不思議な喫茶店
掲載日:2026/06/28
細い細い路地の奥、こじんまりとした喫茶店があった。
素朴で小さな看板には、一言。
“1杯だけ、呼吸をしていきませんか”
キィ......という音を立てて扉を開くと、カランコロンと涼やかな鐘の音が響く。
席が4脚しかないカウンターの向こうで、優しげなのにどこか印象に残らないマスターは言った。
「いらっしゃい。どうぞ一息吐いていってね」
ここは、小さな小さな喫茶店。
開店時間は不定期。
定休日も無い。
開店場所も......不定期。
でも、不思議な不思議な人々が、“一息”を求めて訪れる。
黒と白の双子。
苦労性の司書。
灰色の少年。
誰も彼もが“何者でもなくあれる場所”を求めてやってくる。
ここは、静かな静かな喫茶店。
誰の居場所でもあり、誰の居場所でもない。
何も拒絶せず、何も問うことはない。
「ようこそ。一息吐いていってね」




