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悪役転生  作者: こすもす
12/21

悪役転生第12話 開幕


「来たよ、悪役が。」


蛇石京。黒金の魔王となった彼は、

今まさに殺される寸前だった者を救った。


黒い外套に、黄金色の仮面。


曲線的な彫刻が施され、

複数の段差が階段のように重なり、

額から口元まで表情を覆い隠している。


あり得ないことだった。

人々にとってその姿は恐怖の対象。


まさに悪役だった。


それが人を救った。

こんな人助け、最近は大半の国英ですら行わない―




■ 「レオナたちが襲われてる?」


話は十分前に遡る。


盗賊団の拠点を捜索していたノエラが、

困惑した様子で僕に連絡した。


「はい。土煙が上がった方向から、急に鎧の頭が

飛んできて・・・それで来てみたら―」


「レオナや村人たちが、

鎧兵と大乱戦をしていると。」


「そうです。」


・・・何事? 予想の斜め上の展開に

混乱を隠せない。


鎧の頭は生首ではなく、魔法で鎧そのものが

操られているとノエラは言う。


またそんな魔法は聞いたことがなく、

少なくとも国の討伐軍ではないとのこと。


「レオナたち、このままだと負けると

思いますが・・・どうします?」


どうします? か。


鎧に黒幕がいるとして、

それが国英かどうかさえも分からない。


判断材料が少ない以上、戦略的には傍観すべきだ。


だが、背に腹は代えられない。


「助けよう。ノエラ、僕を迎えに来てくれるか?」


「えっ、でも―」


「レオナに何かあれば、換金ルートが使えず

僕たちも詰む。共倒れは嫌でしょ?」


「それは、そうですが・・・」


「それにね―」


一拍間を置き、その後の一言でノエラは納得した。


「交渉するなら、圧力より恩を売るべきだと

思うよ。」




■ 時は戻り、現在。


異質な魔王に驚き、村民たちは凝視する。


そして、彼と先代魔王の差異に気付いた。


先代魔王は、力でものを言う大男だった。


豪胆ではあったが、裸の上半身に外套を纏い、

自身の身なりも、敵も味方も、基本雑に扱っていた。


一方の現魔王。


子供のような体格から、

力強さや荒々しさは感じない。


だが外套の下、貴族然とした身なりからは、

粗雑な印象も一切感じない。


黒金、そしてこの世界にとってすら新参者とは

思えない程、その佇まいは洗練されている。


思えば先程の「悪役」という言葉には、

自嘲も皮肉もなく、自信すら込められていた。


「ノエラ」


「はい。」


魔法陣から、一人の女性が現れる。

従者然とした身なりも姿勢も崩さずに立っている。


「鎧は僕が対処する。

村民たちを黒金城まで逃がしてくれ。」


「それから怪我人の治療も。任せたよ。」


「かしこまりました。」


直後、ノエラの足元を中心に、

巨大な魔法陣が展開される。


紫の光を放つ魔法陣。


その光が急激に強くなり、そして、

鎧たちの前から全てが消えた。


ただ一人、魔王だけを残して。


「・・・じゃ、やろうか。」


あっけらかんとした声を出したかと思えば、

「やろうか」と、低く、重みのある声に変わる。


その言葉に反応したのか、

鎧たちは一斉に切りかかる。


魔王は右腕を水平にし、親指を除く4本の指を揃えて

蛇の上顎を、親指で下顎を模す。


直後右手は蛇の頭に変容し、開いた口からは

腕半分ほどの長さはあろう舌がうねり出る。


そして口を閉ざす。うねりが止まり、舌は刃と化す。


刃は一瞬で紫に染まる。


刹那―


魔王は腕を振るい、剣とは比較にならない速度で

鎧の胴を溶かし、裂いた。


右腕の一閃だけで、前方の鎧を三十は切り伏せた。


周囲の鎧は、瞬時に伸縮した刃を視認できず、

故に、間合いの外にいた味方までもが倒れた理由は

理解できなかった。


だが、理解できずとも鎧の足は止まらない。

正面で勝てないのなら、背後から斬ればいい―


しかし魔王は動じない。


背中から毒を宿す触手が蠢き、

音もなく鎧を溶かす。


背後にいた敵は、魔王に一瞥もされずに

鉄塊へと果てる。


その後鎧は側面を狙うも、左手を変容させた魔王に

一瞬で裂かれた。


目もくれずに鼻で笑う魔王の顔は、

「話にならない」 そう口にするも同然だった。


鎧たちが、魔王へ向け改めて剣を構える。


毒で大勢裂かれたとは言え、

まだまだ数的優位は変わらない。


だが魔王は恐れてはいない。

むしろほほを緩め、この場を楽しむ素振りもある。


大勢の敵を一人で蹴散らす“悪役プレイ”。

一度やってみたかった。


ただ、それはそれとして・・・


「君たちは魔法で作られた鎧。人間でもなく、

生物ですらないんだよね?」


深呼吸し、魔王としての殺気を緩めつつ続けた。


「魅力の出る悪役ってさ、仲間には優しいんだよ。

でも甘くはない。」


「そして、僕もそう在りたいと思ってる。」


「だからレオナにも、財宝盗んで、僕たちを

蹴り飛ばした責任は取らせたうえで、

助けようと思ってる。」


「だからね・・・」


再び低くなった声に殺気を含ませ、

鎧に警告を放つ。


「邪魔するなら壊すよ。一人残らず。」


鎧は怯まず、されど動かず。


単調な動きしかできないものの、恐れも痛みもなく、

ただ数と硬さで相手を押し潰す。


それで十分だった。


しかし、今回は違う。


鎧は剣を構えたまま、ゆっくりと後ろへ下がった。


“このままでは勝てない”という判断のもと、

鎧たちは戦法を変えた。




■ 鎧の軍と魔王が対峙する村。


その戦場の外では、ノエラの指揮のもと、

負傷者たちへの治療が行われていた。


だが、


「だから! その人たちはもう助からない!

早く他の人を治療して!」


必死な想いで怪我人を助けようとするノエラ。


しかしそんなノエラの指示を、

一部の村民が拒否し出した。


これは不運と言うべきか・・・

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