったく、ナイフはさすがにシャレにならないから止めてくれ」

今の攻防で力量差が分かったのだろう。

そして僕も分かった。多分僕は覚人。

それも、この研究所が探しに探しついには創りだそうとした


『第六感覚』の。


「・・・・・・・・・・・・・」

No、57は黙ったままだった。

「・・・・・・・・・・・・・」

僕もしばらく黙った。

やがて、No57が口を開ける。

「俺の負けだ」

「・・・・・・・」

「クソッ!俺の方が当て馬とわな・・・だが、てめぇなら納得だぜ」

No、57は少し間をおいて言った。


『殺せ』

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