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悪役転生  作者: こすもす
21/29

悪役転生第21話 矜持


「では、話を聞かせてもらおうかな。」


黒金城、その地下牢。


金鎧との一戦を終えた僕たちは、

一人の男を尋問していた。


白いローブに身を包む、

言っては悪いが平凡そうな男。


なぜ彼を捕えるに至ったのか、時は少し遡る。




金鎧の撃破後、

黒金城へと帰ろうとした矢先の出来事。


突如、レオナが動かなくなる。


疲労も厭わず聞き耳を立てていて、

かなり集中している。


見かねたノエラが、どうしたのかと尋ねた。


レオナはその言葉を遮り、


「誰? そこにいるんでしょ?」


と、声を上げた。


その方向に人の姿は見えない。


しかしその直後、ザッ、ザッ、ザッ― と、

誰かが森を走る音が聞こえた。


姿は見えず、だが足音は聞こえる。


まさかと思ったときには、もうレオナが動いていた。


地を踏み台に跳び、木の幹を蹴りまた次の木へ。


地面に降りることなく、

矢の如き速さで相手を追い詰める。


気付くともう相手に追い付き、

一見何もない空間に跳び蹴りをした。


すると、確かに人型のシルエットのようなものが

宙を舞い、そのまま木に激突。


魔法が解けたかのように、相手の、

透明人間の姿が露になる。


白いローブを着た黒髪の男。

国英と見て間違いはない。


が、


「痛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


不意に泣き叫ぶ。あまりの声量に一瞬驚いた。


「背中痛い。お腹もだ・・・内臓ウゥってなった。」


「でもそれ以上に顔が痛い。

おでこから当たった。」


「歯は折れ、・・てないか。」


「でも木とチューしちゃった。最悪だよ。

・・・女の子とはまだ一度もしたことないのに。」


透明になれる国英。


それだけ聞けば脅威だが、

子供のように泣き喚くこの姿。


良くも悪くも、国英とは思えない有様である。


現に女性陣も引いているし、

僕たち男性陣も苦笑いするしかなかった。




そんなこんなで、泣いてジタバタする彼を拘束。


一旦牢屋に入れ、

全員で金鎧戦での傷を癒すこととなった。


ゼインを除く三人は、翌日には回復。


これまでの疲労もたたったゼインは、

もうしばらくかかるとのこと。


だがもう以前のような無理はしない。


だから僕たちも、

安心してやるべきことに集中できる。


「わぁぁぁぁ最悪だぁ、捕まっちゃったぁぁ!

最悪だぁぁぁ、殺されるぅぅぅぅ!」


とは言えこの有様。


泣くは叫ぶは、尋問どころか会話すら難しい。


余りにもジタバタするので触手で縛るが、

それでも喚くのを止めない。


だが、その割には口が堅い。


口から出るのは泣き言ばかりで、

肝心なことは何も話さない。


「いい加減落ち着きなさいよ。大の男がこんな・・・

恥ずかしくないわけ?」


見かねたレオナが嗜める。すると、

真剣に何かを考えるような顔をして言った。


「・・・君可愛いね。おっぱいも大きいし。」


「チューしていい? いや、

さっき木とチューしちゃったからそのクゥッ―」


拳とキスすることになった。


良かったね、キスできて。


「レオナ、あんまり捕虜を傷つけるものでは―」


ノエラがレオナを嗜める。すると


「ああ、お姉さんも綺麗だ。」


「チューか、お尻触るかしていい?

そしたらちょっとは情報を―」


平手とキスすることになった。


良かったね、キスできて。


「ハァ、ハァ、痛い。ねえ、ねえ!

お願いだからどっちかチューさせてよ。

本当に少しはしゃべぇ―」


今度は二人の足裏とキスした。


良かった、のかな? 一応キスできて。


「もうイヤ。これ以上時間割きたくない。」


「全くです!

こんな男が大した情報を持ってるとは思えません。」


決定打はこれだった。


二人の言葉を聞いた直後、

彼の頬が緩んだように見えた。


気のせいかもしれない。

だが、もしそうだとすれば―


「君、それ演技だよね?」


図星だった。


空気が揺らぎ、一瞬だが

彼も目を丸くしてこちらを見た。


「ずっと不自然だったよ、君。」


「子供みたく泣いているくせに目は泳がない。

ボロも出さない。」


「かと思えば、バカみたいな発言をして

女性を怒らせるような真似をする。

本気で怖がっている人の態度じゃない。」


僕は目を細める。


「演じていたんだよね?  卑しくて情けない、

碌な情報も持ってないであろう雑兵を。」


今までの醜態が嘘のように静かになる。


そして、


「バレたか。

まあ所詮、ダメ元でやった作戦だったけどな。」


透明人間の素顔を、ようやく見ることができた。


「驚いたよ。あの泣き顔も全部演技だったとはね。」


「半分はな。残りは割とマジだよ。」


「そもそも私は国英だが、厳密には戦闘員じゃない。

死ぬ覚悟なんてないんだよ。」


「ただ、任務に失敗した挙句、

捕まって情報を漏らしたとなれば処罰される。」


「処刑も有り得るし、少なくとも

国英としては死ぬ。」


「何も喋らず敵に殺されるか、

喋って味方に殺されるか。」


「だったら前者の方がいい。そう思っただけだよ。」


非戦闘員なりの、諜報員としての覚悟。


とても推し量れるものではないが、敵だとしても

一目置くべきと思った。


「さぁ、諦めてとっとと殺せ。

拷問なんて、やるだけ時間の無駄だ。」


だからこそ、これからすることを心苦しくも感じる。


「安心しなよ。元より拷問なんてする気はない。」


「でも、情報はもらう。」


彼の顔が険しくなる。近づく僕を警戒する。


「八岐大蛇  蒼毒(そうどく)


そう唱えた僕の右手が、青く変色する。


夏の海より濃い青に、彼の顔から血の気が失せる。


「何する、あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁ―」


右手で触れた彼の頭も、同じく青に変色する。


「蒼毒。僕の扱う毒の一つで、洗脳効果がある。

こういう時にはうってつけなんだ。」


「済まないね、英雄さん。悪役としてあなたの正義、

いや、矜持を踏みにじらせてもらうよ。」


じっくり、じっくりと、彼の頭に青が侵食する。


数分かけて毒を流し、洗脳は完了。

ようやく尋問が始められる。


「まず、君の名前と所属を教えて。」


「ハルス・シルクです。

白騎士、グラディオ・スペリオン様の

補佐をしています。」


「グラディオ・スペリオン!?」


この名にノエラが反応した。


「何者なの?」


「白騎士、最上位の国英の一人です。

ただ、その中でも得体の知れない存在でして・・・」


「と、言うと?」


「ほとんど情報がないからです。」


「先代魔王が討たれた頃に白騎士になったんですが、

いくら調べても素性も魔法も、

何も分からないんです。」


「今まで前線に出てきたこともなく、

完全に謎の存在でした。」


・・・だとすれば、これはチャンスだ。


国英の中枢、

ないしは王家の深い情報が手に入るかもしれない。


「君は、どんな任務であの場にいたの?」


「鎧を倒した者を追跡し、

調査するという任務です。」


「鎧はグラディオが操っているんだね?」


「そうです。」


「目的は? 

最近鎧の軍勢が地方の村を襲っているけど、

それには何の理由がある?」


「人を回収するためです。」


「回収してどうする?」


「鎧を作ります。」




「―は?」


意味の分からない言葉に、思考が止まる。


「鎧を作る、とは?」


「人間を原料にして鎧を作ります。

それがグラディオ様の魔法です。」


淡々と、明瞭にハルスは説明した。


予想の斜め上の情報に、

胸にこびりつくような嫌悪感に、

僕たちは言葉を失った。

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