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悪役転生  作者: こすもす
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悪役転生第24話 悪役―承


「森全体の地面を操る!?」


ゼインの驚愕に満ちた声が響く。


時は遡り、決戦の約二週間前。

黒金城にて、幹部のみでの軍議が行われていた。


「そんなことができるんですか?」


「できるよ。まあ、鎧たちには

可哀想なことをするけどね。ハルスの話じゃ、

人間に戻すことも無理みたいだし。」


「しかし、序盤からそこまで

大胆に動いていいんでしょうか? 」


「グラディオを倒せればそれで終わりですが、

失敗した時のリスクがあまりにも大きいような―」


「いや、失敗はしないと思うよ。

そもそもグラディオを狙った作戦ではないから。」


顔に疑問符を浮かべるレン。

尤もらしい疑問に、順に答えていく。


「白騎士―最上位の国英を、

埋めた程度で倒せるとは思えない。

これはあくまで、鎧兵を一気に減らすための策。」


「極論、グラディオは無傷でもいい。」


「あなたは大丈夫なの?  

いきなり魔力切れで倒れたりしない?」


今度はレオナが問いかけてきた。

横にいるメイも、心配そうに頷いている。


「もちろん対策はしているよ。」


「ハルスの話では、グラディオ個人で

動かせるのは白兵卒五千体分。」


「全てを僕一人で埋めるのは確かに難しい。

でも、媒介物があれば別さ。」


「「媒介物?」」


「これ。」


揃って首を傾げる二人の前に、僕は手をかざす。


両手から姿を現したのは、

全長が五メートルはある金色の蛇。


「・・・これが?」


「そう、媒介物。僕の使い魔。これを何体か、

森の土を吸収させたうえで地面の下に潜ませる。」


「そしてグラディオたちが森に入り、

ハルス捜索のためある程度分散した所で、

地面を操る。」


「これが大まかな作戦。質問はあるかな?」


ノエラが手を挙げた。


「私たちだけで何千という敵と戦うのなら、

これだけ大胆な作戦が必要なのも分かります。」


「ですが、グラディオに鎧を使うなと

脅さないのは何故ですか?」


「 “ハルスを殺す”とでも言えば、

グラディオだけを誘き出すこともできるのでは?」


「いや、無理だね。流石に一人では来ないと思う。」


ノエラの顔が少し曇る。


思いのほかはっきりと否定され、

戸惑ったのだろうか。


「今回の主目的は鎧化計画を止めること。

そのためには、“勝てる”と思わせたうえで

彼を誘き出す必要がある。」


レオナたちに続いてノエラも頷く。


「グラディオは僕が倒す。皆は残りの鎧兵、

特に銀属や金伯の相手を頼む。」


「ここにいる皆にしか任せられない。

よろしく頼むよ。」




現在、ディルナスの森。

僕は、土まみれの白騎士と鎧兵に相対している。


一体何をしたのか、グラディオたちは

勢いよく土を弾き飛ばして脱出。


とは言え、

そのダメージと苛立ちは隠せないでいる。


「ド派手な騙し討ちだな! 卑怯者。」


「悪役なんでね。」


カッとしたのか、

大きく目を見開きこちらを睨みつける。


それを無視した上で、僕は宣言した。


「もういいでしょ。お互い、

話し合う気なんてないんだから。」


「ここからは、どちらが目的を果たすのか、

力で決まる決戦だよ。」




魔王と英雄の対面。


そこから少し離れた場所でも、

鎧と悪役の衝突があった。


「急げ! 囲まれるぞ!」


「ここは十分だ。

レンたちは向こうの増援に行ってくれ!」


「動きは止めた。今だ!」


指示が飛び交い、戦いの喧騒も相まって騒然とする。


鎧の刃と黒金の魔法。両者が交錯する激戦。


だがそれも、半刻と経たぬうちに鎮まる。


黒金が鎧を制圧した。


「まだ油断するなよ。伏兵がいるかもしれない。

負傷者は医療班の所へ。急ぐんだ。」


ゼインの指揮の下、戦闘やその後処理も進む。


戦闘員がまとまって動いていることもあり、

既に銀属二体と、

二百体以上の白兵卒を仕留めている。


「お疲れ様です、ゼイン様。

・・・この辺はもう片付きましたね。」


「そのようだな。レン、君のサポートのおかげだ。」


「いえいえ。俺なんて全然。」


謙遜こそしているが、

黒金側の被害が抑えられているのは

彼の働きが大きい。


魔力の矢を放つという既存の魔法に、

眷属化で得た「雷」を上乗せ。


直接は鎧を壊せずとも、

電流で動きを止めることはできる。


この隙に他の戦闘員が攻撃することで、

難なく鎧を狩ることができた。


「ゼイン様の魔法があるおかげですよ。」


ゼインには「再生」の力が発現。


傷やダメージの回復により、

魔力増減の負荷も大きく減った。


参戦している全員に魔法をかけており、

黒金側の魔力を底上げしている。


「でも、本当に戦わないんですか? 」


「魔王様は、戦闘員としてはほぼ引退って

仰ってましたけど・・・」


「ああ、そうだ。

これからは指揮や後方支援に専念する。」


「少なくとも、最前線で

剣を振るうことは今後ないだろうな。」


「・・・良いんですか?  

能力的には、前より戦いやすく

なっているんですよね?」


心配そうにレンは見つめる。


だが、ゼインの顔には露ほどの後悔もなかった。


「これ()良いんだよ、レン。

私は元より、前に出て目立つような柄ではない。」


「それにこれは地味だが、

確かに意味のある役割だ。」


「私が裏方に徹するからこそ、こういう時、

魔王様やレオナが自由に動ける。」


「その方がずっと強いだろ?」


ゼインの言葉にレンは納得、

どころか恥ずかしい気持ちすらあった。


この人は、ただ折り合いをつけたのではない。


もがき苦しみ、自分の価値について悩んだ末に、

自らが歩む道を切り開いた。


自分の役割について前向きに納得し、

そして誇りにも思っている。


レンは、浅はかな考えで同情した自身を恥じた。


「すみません。確かにその通りですね。」


「魔王様とレオナが同時に大暴れするなんて、

敵からしてみれば相当恐ろしいでしょうし。」


「ああ。魔王様もそうだが、特にレオナだ。」


「正直、眷属化で一番強くなったのは彼女だろうな。」


「ですね。元々強かったですけど、

もう俺たちじゃ足元にも及ばないですよね。」


レンやゼインの言葉通り、

レオナは最も自由に暴れていた。


彼女の戦いは荒々しくも、どこか艶やかでもあった。


だが、まだ熱を帯び始めたばかり。


獣の女王。その蹂躙が今、始まる。

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