一章 夢
人間は愚かである。こんなこと誰もがよく知っているであろう。言わなくてもよくわかる。これは人間と言う知能の高い生物に産まれた呪いである。こんな呪い、必要な訳が無い、だが、完璧と言うのもまたつまらん。どうしたものか、人間は全て、何処か欠損して産まれてくる。これは体であったり知識であったり様々だ、だが、致命的な弱点には変わりない。私の場合、産まれただけで害獣と見なされる性格であろう。
私はクソのような街に産まれた、街や親がクソでなのではない、人がクソなのだ。毎日罵倒され追い詰められる毎日、実につまらぬ毎日だ。毎日嫌々学校に向かい、大人たちは子供の行為に目を背け、現実から逃げ続ける。あぁ、こんなに馬鹿な世界あるものか、つまらない。弱い私に向かい蝶が一匹飛んできた、美しい、私は昔から昆虫や恐竜が好きだった、だが、幼い者達はそのロマンを理解することが出来ない。私だって、最初は理解することが出来なかった。私だって幼いからだ。蝶を追うと心無き言葉が飛び交う。
「気色悪い」
そんな様な言葉が、当時の私にはとても苦痛であった。ただ、好きなものを追うだけでこのような言葉を言われなければいけないのか、疑問に思うほどの余裕もなく、ただ、今を一生懸命生きる事だけを考えて、明日のことなど考えずに、ただ、いまを考える。何も言わず、ただ、つまらぬ人生、いや、害獣としての生を全うするために。
ある日、私の元に1匹の蛾が飛んできた、羽はボロボロで、とてもじゃないが空は飛べない。その日は雨だった、私の嫌いな雨、晴れであっても嫌いだ。その日は蛾を安全な場所に避難し、世話をした。どれだけ嫌われようと、どれだけ傷付けられようと、ひとつの小さな命に価値を見出したのは私である。
その日から世話を続けしばらくしたある日、夢を見た、とても現実との境が分からなくなるような夢を。私はその時点で人の顔が分からなくなっていた。それも相まって境がわかりにくくなったのだろう。夢で誰かが語り掛けてくる。振り向くと、そこには大きな満月に照らされた竜の翼を生やした狼がこちらに鋭く目を向けていた。美しいウロコと毛並み。肝心な言葉は何を言っているかもさっぱりだ、ただ、なんとなく伝わった。「やられっぱなしはつまらない」そう言ったのだろう。何となく、勘がそう言った。
不思議な生物が現実に現れるようになった。それとほぼ同時に耳がよくなった気がした、でも、まだ人の顔が分からない、皆仮面を被ったように見える。いつも声で判断していた。「なぁ、上履き、捨てといたから」
聞き馴染みのある声が嫌でも頭に響く、肩が少し痛い、教科書で叩かれたようだ、また、あざが増えた、また親を心配させてしまう。どうしたものか。
次の日、また同じことが起きた、何度も繰り返すうちに私も腹が立ってきた。隣からは低く唸る声が聞こえる。相手に何かが噛み付いた。あれは、夢に出てきたヤツだ。そんなことを考えていたら、私は相手を殴っていた。あぁ、あいつは悪魔だった。




