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悪役転生  作者: こすもす
18/27

悪役転生第18話 無理


「・・・怒られてしまった。」


ゼインは呆然としたまま椅子にもたれかかり、

会議の様子を思い返していた。


鎧を倒せる武器を手にし、殲滅の心意気を示した。


だが返ってきたのは、心配と呆れ。


魔王様には「・・・ まあ、回復したらね。」と、

苦笑いされた。


ノエラは「そんな、無理なさらなくても。」と。

純粋に心配してくれたんだろう。


問題はレオナだ。


「アンタさぁ、そういうの向いてないんじゃない?」


この台詞は意外であったと同時に、

最も私の心を抉り、

消沈させる言葉でもあった。


気が強い彼女のことだ。


竹を割るような台詞が飛んでくると思っていた。


だが実際には、呆れたような、少し冷めた目で

「向いてない」と言われた。


この言葉の意味を、私はずっと考えている。


向いてないとはどういう意味だ?


何が私に向いていないと?


戦いか? 鎧は私では倒せないと?


・・・必要ないのだろうか?


私は、今の黒金には要らない存在?


脳が硬直するような考えが浮かんだ。


小刻みに首を横に振るい、必死に否定する。


そんな筈はない。

要らないなんて、用済みなんて―


「し、失礼します!  あれ、ゼイン様?」


唐突な伝令で思考が停止する。だが良かった。


呼吸が荒くなり、そのまま倒れていたかもしれない。


「大丈夫ですか?  すごい息が上がってますけど?」


「ハァ、ハァ、 何でもない。それよりどうした?」


「鎧です。魔獣討伐をしていた部隊が

鉢合わせたようで。」


「現在避難していますが、

追撃が激しく援軍を求めています。」


マズい。魔王様は例の仲介役への顔出しで不在だ。

レオナやノエラも同行している。


他に鎧を倒せる者は―


「分かった。私が行こう。」


私しかいない。いや、私がやらなければ。


「え、いや、あの、魔王様は―」


「魔王様は不在だ。だから私が対処する。」


「いや、でも流石に魔王様に―」


「魔王様が出るまでもない。」


「これを見ろ。魔王様が生成なさった銀鎧の剣だ。

これと私の魔法でなら、鎧など敵ではない。」


「城にいる戦闘員を集めろ。すぐに出るぞ。」


早口で指示を出すや否や、

ゼインは出撃せんと部屋を飛び出る。


しかし部下は違う。


いつもの冷静さを欠いた上司に、

困惑を隠せないでいる。


「お待ちください。

報告では強力な個体もいるとのことです。

ゼイン様一人では―」


「出ると言っているだろう!!」


思わず激昂するゼイン。

だがすぐに苛立ちを抑え込み、改めて指示を出す。


「・・・私が出る。魔王様の手を煩わせる

必要はない。」


「とにかく戦闘員を集めろ。いいな?」


「・・・分かりました。」


「私はまだ戦えるんだ。」


そう呟き、足早に歩く上司の背中に、

部下は一抹の不安を覚える。


まとわりつく不安や焦りを、無理に振り払っている。

そんな姿に見えたからだ。




■ 木々をかきわけ、

森の道なき道を必死で逃げる一団。


元はレオナたちの盗賊団にいた。

集団でなら国英を退けた経験もある。


しかし、


「ヤベェよ。国英より強えんじゃねぇのか、

あの鎧共。」


「一体一体は剣で倒せても、

数が多過ぎて対処できねぇ。特にあれは―」


「話す余裕があるなら走れ!

追いつかれたら終わりだぞ。」


今は逃げるしかなかった。

勝つ手段があるのと、実際に勝てるかは別の話。


足の痛みが限界を迎え、

転んで立てなくなる者も出てきた。


容赦なく振り下ろされる鎧の凶刃。


だが、その刃で血が流れることはなかった。


青の軍服を身にまとい、

かつては黒金の全てを取りまとめていた男。


彼が凶刃を受け止め、

返す刀で切り伏せたからである。


「えっと、ゼイン様、ですよね?」


「ああ。君は確か、レオナのところにいた―」


「はい、レンです。増援感謝します。」


「礼はいい。とにかくやるぞ。」


「はい!」


ゼインたちの加勢により、形勢は逆転。


逃げていた一行も攻勢に転じ、

次から次へと鎧を切り伏せていく。


戦闘員全員に支給された銀鎧の剣。


厳密には蛇石京が生成した物だが、

それらは期待通りの効果を発揮していた。


白鎧はすでに大半が敗れており、その体は、

斬られた箇所がガラスのように粉々に崩れている。


また、前回の蛇石との戦いとも異なり

大人数で戦っているため、合体で強化する隙も無い。


数と防御力。


アドバンテージを潰された白鎧は追い詰められ、

とうとう全滅した。


「ハァ、ハァ、 レン、鎧はこれで全てか?」


「いえ、一体とても強いのがいて。

とにかく今のうちに逃げないと」


「?  逃げるとはどういうことだ?

この勢いのままその鎧も倒すべきだろう。」


「ダメです。説明は後にしますがとにかく逃げ―」


一瞬、背後に眩い、真っ白の光が見えた。


直後空気が大きく膨らみ、

爆ぜるような轟音が聞こえた。


そして気が付くと、

ゼインは同じく倒れている仲間と、

上部が消し飛んだ木々を目にする。


木や土の一部は焦げ付いていて、

それこそ落雷が落ちたかのようだった。


カシャン、カシャン―


前方から、鎧特有の足音と共に、

光の主が粛々と歩みを進める。


その鎧は金色だった。


派手に輝くのではなく、

荘厳な光が全身に浸み込んだような黄金色の鎧。


その手には、同じく黄金色の矛を有している。


重い体にむち打ちながらも、

ゼインは即座に飛び掛かる。


魔法で魔力を増幅させた一撃。


金鎧は堂々と矛で受け止める。


そして、鎧の体が光り始める。白色の輝きが増す。


この光に、身の毛がよだつ恐怖がゼインに走る。


皆を吹き飛ばしたあの光。魔力減衰の魔法をかける。


刹那、金鎧の体から無数の稲妻が放たれた。


ゼインの魔法で威力こそ落ちているものの、

その場にいた全員が被弾した。


魔力減衰をかけたとは言え、

ダメージを抑えるのが限界だった。


金鎧は矛を振りぬき、ゼインは後ろに下がる。


もう立っているのもやっとだ。


だが金鎧は次の行動に出る。


矛を振り上げたかと思えば、それを地面に突き刺す。


ゼインは意図を理解した。


それでも体が動かなかった。


今まで蓄積したあらゆる疲労が、

彼の動きに遅れを生んだ。


地面を放射線状に流れる無数の稲妻。


既に動けない者にも追い打ちをかけ、

防御が遅れたゼインにも致命傷となった。


膝から崩れ落ちるゼイン。


痺れで体の感覚はほぼなく、意識も朧気。


「向いてないんじゃないの?」


唐突にレオナの言葉を思い出す。


そうだ、初めてではない。


私は以前にも同じことを言われた。


鎧の足音が近づいてくるなか、

かつて黒金を束ねていた日々が頭を巡った。

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