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悪役転生  作者: こすもす
7/13

悪役転生第7話 盗賊


宝物庫に辿り着いた時、

僕の弱音は一瞬にして消え去った。


宝物庫は既に半壊。

大小様々な宝石が床に散らばり、侵入者は五人ほど。


彼彼女らの両手から、金銀財宝が抱えきれずに

零れ落ちていた。


目の前に泥棒がいる。


その独特の緊張感に晒された時、

借金などの先の話は頭から消えた。


まずは止める。今は目先の損失を抑えなければ。


そう思った矢先にゼインが動いた。


剣を手に敵へ急接近。

狙ったのは、財宝を両手に抱えた小柄な少女。


キィィィィィィン!


だが、刃は少女に届かなかった。

仲間の一人が庇ったからだ。


両腕から三本ずつ伸びた爪が、

ゼインの剣を受け止めていた。


「!?  退けぇ!」


「いきなり弱い子狙うんだ。そういう男なの、ね!」


彼女は剣を弾くと、瞬く間にその場で回転。

ゼインの胸に回し蹴りを叩き込む。


「ンンッ」


言葉にもならない呻き声を上げ、

ゼインは勢いよく吹き飛ぶ。


跳ねるように床を転がり、今度こそ気を失った。


「レオナちゃん。」


そう呼ばれた彼女は、

涙目の少女の頭を優しく撫でる。


「心配しないで。私が守るか―」


キィィン!


彼女―レオナの爪と、僕の触手が火花を散らした。

不意打ちを防がれた僕は両腕を刃に変る。


相手も呼応して殺気を解放。


にらみ合いが続く中、

少女の腕から一枚の金貨が零れ落ちる。


それが合図だった。


カンッ! カンカンカンカンカンカンカンカン―


爪と刃、そして触手が交わる。

甲高い音が小刻みに響く。


真っ向勝負。

ではあるが、実際は突っ込んできたレオナを

僕が迎撃している。


ヒルデ戦の時から感じていたが、

僕はこういうカウンタータイプの方が

性に合っている。


血の気の多い方ではないし、

下手に前に出る必要もない。


対してレオナは真逆。

見た所、近接特化のアタッカータイプ。


相性はいい。だが、


「その両腕は盾のつもり?」


完全に押されている。背中から出した触手六本。

これが二本腕に捌かれている。


パワーだけでなく、スピードや攻撃の回転数も上。

両腕は防御に専念させるしかない。


背中の触手に慣れていないことを差し引いても、

正直ヒルデより強い。


「もらった!」


右腕が弾かれ、すかさずレオナの蹴りが腹に入る。

だが、


「硬っ!?」


蹴りの衝撃は体内に届かず、

反動でレオナの脚の方が震える。


吸収したダイヤモンドが功を奏し、

隙を見せたレオナに攻撃を叩き込む。


結果的には当たらず。

レオナはバク転で下がって回避。


しかしそのおかげで、距離を取ることができた。


「中距離戦は悪手では?」


「・・・舐めてるのかしら―」


目にも止まらぬ速さで、僕の懐に入り込む―

筈だった。


「ッ!?」


突如レオナの視界が反転。背中から床に激突。


―掛かった。


向こうもリーチの差は分かっている筈。

ならば絶対に距離を詰める。


だったら、その動線に罠を張ればいい。


縦数センチの空気の壁を床に作り、

足を引っ掛け転倒させる。


計画通りに隙が生まれた。今の内に毒を―


「!?・・・マジかよ。」


信じられなかった。


レオナは倒れたままの姿勢から、

ウィンドミルのような動きで体を回転させ、

刃も触手も全て捌き切った。


起き上がった直後も同じ。


今度は僕が前に出ているが、

それでも攻撃は当たらない。


だが、今は肩で息をしている。

加えて、よく見ると汗もかいている。


顔に書いてあるよ。


焦ってたんだね。


ならもう、仲間を庇う余裕はない。


「ウアアアアアア!」 「イヤアアアアアア!」


背後から聞こえた、耳をつんざく仲間の悲鳴。

レオナは動揺するも、目だけは僕から離さない。


やはり強い。目を逸らした隙を狙っていたのに・・・


だが、本命には当たった。


後ろにいた盗賊団の数人が、僕の毒に悶え苦しむ。


血管が浮き出るように顔や首筋に緑色が広がり、

痺れや激痛に襲われている。


一応あの少女も狙ったが、別の仲間が庇っていた。


「舐めたマネしてくれたわね。」


「取引しないか?」


「は?」


ただでさえ、目尻に血管を浮かばせている

レオナが更に怒る。


でも、仕掛けてきたのはそちら側だよ。


「降伏するなら、彼らの毒は解除する。

勿論全員命は取らない。」


「卑怯ね。第一信じると思う?」


「フフッ。悪役同士、卑怯はお互い様でしょ。でも、

だからこそ、約束は守るよ。」


これは本当。一切嘘はない。


そもそも打ったのは緑毒(りどく)

痺れや痛みだけで死ぬことはない。


そしてこれらが伝わったのか、

レオナの殺気も揺らぎ始めている。


「話し合おうよ。

こちらから頼みたいこともある・・・」


目を、いや、初めて魔法を疑った。


毒が消えている。


体外へ昇華されていくように、

全員の体から毒が消え失せた。


一瞬戸惑ったが、すぐに状況は分かった。


あの少女だ。

少女が仲間に触れ、彼らの毒を消して回っている。


治癒系統の魔法らしい。


「レオナちゃん! 皆治したよ!」


レオナの目に光が灯り、

安堵と喜びが混じった笑みを見せる。


「メイ。最高よ!」


瞬く間に僕の懐に入り、

レオナは僕の顎に回し蹴りを当てる。


力なく崩れ落ちる僕の頭を、

膝が地面に着くより速く掴む。


そのまま眉間に膝蹴りを入れ、僕の体をかち上げる。


そして―


ガンッ!!!


爪を引っ込め、僕の頬を殴り込む。


拳に魔力を集中させているからか、

この体でも明確に痛みを覚える。


ザアア、ザ、ザアアアア―


床を削る様に吹き飛び、

そのままうつ伏せに僕は倒れた。


顎に眉間。そしてとどめの、上から下、頬から顎へと力を流すような殴り方。


間違いなく、狙いは僕の脳震とう。


実際彼女の狙い通り、

意識こそあるが体はまるで動かせない。


立っているレオナと、虚ろな目で倒れ込む僕。

勝敗は明らかだった。


「フゥ。さあ皆、今の内に―」


ノエラだった。


空間転移でメイを捕まえ、

喉元にナイフを突き立てる。


「全員動かないで。動けば彼女を―」


メイの怯えた顔が、レオナの殺気を跳ね上げる。


反応する間もなかった。


「カハッ」


「メイに手出すんじゃないわよ。」


レオナの拳が腹にめり込む。

ナイフも壊され、ノエラはうずくまるしかなかった。


だがこの数秒が、僅かに僕を回復させた。


「行・・・け・・・」


使い魔。背中から分離させた二体の蛇が、

盗賊団全員を狙って牙をむいた―


後でノエラに聞いた話なのだが、

僕の使い魔―全長五メートルの蛇二体は、

レオナの“咆哮”に弾き飛ばされたそうだ。


彼女の口から出た橙色の衝撃波は、

弾けるように空気を震わせ、

巨大な蛇を吹き飛ばした。


幹部全員が動けなくなった間に、

盗賊団は姿を消した。


国英との連戦で、他に動ける戦闘員も不在。


この日初めて黒金は、同じ悪役に敗北した。

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