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悪役転生  作者: こすもす
10/16

悪役転生第10話 限界


「おはよう、メイ。ちゃんと眠れた?」


メイが目を覚ますと、レオナの顔が目の前にあった。


メイの体に覆いかぶさりながら、

うっとりとした目で彼女の顔を見つめている。


「ん~。おはよう、レオナちゃん。

でもちょっと近いよ。」


「こっちの方が安心するの~、私は。」


そう言いながら、レオナはメイを抱きしめる。


メイ自身、こうしてレオナと触れ合うことは、

とても気持ちいいものだと思っている。


「そうだ、メイ。村の見回り、一緒に行かない?」


「でも、今日の見回りはレン君がやるんじゃ―」


「いいじゃない。見回りなんて、

何人いても困らないんだし!」


「・・・分かった。じゃあ行こう。」


「やったぁ! ありがとう~、メイ~」


レオナとの見回りが嫌なわけではない。

ただ、メイには少しだけ憂いがあった。


彼女は昨日、戦ったり揉めたりで疲れていた筈。


にも関わらず、メイより先に起きていた。




■ 照りつける日の光が強くなるこの時間、

レオナとメイは村の見回りをしていた。


「あー、レオナおねーちゃんだー!」


「本当だ! メイおねーちゃんもいるー!」


子供たちの無邪気な声が背中から飛んできた。


五人ほど子供が駆け寄ってきて、

レオナやメイにしがみつく。


「ねぇー、レオナおねーちゃん。

またがおーやってー!」


子供の1人がせがんできた。レオナは苦笑いをし、


「もぉ~、特別だよ。いい?」


そう言うと、レオナは軽く息を吸い込み、

空に向かって口を開いた。


大気を揺るがす轟音の咆哮―

ではない。


空気が軽く揺れる程度の、優しい吠え。


「がおー!」


きゃー!  と歓声をあげて、

子供たちは笑いながら逃げていく。


レオナは右手を振りつつ、癒されたように笑う。


だが、笑顔の隙間にほんの一瞬現れた疲労を、

メイは見逃さなかった。


そして疑問にも思った。

どうして?  どうしてそこまで?


一体何のために、誰のために頑張っているのか?


「あ、あの、レオナちゃ―」


「レオナ様、ここにいらっしゃったんですね。」


メイが話しかけようとした矢先、年老いた女性が

レオナに話しかけてきた。


「“様”なんてやめて。それで、今日はどうしたの?」


「はい。実は、少ないんですが、

差し入れをもってきまして・・・」


「いいって、そんなの。」


「いえいえ、ほんの気持ちです。あなたが魔獣や、

誘拐目的の賊を倒して下さるおかげで、

私たちは今安心して暮らせているんですから。」


「・・・そう。なら良かった。」


それだけ言って差し入れを受け取る。

それでも、胸の奥は軽くならない。


“賊”という言葉に、レオナは一人の男を思い出す。


彼女が殴り、破談の原因となった、

黒金幹部のあの男。


アイツがメイに何をしようとしたか知れば、

きっとあの子は傷つく。


だから、メイは一生知らなくていい。




■ 「・・・あの、メイ?  もういいわよ。

十分回復したから。」


「だめ、もうちょっと。」


十分ほど前に遡る。


見回りの途中、村の中でも人気のない場所に

立ち寄った時、急にメイがレオナの正面に立ち、

次の瞬間には抱き着いてきた。


「!?  メイ? どうしたの、急に?」


「どうしたのって、レオナちゃんなら

知ってるでしょ? 私の魔法。」


「 ほら、 レオナちゃんも!  私のこと抱いてよ。」


「言い方!」


つい突っ込んでしまったとはいえ、

メイの言うことは正しい。


彼女の魔法は回復(ヒーリング)


触れた相手の傷を癒し、体力や魔力を回復させる。

また、相手との密着度が高い程、効き目も強くなる。


レオナからも抱き着くことで回復の効率は上がる。

そういった意味では正しいのだが―


「メイ、あの、誰かに見られたら、

ちょっと恥ずかしいんだけど?」


「うるさい。いつもやってるでしょ?」


「いや、そうなんだけど・・・」


さっきから、メイの様子がおかしい。

言葉もやや乱暴で、妙に積極的だ。


別に嫌ではないのだが、

いつもとは立場が逆で、もどかしい気持ちもする。


「・・・メイ?  もしかして、不安なの?」


「・・・」


抱き着く力が強くなる。これが答えだ。


「大丈夫よ。知ってるでしょ、私の強さは。」


レオナもメイを抱き返し、穏やかな声で話し始める。


「それに、私にはメイがいる。

守るべきメイが、すぐ近くにいる。」


「メイがいてくれるから、私は何だってできるし、

誰にも負けないの。」


「だから安心して。メイのことは、

何があっても絶対に守るから。」


メイを抱きしめる力が、より強くなっていく。


昨日と同じか、それ以上の温もり、優しさが、

レオナの体からメイに伝わる。


でも、でも―


(違うよ、レオナちゃん。私が守ってほしいのは、

レオナちゃんのほうなんだよ。)


(私だってこの魔法で、

レオナちゃんのことを守れるんだよ。)


(レオナちゃんのこと、私は―)


「レオナ?  ちょっといい― おっと!

あ、後にした方がいいか?」


想いを伝えようとした矢先、レンが来た。


今日の見回りにして、

昨日レオナが大ゲンカした相手だ。


「いや、大丈夫よ。どうしたの?」


「そうか。まあ、メイもいるんなら

ちょうどいいか。」


「さっき子供たちの笑顔を見てたらさ、

俺も少しは冷静になれたみたいなんだ。」


「昨日のことを謝らせてくれ。色々と言い過ぎた。

この通りだ。」


レンはそう言い、深々と頭を下げる。


レオナやメイと同じように、

彼もまた思うところがあったのだろう。


「レン、頭を上げて。こっちこそごめ―」


「レン様!  レオナ様も!  大変です、

た、助けて下さい!」


さっき差し入れを持ってきた老人が、

血相を変えて現れる。


「どうした?  魔獣か?」


「はい! それも、とんでもない数が

襲ってきていて―」


轟音と共に、大木の背丈をも超えるような

土煙が舞う。


駆け出すレオナ。

だがその呼吸は、いつもより少し窮屈だった。


戦闘前の緊張か、それとも―

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