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悪役転生  作者: こすもす
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悪役転生第20話 未来


食い入るように自身の剣を見つめる。


剣には異様なまでの魔力が籠められており、

理由は一つしか考えられなかった。


「これは、私の魔法?」


「もちろん。それ以外にないでしょ。」


魔王様が続けて説明する。


「恐らく気絶している間、君はずっと魔法を

発動させていたんだ。

自身も気付かないうちにね。」


「・・・そんなことが? 本人が気絶すれば、

魔法は効果を失うはずでは?」


「まぁ、普通はそうなんだけどね。

完全に気絶してはいなかったか、若しくは―」


「気を失ってもなお、

戦う意志だけは失っていなかったからか。」


「いずれにせよ君が必要だ。やってくれるね?」


必要とされる喜びが体に染み渡り、

応えなければという責任感で身が引き締まる。


返事は決まっている。


「やります。」


魔王様が微笑む。


こんなに充実感を覚えるのはいつ以来だろうか?


体は相変わらず動かないが、

疲労感は嘘のように吹き飛んでいる。


「魔王様。それで、私は何をすれば?」


「君には― ノエラ、後頼めるか?

レオナと交代してくる。」


そう言って、魔王様は急に駆け出す。

今度はレオナが戻ってきた。


「ゼイン! 目覚めたの?」


「良かった。でもボロボロね。」


「そういう君こそ。」


「冗談。なんてことないわよ、こんなの。」


そうは言うものの、顔からは疲労が見て取れ、

体には所々火傷のような傷もある。


どれほどの時間、あの金鎧と戦っていたのだろうか?


「・・・済まなかった。」


無意識に言葉が出た。そして口が止まらなくなる。


「君に言われたあの言葉、

私のためだったんだよな。」


「そうとも知らず、自分の全てを否定されたような

気になって、挽回しようと突っ走って

こんなことに。」


「謝って済む話ではないが―」


トン


頭に手刀がのる。決して痛くはない。


だがレオナを見ると、

少しムスッとした顔をしていた。


「やめて。私、謝られるのは嫌いなの!」


「それにもとはと言えば、

私が偉そうなこと言ったのが原因だし。」


「だからこの話はここまで。

まずはあの鎧を倒して、その後は、

どう国英を倒すか、一緒に考えていきましょ!」


レオナの笑顔が眩しく映る。


自然と前向きになれる明るさに加え、

強力、だが決して強引ではないリーダーシップ。


自分にはないその魅力に、

やっと安心できるようになった。


ブゥゥァァァァァァン


またあの轟音が響く。


金鎧が矛を振るい、

敵を消し飛ばさんと衝撃波を放つ。


魔王様は跳び上がり、かろうじて衝撃は回避。

衝撃より速い熱の波が、体をじりじりと焼く。


それでも―


「合図です。二人とも!」


例のインカム、というものを通して号令が届く。

ノエラから聞いた作戦が始まる。


まず動くのは魔王様。


金鎧の懐に飛び込み、

触手という触手を使って全身を拘束。


当然金鎧も抵抗する。


全身の黄金を、その輝きを溢れさせ、

無数の雷を、放電攻撃として一気に解き放つ。


雷鳴は鼓膜を貫き、光で目が焼け付く。


が、思ったほど雷は広がらず、

ほぼ全て魔王様に集約される。


並の者では爆死で済まぬ程の電撃。


無事を保っているわけは、魔王様の吸収能力。


一度吸収したものには耐性がつき、

同じ攻撃は効かなくなる。


とは言え、魔王様にも容量はある。


現に体は小刻みに震え、

いつ決壊してもおかしくはない。


とどめを刺すべく、本命たる矢を放つ。


矢とはレオナの事であり、放つのは私とノエラ。


私の役割は、

無意識に魔力を込めた剣をレオナに託し、

彼女自身の魔力も可能な限り強化すること。


そして、武器も体も強化したレオナを、

空中へ運ぶのがノエラの役割。


空間転移で、

彼女をちょうど金鎧の頭上へ移動させる。


これが作戦の全貌。


レオナの力と、自由落下で金鎧を叩き切る。


いや、レオナと自由落下の力、ではない。


魔王様の策、私の魔力、ノエラの魔法、レオナの力。


この四人が、黒金の未来を担う四人が、

それぞれの得意、強さを合わせて金鎧を倒す。


今も、そしてこれからも。


この四人が中心となって新たな黒金を創り上げ、

国英を倒して世界を変える。




急降下するレオナが目に入った。


剣の魔力は限界に達し、彼女は回転する。


速度は増し、魔力の刃が空気を裂く。そして―


金鎧の無感情な諦め。衝撃を伝える音。


その二つよりも速く、金鎧の体は二つに割れた。


その後銀鎧の剣もまた、

集約された力に耐え切れず崩れ去った。




これは四人の力が剣に集約され、

その刃が敵に届いた瞬間だった。


しばらくして、魔王様とレオナが戻ってきた。


幸い大怪我はしていないようだが、

レオナはガス欠気味で、どこか上の空になっている。


魔王様は口を押えていて、

気分が悪いと顔に書いてある。


するとそんな目線に気が付いたのか、

魔王様が話し始めた。


「悪いね、変な顔して。これでもかと言うほど

電気を吸収したからさ。

供給過多で吐きそうなんだよ。」


「まあでも、これだけ魔力の電気も吸収すれば、

進化は時間の問題だと思うよ。」


「本当ですか!? 進化って、以前お話になっていた、

あの―」


「ああ。そうすれば、僕はもちろん、

黒金全体が格段に強くなる。」


「詳しくは後で話すけど、その前に―」


一呼吸した後、魔王様が改めて私を見た。

その表情は、優しく穏やかで、慈しみすら感じる。


「改めて礼を言うよ、ゼイン。」


「独断で動いたのはともかく、

結果としてレンたちは殺されずに済んだ。」


「それに君がいなければ、

あの金鎧には勝てなかった。」


「あの魔力の大きさは、君自身の、

不器用なまでの責任感の大きさだ。」


「こんなに頼りになる仲間がいることを、

魔王としても、

一人の人間としても誇りに思うよ。」


言葉が出なかった。胸の奥から温もりが湧き出る。


とめどなく溢れ、あっという間に心を満たす。


そして気が付くと、胸に収まりきらない温もりが、

涙となって溢れ出ていた。


「ありがとうございます。ありがとうございます。

ありがとうございます―」


これ以外の言葉は出てこなかった。


ただただ嬉しかったから。


必要とされたい。そう思っていた。

確かに今までも必要にされてきた。


でも、ここまではっきりと、面と向かって感謝され、

必要だと言われたことはなかった。


打算はあるのかもしれない。だがそれでも良かった。


蛇石京―黒金の現魔王。

策や言葉で人を動かし、後ろから組織を導く。


前魔王とも、レオナとも違う、

これからの魔王の資質。

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