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悪役転生  作者: こすもす
30/40

悪役転生第30話 過去

「・・・本当にキリがないな。」


ロドリア自警団団長―グラディオ。

部下と共に敵を倒すも、その顔は晴れない。


そこに現れる副団長。


「団長。連中の一人を尾行したら

アジトが分かりました。行きます?」


「当然だ。よくやった、ハルス。」


強気な発言。しかし、その顔には心労が滲む。


「よし行くぞ、お前らぁ!」


気疲れを表に出すことなく、部下に指示を飛ばす。


ロドリア自警団。

その名に違わず、地方都市ロドリアを守る存在。


国英のいない、呼べない多くの地方都市。


そこではこうした組織が代わりとなり、

外敵から街を守っている。


ボン!  キィィン!  サクッ!


爆音、爆発、斬撃―

極小規模の戦争と言うべき様を生み出し、

外敵の討伐が終わる。


倒した敵を調べ、武器を取り上げる。

案の定、


「団長、この武器―」


「ああ。こいつらやっぱり、元雷の回し者だな。」


元雷(げんらい)。ヴァロマ王国と敵対する軍事国家。


十八番とも言うべき彼らの特産品、もとい兵器―


“魔導筒”―蛇石の生まれた世界で言えば、

銃火器に当たる武器。


腕程の太さのある筒に魔力を込め、引き金を引く。


すると凝縮された魔力の塊が発射され、

被弾と同時に解放、爆発。


魔力の衝撃波が拡散される。


因みにこの魔導筒、元は土人形(ゴーレム)の一部だった。


元雷の王族が継承する、土人形生成の魔法。


それを戦闘や軍事に応用し、

軍事国家の基盤をつくった。


そして、土人形の量産や

部位(パーツ)単体での兵器化によって領土を拡大。


今や、ヴァロマ王国全体が頭を抱える程の

脅威となっている。


当然、ロドリアにおいてもそれは同じ。


元雷との国境が近いこともあり、

侵入してくる元雷人が後を絶たない。


乗っ取って軍事拠点をつくり、

国境沿いの地域を挟み撃ちにするのが狙い。


そうした侵略者の手先を、

グラディオは既に一年以上倒し続けている。


仮にも軍事国家の工作員相手に、

国英でもない人間が勝ち続けているのは、

偏にその魔法故である。


「今回の敵は、さっきのも含めて三十人。

全員鎧にするんですよね?」


「当然だ。・・・そうでなきゃ、

とてもやっていけないしな。」


分かりきっていたグラディオの返答。

それでも何故聞いたのか、自分でも分からない。


疲れているのは、彼だけではないようだ。


「ですよね。・・・()()()()()

自警団やっていくのは無理ですし。」


疲れた言葉を吐いたハルスは、

グラディオの部下―数十体の鎧を眺める。


そう。ロドリア自警()と言っても、

今は()()しかいない。


「七十人くらいいましたよね、前は。」


「言うな、ハルス。」


かつてはいた()()も、

これまでの戦いで命を落とした。


そして彼らをも鎧にしなければならない程、

この街への攻撃頻度は高い。


こうした非情な、されど合理的な戦略によって、

街の平和は守られている。


だが人々の、特に二人の、

心の平穏は保たれていない。


仲間を守るための鎧。


それが今となっては、

一人を除いて全員鎧になってしまった。


終わりのない戦い。


相手は国家。

末端をどれだけ潰しても、際限なく敵が湧いてくる。


()()()()こともできない。


そうした精神的な摩耗に苦しんでいるのは、

守る側だけではない。


街に住む人々も、最初こそ自警団を讃えた。

応援し、誇りに思った。


しかし、彼らも理解した。


この戦いに終わりはないと。


長期的な平穏は、もう訪れないということを。


だから彼らはそれを諦め、

ただひたすら、短い平和を繰り返すことを選んだ。


だからグラディオ達への協力は惜しまない。


物資等はもちろん、命を落とした自身の家族を、

鎧の原料として提供することも厭わない。


グラディオ達は必要とされている。

感謝もされている。


だが、この街に笑顔はない。

自警団にも、民衆にも。


平和な、されど薄暗い夜が、

この街ではずっと続いている。




「なあ、グラディオ。」


「アンタが国英になってくれれば、と思うんだが。

やっぱり無理なのか?」


グラディオ行きつけの酒場。

店主との雑談で、またその話になる。


「何度も言ってんだろ、旦那。

成れるもんならとっくになってるよ。」


酒を飲み干した後、

ジョッキを叩きつけて話を続ける。


「国英は国家の武力、っていうのは半分建前だ。」


「国の端っこで何が起きてるかも知らねぇ

貴族たちにとって、国英はただの称号なんだよ。」


「だから、家柄が評価を左右する。」


「俺みたいな、親もいねぇ庶民なんて、

最初から相手にされねぇよ。」


それに、と、少し間をおいて続ける。


「鎧を生成する方法、国にバレたらマズいだろ?」


その一言に、店主も言葉を飲み込むしかなかった。

その通りだから。


地方の実情を、中央が理解してくれるとは思えない。


国の中枢にいる人間が―


「何がバレたらマズいって?」


グラディオが振り向くより速く、

彼の体は宙を飛んだ。


気付いた時には外に出ており、

穴の開いた酒場の壁が目に入る。


呼び寄せるまでもなく騒ぎに反応し、

鎧二体が駆けつける。


そしてグラディオを吹き飛ばした男も、

酒場から姿を現す。


灰色の、ボロが目立つローブに身を包む

見慣れない男。


男は鎧を見るや否や、

武器を取り出し鎧を攻撃する。


グラディオの目には、男の魔導筒がしっかりと映る。


片手で持てるほどの大きさだが、

間違いなく魔導筒である。


元雷の手先。


そう考えて戦闘態勢に入ったものの、

男が取った行動には疑問を感じた。


魔導筒での攻撃。


これが鎧に効かないと分かるや、

男は魔導筒本体を鎧に向けて投げた。


剣で叩き落とされ、粉々になる魔導筒。


それを見て、男は何故か不敵に笑う。


男は鎧の一撃を跳んで躱す。


さらに空中で指を二本、人差し指と中指を立てる。

力を抜いて、腕を横に薙ぐ。


一時の静寂。


直後、構えていた剣諸共、鎧の体が切断された。


静かに薙いだ指に沿って、

鎧の剣と体だけが音もなく裂けた。


何も分からないまま倒れる鎧たち。


男は鎧の残骸を足で払いながら、

ゆっくりとこちらに向かって歩いている。


次は自分が―


この場にいた誰もがそう思った。


そして、それを受け入れている自分がいることも、

この場の全員同じだった。


グラディオも例外ではない。


寧ろ自分が“一番に”なれば、

尚更皆が楽になるとすら思っていた。


生を、平和を望む想いも、

それを維持する自警団を、

誇りに思う気力すら摩耗している。


貧しくはなく、比較的安全で、それでも心は沈む街。


そんな街が、そんな生活が、

今日終わるのならそれで―


死を拒絶すらできない程、皆疲れ果てていた。


「俺は元雷ではないぞ。」


しかし男は唐突にそう言い放ち、

ローブを取って話し始める。


「今日は、この街の代表と話しに来た。

ロドリア自警団団長、グラディオはお前だな?」


綺麗な髪に、端正な顔立ち。

そして金色の装飾に彩られた、純白の軍服。


ボロボロのローブとは似ても似つかぬその身なり。

グラディオは思わず息をのむ。


「ああ、そうだ。でも・・・アンタは誰だ?」


「俺を知らないのか?  

まあ、地方民なら無理はないか。」


男は軽く笑うと、胸に手を当て悠々と名乗った。


「アルヴァ―ド・スペリア。」


「この国の盾であり、そして矛にもなる男だ。」


薄暗い街に、夜にも沈まぬ太陽が昇ろうとしていた。

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