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悪役転生  作者: こすもす
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悪役転生第4話 悪役―起


「次は、君かな?」


視線の先の国英―ヒルデは身構え、

じっとこちらを見ている。


無数の瓦礫を浮かべての臨戦態勢。

さっきのような不意打ちは難しいだろう。


どう攻めるか?  考えを巡らせていると―


「あれ何? 見えない壁みたいなの。

触手とは明らかに違う。」


「まさか、魔法の複数持ちだったりするわけ?」


向こうから話しかけてきた。

いや、厳密には探っていると言うべきか。


「・・・さあね。」


はぐらかす。下手に情報を与えるよりずっといい。

それに、


「聞きたいのはこっちの方だよ。

何でここまでするの?」


「血や瓦礫が君たちの強さに直結するにしても、

一般人襲うことはないでしょ?」


「傍から見れば、悪は君たちだよ。」


一瞬の沈黙。

だが、すぐさま嘲笑によりかき消された。


「何寒いこと言ってんの?

正義や悪なんて建前に決まってるでしょ。」


「私たちには力が あって、王家はそれを求めてる。

国の邪魔、黒金や他所の軍を倒す代わりに、

私たちは 特権を得る。」


「英雄は何をしても許されるの。

弱者を蹂躙して血を貪ろうが―」


「破壊や戦闘の愉悦に、

体の芯から酔いしれようとも、ね。」


「・・・そうか。」


ヒルデの邪悪な笑みで理解した。

あの言葉が、この世界の全てなのだろう。


この世界にヒーローはいない。だから、僕が変える。


天国ではなくとも、せめて地獄ではない世界に。


手をかざし触手を突き立てる。

同時に瓦礫が向かってくるが、貫いて進む。


ヒルデは上へ跳んで回避。

瓦礫で触手の速度が落ちたにせよ、

身体能力も高いようだ。


そのまま大きな瓦礫に飛び乗り、

上空へ移動していく。


当然追撃するが、瓦礫の攻撃で相殺される。

本人の周囲も無数の瓦礫が渦を成し、

触手の狙いが定まらない。


「悪とか正義とかつまんないこと言っていないで、

アンタも今を楽しみなさいよ!」


相手の殺気、プレッシャーが一気に強まる。

魔力の開放、つまりは本気だ。


周囲一帯の瓦礫が彼女のもとへ集まる。

大小問わず操られ、一部空を覆う程の瓦礫の集合。


圧倒され、瞬きすら忘れてしまう。


未熟な魔王が息を呑むには、

十分すぎるほどの光景だった。


「さあ、ハァ、行くわよぉぉぉ!」


相手のターンが始まる。

触手の届かぬ上空から、

無数の瓦礫が雨となって降り注ぐ。


不可避に等しい範囲攻撃。前後左右逃げ場がない。

満遍なく降り注ぐ瓦礫の雨を、空気の壁で防御する。文字通りの土砂降り。


今は耐えられているが、いつまでもこうはいかず、

そして何より反撃ができない。


立ち込める砂煙に、視界が遮られる。

相手の出方が見えないのは危険だが、

だからと言って 下手に動く訳にもいかない。


そう思っていると、急激に壁が重くなる。


土砂降りだった雨は止み、壁とその周囲にだけ

瓦礫が降り注いでいる。


道理で圧が段違いになる訳だ。

このままでは壁が破られる。


防御を解いて下がるべきか?

だがタイミングを誤れば最悪死ぬ。


「魔王様! 後ろへ!」


突然、誰かの声が聞こえた。ノエラだった。

反射的に後ろに下がる。


直後、家ほどの大きさはあろう巨大な槍が壁を破り、地面に突き刺さる。


あまりの衝撃に僕ものけ反り、

地面にも大きなひびが入る。


瓦礫で作られた槍だった。


大きな瓦礫の形を整え、小さい瓦礫で肉付け。

魔力で締めて、一本の槍にしたのだろう。


敵ながらその技量に感心していると、

槍が小刻みに震え―


ドォォォォォォォン―


爆ぜた。槍を構成していた瓦礫が一斉に弾け飛ぶ。

さながら瓦礫のクラスター爆弾のよう。


間一髪、空気の壁は間に合った。

でなければ本当に危なかった。


―そうだ、ノエラは?


「魔王様、ご無事で!?」


焦りながらも駆け寄ってくれる。

空間転移で避けたのだろうが、

ともかく無事で良かった。


「やはり強いですね。」


「あぁ、全くだよ。」


流石は名の知れた国英。

ネクロスや吸血鬼とは、まるで格が違う。


範囲攻撃で動きを封じ、止まった所を集中砲火。

砂煙で視界を奪い、二段構えの大技で仕留める。


当然の話だが、新人の魔王とは経験値が違う。

それでも、


「大丈夫だよ、ノエラ。経験は向こうが上でも、

魔法の性能ではこっちが優勢。

それに、もう勝ち筋は見えている。」


「本当ですか!?」


「ああ。悪役らしいやり方、だけどね。」


従者の女と話し込む魔王。

ヒルデは不審に思いつつも、決着を急ぐことにした。


魔力切れが近い。不意打ちとは言え、

国英を瞬殺した、魔王を名乗る少年。


久しぶりに出会った、壊し甲斐のある相手。

まだまだ楽しみたいが、もう時間がない。


再度攻撃にかかる。やることは変わらない。


広範囲に瓦礫を降らせて動きを止める。

集中砲火で防御を削り、瓦礫の大槍でとどめを刺す。

見えない壁を槍が破る。地面を貫き、そして爆ぜる。


勝った。そして同時に魔力も尽きる。

ゆっくりと降りる最中、何故か寒気を覚える。


周囲には誰もいない。

だが、次第に影が濃くなっていく。


まさかと思い上を見ると、急降下する魔王がいた。


両手で見えない何かを抑え込むようにして、

じっとこちらを見ている。


強い魔力を感じる。


そうか! これも、あの見えない壁も。空気を操―


気付いた時には堕ちていた。

腹部に乗った異常な圧と、背中から走る激痛で

頭が回らない。


操作を外れ、ゆっくりと落ちる瓦礫の振動と共に、

自身の敗北が身に染みる。


「驚いた。まだ意識があるとはね。」


魔王が来た。それは別に良かった。

全力で戦って負けた以上、殺されても文句はない。

だが最後に、1つだけ聞きたいことがあった。


「ねえ魔王。殺してもいいから聞かせて。

どうやって私のもとまで移動したの? 」


「まさか、あなたにも空間操作の魔法が?」


「いいや。それは仲間の魔法だよ。」


「君が瓦礫を降らせている間、壁だけ作って

彼女の魔法で移動した。土煙で周囲が見えないのを

逆手に取ったんだ。」


「何それ、結局2対1じゃない?

こっちはタイマンだと思っていたのに。」


「一言も言っていないでしょ、そんなこと?」


「卑怯ね。」


「悪役だからね、英雄さん。」


「プッ、ハハハハ、それもそうね。」


魔王とのお喋りは、意外にも楽しかった。

自分は悪役と明言する彼と、破壊を楽しむ私。


もしかすると、

少しは通じる部分があるのかもしれない。


だがそれ以上に未来が、

彼が魔王になった世界がどうなるのか。


それが楽しみで高揚すら感じる。


「そう。あの女が空間操作を・・・ アンタ、

すごい子を仲間にしたわね。」


「?  それはどういう―」


「いずれ分かるわ。あの子を大切にしていれば。」


「あの世から見てるわよ。

アンタがどう世界を壊すのか。

いや、どう変えるのか。」


応援とは違う。ただ自分の気持ちを、正直に伝えた。

そして返ってきたのは、少し意外な言葉だった。


「国英さん、悪いけど殺す気はないんだ。

その代わり、君の魔力と魔法はもらう。」


「大丈夫。世界を変える力として、

無駄にはしないから。」


意味はよく分からない。

が、楽に死なせてくれないのは確かだ。


これまでの黒金とは違う怖さ。

そこには少し寒気を覚える。


「アンタ、やっぱり悪役なのね。」


だが、悪あがきはしない。


悔しさと、それ以上の期待を胸に、

英雄は力を失った。

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