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悪役転生  作者: こすもす
3/6

悪役転生第3話 原点


幼稚園、僕はいつも友達と遊んでいた。

名前は雄斗君。


クラスの中心にいた彼と、いつも一緒にいる。

“あの日”まで、僕はそんな子供だった。


「ヒーローズスクール」

特別な力を持つ主人公たちが、力を悪用する敵を

倒していくという、学園もののバトル漫画。


僕も雄斗君も好きで、

ある日好きなキャラについて話していた。


「雄斗君は誰が好きなの?」


「俺はやっぱり「勝利」だな!

もともと強かったけど、精神面でどんどん

成長してる。」


「すげぇカッコいいんだよ!京は誰が好きなんだ?」


「僕は「破壊の魔王」 朽木崩(くちきほう)が好きかな。」


「え、マジで? 朽木崩って悪役だろ?

敵のボスだぞ? 何で好きなんだよ?」


「でも、かっこいいんだよ。

自分の中にちゃんと信念があるし、仲間も

なんだかんだ大切にしてるし、勝利と同じように

成長もしている。」


「まさに裏の主人公なんだよ! それに、

初めて言うんだけどさ・・・実は僕、

どっちかっていうと、悪役の方が好きなんだよね。」


「はぁ? 悪役の方が好きって、

お前本気で言ってんの?」


「うん」


「何だよ。ヒーロー嫌いなのか?」


「嫌いじゃないよ。でも、悪役の方がかっこいいと

思うことが多いんだ。」


「何でだよ?とにかく、お前とは合わないな。」


以降、彼とは友達ではなくなった。


同時に、友達―少なくとも、

同じ趣味を持つ友達はできないと悟った。

というか諦めた。


友達はつくらず、僕はいつも1人だった。

そして孤独が生み出した時間は、勉強に費やした。


真面目な優等生になれば、

周りはあまり近づいてこない。


それが教師には気に入られ、

「学生の鏡」そう呼ばれた。


実際は、拒絶されるのが怖くて逃げていただけ。

怖かったから、自分の心を隠した。


本当は、好きな悪役―朽木崩のようになりたかった。


「はぁ?悪役の方が好きって、

お前本気で言ってんの?」


その通り。今も変わらない。


「何だよ。ヒーロー嫌いなのか?」


違う。ヒーローが嫌いなわけではない。

でも悪役の方が好きだ。


「何でだよ?」


変わらない信念を持っていたからだ。


ようやく思い出した。何故悪役が好きになったのか。

悪役、特に朽木崩は、信念をもって、

世界を変えようとしていた。


世界を守るために、悪と戦うヒーローが

かっこ悪かったわけじゃない。


でも彼は、ヒーローとの戦いを通して成長し、

仲間を集め、計画を立て、世界に挑んでいた。


力を覚醒させ、師匠、親代わりと呼べる存在に

裏切られても、最後はソイツすら飲み込んで

魔王になった。


ヒーローと戦い、体が壊れても、

最後まで諦めなかった。


僕はその、ヒーローよりも大きな相手に立ち向かう

悪役の姿を、かっこいいと、

心の底から感じていた。


―全てを思い出した時、

再び街の光景が目に入った。


見渡す限り建物は壊れ、

残骸が飛び交いまた街を壊す。

人々は干からび、その血は悪魔の糧になる。


そして、この惨劇を起こしたのは国英。

この世界のヒーローたち。


ヒーローが嫌いなわけじゃない。

でも、こんなヒーローは嫌だ。


嬉々として街を壊し、当然のように人々を傷つける。

これだけ見ればただの悪役。

だがこの世界は、それを正義と定めている。


どんな形であれ、世界を変えようとする悪役に

僕は憧れた。


ならば、僕はどうするか?

この世界、守るか? 変えるか?


決まっている―


「ハハハハハハハッ!

もうそろそろ限界みたいね。」


瓦礫の雨が激しさを増す。ゼインは既に蟲の息で、

魔力も大きく下がっている。


息も絶え絶え、砕け散った瓦礫の塵で、

顔も服も砂まみれだ。


「やっと削れてきたなぁ! じゃあとっとと

血を吸わせろ!」


邪気に満ちた笑みを浮かべ、吸血鬼が決めにかかる。

ゼインめがけて一気に急降下。

彼の首を斬り裂かんと爪を突き立てる。


ゼインも死を覚悟した。


キィィィィィン―


触手の刃が翼を弾く。吸血鬼は体勢を崩し、

蛇行しながら地に落ちる。


地面を削りながら着地し、顔にもローブにも

濃い土がつく。


「ヴァンプ! ・・・よくも!」


ヒルデが再び、瓦礫の雨を降らせた。

横殴りの硬い雨。大きく砂煙が上がる。


それが消えた時に見えたのは、傷だらけの部下を庇う魔王の姿。


「ゼイン、退がって。後は僕がやる。」


「ハァ、ハァ、・・・いえ、私は―」


「退がって。」


「・・・はい。」


ボロボロになったゼインをノエラに託し、

僕は二人の英雄と対峙した。

ノエラがその背を見届ける。


新たな魔王は、“制服”という

異世界の服を身に纏っている。


右手が蛇の頭に変形し、

口からは舌のような刃が伸び出ている。

さっきはあの刃に魔力を集中させ、瓦礫ごと吸血鬼を弾いていた。


「何だ、ガキ? よくも邪魔しやがって。

アイツの代わりに血吸われに来たのか?」


じっとこちらを見つめるヒルデとは対照的に、

吸血鬼はやたらとおらついてくる。


「違うよ。ただ部下を庇っただけ。」


「部下? お前、黒金の一味か?」


「魔王だよ。ついさっき就任した、

黒金の魔王だよ。」


一瞬、場が静まる。ヒルデは驚いたような表情を

浮かべているが、一方で、


「アハハハハハハ! ふざけんなよ!?

お前みたいなガキが魔王だ?

馬鹿言ってんじゃ― ッフ、ハハハハハハハ」


こちらは笑いが止まらないらしい。

これ見よがしに翼を広げ、自慢を話す。


「俺はなぁ、名門騎士族ブラド家の次期当― ん?

あ、ああああああ!」


地を打つ音と共に、取り乱す吸血鬼。

ヒルデも言葉を失う。


気付いた時には左の翼が断たれ、

その刃は魔王の手から伸びている。


「付け根に近い部分は、意外と柔いんだね。」


刃に魔力を籠めたまま、吸血鬼へ向け歩き出す。

動揺する彼とは真逆で、その歩みに躊躇はない。


ヒルデが瓦礫で攻撃する。が、魔王には届かない。

見えない壁、魔王が空気を操り生み出した盾が

瓦礫を防ぐ。


「ヴァンプ! アンタもう逃げなさい!」


「う、うるせぇ! 指図すんじゃ―」


余所見をし、再び敵に目を向けた時にはもう、

彼は手遅れだった。


目の前には大きく口を開けた蛇が数匹、

自身に噛みつく直前だった。


魔王の左手、指から伸びた蛇は、

吸血鬼の首、両肩、手首にも噛みついて

牙を食い込ませる。


そして、


「い!? いだああああああああああああ!」


ヒルデは冷や汗をかいた。

仲間の顔や首、手にも、

緑色の血管のようなものが浮かび上がる。


悲鳴を上げて抵抗するが、蛇は決して離れない。

そして、離した頃にはもう遅い。


声も出ず、全身に緑の血管を浮かび上がらせ、

ただただ痙攣していた。


その様を見下した後、魔王はもう一人の敵を見る。


「次は、君かな。」


言葉と殺気に反応したのか、

ヒルデは頬を緩めて言った。


「“前の”よりは、面白いんでしょうね?」


ヒルデは笑みを崩さない。確かに高揚していた。


だが、魔王から向けられた殺気の質が、先代魔王とは明らかに違うことも理解していた。


互いの殺気が混ざり合い、真の戦場の空気となる。

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