しまった!
この第二話で、だいたいのストーリーの結末がわかってしまう・・かもしれない!?
「お前さんね」
と、老人、すなわちオーディンがギィに耳打ちをする。
「お前さん、冒険者になって世界の覇者になりたくないか」
「それって」
ギィはオーディンをバカにしたように大笑い。
「あなた! 時代は科学ですよ、もうじきしたら人が空も飛べるって言うのに、今時勇者になれと」
「おお、レオナルド=ダヴィンチか。ヤツの気球はすごいな。あれならワシも見たぞ」
「ほんとですか」
ギィのことは無視し、オーディンは目の前を通り過ぎる娘の後ろ姿にでれでれとしていた。
「ちょ、聞いてるんですか!」
「おう、聞いてるよ。いい女だなぁ、げへへへ」
――だめだ、こりゃ。む?
ギィは先ほどの会話を想い出し、疑問がわいたので尋ねてみた。
「あなた、さっきダヴィンチの気球を見たって言ってましたね」
「言ったかな」
オーディンはビールをがぶがぶと飲みながら、ごまかした。
「言いました! どういうことですかっ、まさかルネサンス時代にあんたも生きてたとか、つまらん冗談を言うつもりじゃないでしょうね!」
「もしそうだ、と答えたらどうする」
ギィは言葉を詰まらせて、噴き出してくる汗をハンケチでぬぐった。
「ぐ・・・・・・い、いえ、それは」
「ところでお前さん、美形な方じゃないか? 頼まれてくれよぉ」
オーディン様、話術が巧みなので、ごまかすのが上手だった。汗
「なななな、なんです!」
「あの娘が欲しいから、ちょっと口説いてきてくれない?」
よく見ると上等そうな絹のドレスを着た、上流階級の娘らしかった。
「いくら僕でもあんな高嶺の花なんて・・・・・・」
「だろうな。じゃあこいつを使ってこい」
オーディンは先ほどの薬をギィに与えた。
「そいつをあの子に振りかけたらいい。さあ、れっつごぉ!」
オーディンはいきおいよく背中を押して、娘の方へとギィを向かわせる。
ところが、運悪くギィとぶつかった少女が粉を浴びてしまい、ギィは真っ青になって頭を両手で抱え、悲鳴を上げた。
「でぇぇぇぇ〜; どっどっどうしよぉぉぉ〜;」
「あ〜あ、やっちまったな、ギィ」
オーディンが少女を見ると、彼女はギィに手をさしのべていた。
「お兄ちゃん、立てる?」
少女は十歳前後で、愛くるしい瞳にギィはうっとりしてしまった。
だが、相手はまだ子供だ、と首を振る。
「自分で立てるから」
立ち上がると、さっそくギィはオーディンを責め始める。
「どういうつもりなんだ! あんな風に押されては、バランスを崩しても仕方がないじゃないかっ」
「あっそ」
オーディンは鼻をほじってごまかそうとするが、ギィの怒りはおさまりそうもない。
「そういう態度をとるのか、ジジイ! そんなことで、ハイそうですかと納得できる市民がいたら、お目にかかりたいね」
「嬢ちゃん、名前は?」
ギィなど相手にもせず、オーディンは少女に声をかけた。
「アーデルハイド」
「カワイイ名前だねぇ」
「私はフランスにうまれたかったわ。なぜって、ルソー先生がいたからね。ルソー先生は偉大だって、ママが言ってた」
「ああ、残念。ルソー先生はジュネーブ生まれなんだよ・・・・・・」
と言うような会話をするふたり。
ギィはだんだん、腹が立って腹が立って、しかも自分が情けなくも想えてきて、貧しいアパートに戻っていこうと足を向けた。
「どこに行く」
ギィはオーディンを振り返って、
「あんたと関わりたくないから、もう帰って寝る」
とギィが言うと、オーディンは立ち上がって、
「じゃあ、あしただな、リュクサンブール公園で待っているぞ」
ギィはそれを聞いて、
「うるせぇ、二度とあんたなんかと関わるもんか!」
と怒号を散らす。
「バカなお兄ちゃんでちゅね〜。・・・・・・あの粉の魔法は、十五歳以上にしかきかないのに」
とオーディンはけたりけたりと大笑いした。
――だったら教えてやれよ;
十五歳以上しかきかないんですかよ;
まったく不幸を呼ぶ神として名高い、オーディンの秘策とでも言うべきか^^;
まぁおもろいか、だまし討ちみたいで(笑。