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始まり


朝から忙しそうに移動している人ごみに混ざって学校に向かって歩いている普通の高校生である僕、御勘直喜みかん なおきは変わった人達と関わっている。


僕の通っている学校は部活動が割と活発ということで有名な勢和高校に通っている。

2-Aのプレートが掲げられている教室に着くとクラスメイトである杉目矢飛すぎめ やとが外をボーっと眺めていた。彼女とは去年も同じクラスだったので割と仲が良いのである

「おはよう矢飛、何見てんの?」

僕が話しかると

「おはよう、特に何も見てなかったわよ」

「そっか」

「所で御勘君、今日の朝は奈美聴ちゃんと一緒じゃなかったわね?喧嘩でもしたの?」

「そんな訳ないだろ、奈美聴なら携帯忘れたって一度家に戻ったんだよ」

「奈美聴ちゃんなら仕方ないか」

はぁ・・・と溜め息。

今話題に出ている奈美聴とは西木奈美聴にしき なみきは幼馴染であるが・・・その・・・まぁドジなのである。呆れる程に・・・

そして当然奈美聴も変わった人達の一人に入っている。

漫画やアニメだけだと思っていた寝ぼけて本を逆さで読んでいたりを本当にしてしまう奴なのだ。

調理実習では卵焼きを失敗するというのを僕は幾度となく見てきている。

まぁ家が近いという事で小・中・高と一緒に登校しているのだ。

「でも奈美聴ちゃんでも一人で登校くらい・・・できるわよね?」

「いや・・・まぁそれくらいできるだろ?」

一瞬不安になったが学校に登校する事もできない程ではないだろう。

すると廊下からパタパタパタと歩いて・・・


「あっ!」ガッ「うわわっ!」ビターン


来れなかった奈美聴を見る。

「・・・矢飛・・・奈美聴がこけるところって時にお金すら払いたくなるよな」

「うん・・・何も無いのにこけれるのは一種の芸術よね」

鼻っ柱を撫でながら奈美聴が教室に入ってくる。

っていうか何も無かったのにどうやってこけたんだろ・・・もう普通のドジじゃ説明が効かない気がする。

「おはよぉ~直喜君、矢飛ちゃん」

「うん、おはよう奈美聴ちゃん」

「おう、おはよう奈美聴、鼻大丈夫か?」

「全然大丈夫だよぉ、朝はゴメンねぇ一緒に登校できなくてぇ」

「忘れ物なら仕方ないさ、携帯はちゃんと持ってきたのか?」

「忘れ物?・・・携帯?・・・・・ああぁ!!」

「まさか奈美聴・・・お前忘れ物取りに戻って何を忘れたのかを忘れたのか・・・」

もしかすると奈美聴はすでに80歳超えのお婆ちゃんなんじゃないだろうか?

「ううぅ・・・・・」

「まぁ、携帯くらいだったら必要になったら貸してやるからそうしょ気るなよ」

「ごめんねぇ・・・」

「さすが何年も居ると慣れてるわね、けど奈美聴ちゃんはもうちょっと御勘君を頼らないようにしないとね」

頼られる事自体は嫌いでは無いのだけど奈美聴が頼ってくるものはたまにシャレにならないのでとりあえず頷いておく。

「気をつけますぅ」

と言い終えたあたりでチャイムが鳴り、それぞれに席に戻るのだった。



昼休みに入ると僕は決まって図書室に向かう。

理由としては、この学校は屋上へは立ち入り禁止になっていて鍵も閉まっているのだが、図書室にはベランダがついていてこの学校の生徒は天気が良いとよく食べにくるのである。

そして僕もその一人な訳だ。

当然、矢飛も奈美聴もついてきていてここで今も授業の事について喋っている。

「それにしても奈美聴ちゃん英語すごいわね、あんな長文がスラスラ読めるなんて」

「そ・・そんなことないよぉ」

「そこは素直に喜べよ、お前は英語に限らず勉強はすごいんだからさ」

「そ・・そうかなぁ?えへへ~ありがとぉ」

「あとはドジさえなければな・・・・」


「私はそうは思わんぞ?」


いきなり声をかけられる。

その声の人物もよく知る人物なのだけど、いつもいきなり後ろに立っているのは正直心臓に悪い。

「いきなり後ろに立たないでくださいって前に言いませんでしたっけ松北さん?」

「そんな事もあったかな?」

軽く流される。

「まぁいいです、それよりなんでドジを直さない方がいいんですか?僕としてはドジを直せばかなり優等生になれると思うのですけど?」

「君は何を言っているのだ?」

「は?」

逆に聞き返す

「じゃぁなんで?」

「そんなの当然・・・・・萌えるからに決まっているだろう」

「そんな理由で・・・」

「そんな理由とはなんだ?よくよく考えてみたまえよ少年そして自らを省みたまえ、君は毎日ドジな幼馴染の美少女とクラスメイトで登下校も一緒なのだぞ?それならば教室では他の男子が羨むようなイベントを・・・」

とまぁ呆れる僕をよそにに解説を始めたのが2-Cの松北手羅まつきた てらという長い黒髪が印象的な人だ。

で困ったことに少々僕らとは違う世界観を持っているみたいで・・・

「・・・のように様々なだな・・・ん?どうした少年?二人だけではなく私もはべらせてやろうと言うような目は?」

「そんな事思ってませんよ!というか二人もはべらしてって・・・別に矢飛も奈美聴もそんなんじゃありません!!」

「なんだ・・・つまらん」

「そんなのを面白がらないでください」

あと同じ学年なのに敬語なのはパッっと見の松北さんが年上に見えるかrrrrrrr

「何するんですか!!」

「いや、なんか失礼な事を考えているような気がしてな」

良い意味でだったのに・・・

「松北さんも一緒にご飯食べますか?」

「うむ、そのつもりで居るのだが構わないかな?」

「全然OKだよぉ」

こうして昼休みが過ぎていった。



放課後になるといつも奈美聴と一緒に帰る事になっている。

矢飛は弓道部に所属していてもうすぐ大会があるらしく今日は休みだけど練習に残るらしく放課後になってすぐに居なくなっていた。

奈美聴との帰り道、別にいつも通りに何も起こらずに帰れると思っていた。


そう、思っていた。


いつも見たいに何気ない会話しながら帰っているとピタッっと奈美聴が急に止まりだす。

「・・・どうした?」

「聞こえる・・・」

「え?」

「来て!!」

奈美聴が何か言ったかと思うと今度は急に走り出した。

「なっ!どうしたんだよ奈美聴!」

「いいから!早く!」

奈美聴はいつも口調じゃなくなっていた。

何か切羽詰まった表情をしているのが後ろからでも分かった。

2分程走った所で奈美聴は止まった。

「奈美聴?本当にどうしたんだ?」

「・・・・・・・・・」

無言だった。

僕は奈美聴の前を見てみる。


そこには、杖を片手に持って仰向けになって倒れている小さな女の子がいた。


僕の中で一瞬時が止まった。

そして僕より先にこの状況を見ていた奈美聴がハッとし僕に「直喜君!携帯で119番!!」と叫ぶ。

その言葉に僕も我に返り携帯で119に電話をする。奈美聴は状況を確認していた。周りを見てみると少女のちょっと離れた所にはタイヤ痕が残っていた。





程なくして救急車が到着し少女が運ばれて行った。


翌日の朝、奈美聴は青白い顔をしていた。多分朝ごはんも食べていないのだろう。

「奈美聴、大丈夫?」

「だ・・・大丈夫だよぉ」

声に張りが全くなかった。

その日の奈美聴は休み時間も昼休みもほとんど喋る事がなかった。

「奈美聴ちゃん、どうしたの?」

矢飛も心配していた。

別に隠している訳ではないから何が起ったのかを矢飛に話した。

「そっか、そんなの事があった次の日なら仕方ないわね」

「そのあと病院の方から電話があって無事なのは確認が取れてる、だから今日病院に二人で見舞いに行くつもりなんだ」

「そう・・じゃぁ奈美聴をよろしくね?」

と言って矢飛は去って行った。


放課後になると奈美聴と一緒に病院へと向かう、奈美聴はまだうつむいたままだった。

「大丈夫かなぁ・・・・」

小声でつぶやく。

「大丈夫だよぉ」

おっと聞こえてしまったようだ。小さくつぶやいたつもりだったんだけどな?


病院に着くと受付の人に部屋番号を教えてもらい、その病室のドアの前。


コロコロコロ・・・


ゆっくりとドアを開ける。

白く染まった部屋の中には昨日倒れていた少女が窓から外を眺めているようだった。

その少女の隣には少女の母親が立っていた。

ゆっくりとドアを閉める。

その音で少女は気づいてこっちを向いた。


ただ目は開いてはいなかった。


本当に窓から外を眺めているように見えていただけだった。

病院からの電話の時に聞いていたのだが。彼女は生まれた時から目が見えないでいるらしい。

「だれ?」

少女が不安そうな声をあげて訪ねてくる。

少女の母親が「千里が倒れている所を見つけてくださった人よ」と教える。

「こうこうせいの?」「そうよ」

言い終わると母親は僕らの方を向いて

「昨日は娘を助けていただいてありがとうございます。ご存じかと思いますが娘は先天的な病気で目が見えないのですよ。」

と少女の母親が悲痛のような声で話してくれた。

「普段からあまり外に出れないのです。私も仕事で常に付き添ってはあげられなくて、恩人である方に頼むのも申し訳ないのですが、よろしければ少しでも娘の話し相手になっていただけませんでしょうか?」

僕と奈美聴は当然その申し出を受ける

「ありがとうございます」

そういって母親は部屋を出て行った。

母親が部屋を出たのが分かったのか少女は自己紹介をし始めた。


「きのうはごめいわくをおかけしました。わたしは遠野千里とおの せんりといいます、ふつつかものですがよろしくおねがいします」

うん、日本語がおかしい。

目が見えないという事とハーフでちょっとまえまでカナダで暮らしていたらしいから仕方ない事ではある。

ついでに地毛で金髪らしい。

「いえいえ、それより体は大丈夫?」

「はい、とくにがいしょうもないみたいなのでだいじょうぶです」

「それはよかったぁ」

奈美聴がホッと息を吐く、どうやら朝からテンションが低かったのは無事と聞かされただけではまだ不安だったからのようだ。

「あっ!そういえば私たちの自己紹介がまだだったよぉ」

「そういえばそうだね、んじゃ改めて僕は御勘直喜、普通に御勘って呼んでくれればいいから」

「私は西木奈美聴ですぅ、よろしくねぇ」

「はい!御勘さんに西木さんですね」

「そういえばぁ、千里ちゃんはいくつなの?」

「えっと・・・ことしで17になりますです」

しばらく黙考・・・・・・


『17!?』


「え・・・ええ・・・それがどうかしましたですか?」

少し千里ちゃんが焦っていた。

いや・・・まぁこっちも焦ってるんだけどね?だって見た目中学生にしか見えないし。

そこに奈美聴がこっそり僕に話しかける。

「どうしよぉ・・・ってきり年下だと思ってちゃん付けで呼んじゃってたよぉ」

「いや・・・僕もそうなんだけど・・・まさか同い年とは」

驚愕の事実を前に混乱するばかりだ。

「あのぉ・・・」

千里ちゃん(ちゃん付けていいのかな?)が不安そうな声をあげる。

「いや!なんでもないよ!」

「そ・・・そうですか」

ふぅ・・・まぁ一旦切り上げないとこっちが危な・・・

「おふたりはいくつなのですか?」

・・・・・・・答えていいものだろうか?

同い年の初対面でいきなり『ちゃん』付けで呼んでしまったし・・・年上で通すのもアリか?

いや・・・ここは正直に年齢を答えた方が・・・

「私達も17だよぉ」

普通に答えとる!?

いや!いいけど!!いいけども!!!

「おないどしだったんですね」

「そうなんだ、だから僕たちに『さん』は付けなくてもいいから」

「いえ、おんじんなわけですし『さん』づけでよばせていただきますです」

割と頑固な性格なのかな?もしくは律儀?

「なのでそちらからもさきほどどうりに『千里ちゃん』とおよびくださいです」

多分頑固だな

「ところでぇ千里ちゃんは携帯持ってますぅ?」

「えぇ・・いちおうありますけど・・・ボタンがどこにあるかわからなくて、いままでほとんどつかったことがないんですよ」

千里ちゃんの顔が少し沈む。

「大丈夫だよぉ私がこれから教えてあげるからぁ、あと番号交換してもいい?」

すると千里ちゃんは顔をバッと上げコクコクと頷く、言葉にならないくらい嬉しそうな顔をしながら。

「これからお外に出たくなったら私達を呼んでねぇ、この病院なら家も近いにすぐに来てあげるよぉ」

「い・・いえ!そんなめいわくをおんじんにかけるわけには・・・」

僕は会話に割って入る。

「迷惑なんて思わないよ」

そして当然のように

「それにもう僕達は恩人と呼ばれるつもりもない、だからこれからは」

奈美聴と目を合わせる、奈美聴は笑顔で頷いた。そして二人同時に


『友達だ(ね)!』


ちょっと照れくさくて顔が赤くなってしまったけど、千里ちゃんの方はもっと赤くなっていた。

「ありがとうございますです」

そこから面会の時間が終わるまで僕達は話しこんでいた。僕と奈美聴の話しや勢和高校の変わった人達の話しを。

面会の時間が終わり部屋を出ようとする。

「また、きてくださいです」

「もちろんだよぉ」

「おう」

そこで奈美聴は気づいたように聞く

「そういえば忘れてたんだけどぉ・・・千里ちゃんはどこの高校なのぉ?」

千里ちゃんは一瞬ポケッとした顔になった後クスッと笑った。

「わたしも『せいわこうこう』ですよ」


へ?


「わたしちょっとまえまでカナダでくらしていたのはおはなししましたですよね?」

「あぁ・・・うん一応聞いてはいるけど」

「ハハのぼこくがニホンなのでこっちにきたときにこうこうにはいるようすすめられて『せいわこうこう』のへんにゅうしけんをしてごうかくしたらしいです」

正直話しを聞いて唖然とした。

普通に中学から高校を受けるのと編入では試験の内容に差が出来る。

編入の方が遥かに難しくしかも点数もかなり良くないといけない。

なので編入という言葉の意味も分かってない千里ちゃんが合格してる事におどろいてしまった。しかも数学は満点だったらしい・・・

「クラスは2-Bなのでちがうみたいですけど、がっこうでもよろしくおねがいします」

僕達は固まってしまったけど看護婦さんに連れられて、その日は帰宅するのだった。



その日の夜、僕は考え事に耽っていた。

昨日、なぜ奈美聴は千里ちゃんが倒れている事に気付いたのだろう?僕達は走って2~3分も離れた距離にいたのだから普通は気づけるはずもない。

なのに奈美聴は小さくつぶやいて走り出した。「聞こえる」といったんだったかな?

一体奈美聴には何が聞こえたんだ?

それは落ち着いて考えれば考える程よくわからない事だった。

その日は特に考えてなかった、また今度奈美聴に聞けばいいと思っていたし。

だから結局『虫の知らせ』ということで僕の頭は考える事を止めた。

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