再会
だが、ギィがどんなにパリ中をさがしても、オーディンは見つからず、そのうち時ばかりが過ぎて十年の月日が流れていった。
気がつけばギィ=オーギュストは今年で齢二十八。
彼はパリからケルンに移動し、ケルン大学の講師として常勤する。
そのとき、アーデルハイドと再会したのであった。
しかしアーデルハイドは気づかないのか、ギィは彼女が自分を無視しているようにも想えてきた。
――ああ、どうしてだ、そんな!
ギィはたまらなくなって、何かしら理由をつけ、彼女と接触したいとそわそわし始める。
それにしても、とギィは再会したアデルの美しさにうっとりした。
「ああ、まるできみは、メディチのヴィーナスだ! ルネサンスの女神たちも、きっと彼女に劣ってしまうだろう」
詩人の本領、発揮か(汗。
そこへ顔を赤らめてギィのいる図書室へ入ってきた女学生があった。
今までのことをきかれていやしないかとヒヤヒヤするギィだったが、よく見たらそれはほかでもない、アーデルハイドだった!
「や、やあ」
ギィはそれ以上言葉が続かずにいた。
だが彼女は意外にも積極的で、ギィとの距離をいきなり縮めてくる。
「ねえ、あなた、ギィでしょ、ギィ=オーギュスト!」
「そ、そうだよ。よくわかったね」
ウレシイやら恥ずかしいやらで、ギィの心は爆発寸前!
自分でも何をしゃべってよいかなど、まるで理解できず、冷や汗が背中を伝うだけであった。
「だって、ギィとこんなところであえるなんて、想わなかったんだもの。夢なら冷めないでって、神様に祈っていた」
ギィが何も言わなかったので、アーデルハイドは少し強気に出た。
「あたしと会えて、あなたはうれしくないのね! なんだか口惜しい」
「ばっ、そうじゃない、そうじゃないんだ」
ギィは必死で弁明するが、アーデルハイドはなかなかきいてくれず、大弱りのギィ。
「じゃあ、言って」
「何を」
「つまり・・・・・・あたしと会えて、うれしいかどうか、ってことをよ。ねえ答えて」
ギィは迫られていくうちに、だんだん冷静になってきたので、
「とびきりうれしいよ。きみと会うことが、僕の生涯で一番の幸せだったから」
歩み寄って、ギィに唇を押しつけるアーデルハイド。
「あたしもよ。ギィと初めてあったときから・・・・・・ううん、なんだか、生まれる前からずっと、一緒だった気がして、仕方なかったの。ほんとうは引っ越しなんてイヤだったけど・・・・・・」
十年前、突然引っ越してしまったアーデルハイドは、家族とケルンへ移住し、ギィのことを忘れたことがなかったという。
「僕も忘れられなかったんだ・・・・・・き、きみのこと・・・・・・。愛してる・・・・・・」
眼鏡を外し、鼻水をハンケチで拭きながらアーデルハイドに気持ちをうち明けた。
本当の気持ちを。
「ギィ、わたしもよ。愛しています・・・・・・」
ギィは数年して、普仏戦争に駆り出され、仲間の撃った流れ弾にあたり命を落とすが、いい人生だったと妻のアーデルハイドにいつも話していたという・・・・・・。
「まあ、最高の復讐劇だった、と言うわけだな。ギィよ」
オーディンはヴァルハラ城の玉座に座り、エインヘリアルと呼ばれる戦士たちを前にして蜜酒をあおった。
そのなかのひとり、ギィはオーディンにつかみかかってこういうのだ。
「ふざけるな。まだ貴様への復讐は、終わっちゃいねえぞ」
・・・・・・と。
オーディンから酒を取り上げ、
「これから永遠にコイツを飲めなくするよう、俺とフリッグ奥方様とで相談したのだ。あのときの借りがこんな高くつくなんて、思いも寄らなかったろう。オーディン!」
オーディン様、危機一髪!?
これで終わりなのか・・・・・・。汗
とりあえずこれで終わりです。
いいかげんでしょ?(汗。
近世とヴァルハラを結びつけるのは難しかった・・・・・・。