急変する事態。そして超加速
それから、私はマルタが生み出した果実を殿下と共に実際に味わったり、道中で遭遇したドラゴンについて分かっていることを殿下に解説したりしながら、拠点に保管しておいた資料を始めとした、保存食にドラゴンの体の一部など、必要と思った品々を何往復かして船に運び込んだ。
改めて見てみる資料の枚数はやはり膨大なもので、その他の物資も含めれば、船内の一室が足の踏み場が無いくらいの量にまで達していた。
「やっぱり、ボートとかじゃなくてちゃんとした船舶を用意したのは正解でしたね」
「あぁ。よくもまぁ、これだけの数の資料を書き溜めていたものだ」
どこか感心したように呟く殿下に、私はこれまでの七年間を思い返す。
大変なことも、本当に多い半島生活だった。肉や炭水化物が確保できなくて毎日フラフラだったこともあるし、マルタに出会う前は不用意に野草やキノコ、よく分からない木の実に手を出して死にそうになったことだってある。
「趣味の延長で楽しくやってましたからね。毎日新しい事の発見で、ペンが止まらなかったんですよ」
それでも断言できる。ドラゴンに囲まれ、ドラゴンの事を解き明かし、ドラゴンと触れ合えた、この半島での日々は、私の人生にとって何物にも代えがたい価値があったと。
私はこれから生活の拠点を変えることになるけど、それでも巨竜半島を探索することを止めないだろう。むしろ携帯テントとか、野外で料理ができる小型魔道具とか、色んな物資を融通してくれるから活動の幅が広がるし、今から楽しみなくらいである。
「いずれにせよ、何とか夕方になる前に戻れてよかったですね。思ったよりも早く終わりました」
スサノオが引っ張る中型船の甲板で、遠ざかる巨竜半島を眺めながら、私は懐から取り出した懐中時計の蓋を開けて呟く。
この懐中時計も、閣下が私に与えてくれた物資の一つだ。観察レポートを作成する時、ドラゴンが具体的にどの時間に、どんな行動をしていたのかみたいな表記が出来なかったので、こういう時間が把握できる道具があるのはありがたい。
(それもこれも、殿下が大量の物が入る大きな箱を背負って来てくれたおかげだ)
私も箱を背負って往復してたけど、殿下は下手をすれば私が入れるサイズだし、それに物を収納したのを背負ってペースを落とさず何往復もしている辺り、真面目に体を鍛えてきたんだろう。線が細いから服着てると痩せて見えるのに……人体って不思議だ。
「やっぱり男手があるのと無いのとでは全然違いますし、助かりましたよ。暗くなった時間帯に野外活動は流石に危ないですし」
「ほう。流石のお前でも夜間に活動するような馬鹿な真似はしなかったか」
「え? いや、別にそんなことはないですよ。夜でも関係なく普通に出歩いてました」
あっけらかんと答えると、殿下はギョッとした顔で「はぁっ!?」と叫ぶ。
「先ほど自分で夜の屋外は危険だと言ったばかりではないか!? 貴様まさか、それを承知で明かりも何もない夜の巨竜半島でドラゴンの研究をしていたのではないだろうな!?」
「そのまさかですよ殿下。ドラゴンにも夜行性の種族が居たり、夜にしか起こさない行動って言うのもあったりしますからね。それを見過ごすなんて馬鹿なことを私がするわけ無いじゃないですか」
本当に何を言っているんだろうか、この人は。ドラゴンには数え切れない謎があって、私の生涯をかけても全貌を明らかに出来る見込みなんて無いって言うのに、一日の半分を無為に消費して拠点に引き籠るなんて真似、研究者としてはナンセンスの極みだ。
「……ま、真っ暗な野外で活動したせいで、足を踏み外したり引っ搔けたりして転がんだ回数は数え切れないし、何なら崖から落ちたこともありましたけど……生きてたんなら結果オーライってことで見過ごしてください」
「見過ごせるかぁっ! 命知らずにもほどがあるぞ貴様ぁ!」
叫び疲れたのか、ゼェゼェと殿下は息を切らし始めた。
結局は他人事なんだから、そんな我がことのように疲れるまで怒らなくてもいいのに……。
「昔は食料も確保できずに栄養失調で死に掛けもしたというが……貴様今まで本当によく生き延びられたな……?」
「それに関しては私も本当にそう思います」
本当、よく生きてたな私。巨竜半島に島送りされた時も渦潮に呑まれたことを始め、死にかけた回数は数え切れないくらいあるけど……振り返って見れば、私は悪運だけは強かったらしい。
「……そんな危険な目に遭っても、お前はドラゴンの研究を止めないのか?」
「絶っっ対、止めたりしませんよ。どんな目に遭っても、一生続けてやります」
私の前世の世界である地球でも、生涯をかけて危険と隣り合わせの生物研究を続け、世界に知り得た事実を発信し続けてきた偉大な学者たちが居る。
私も彼らをリスペクトする者として、何よりもドラゴンと言う種族に魅せられた一人の人間として、あの雄々しく雄大で超常的な、神秘に溢れた生命と向き合い続けると決めたのだ。
迷うことなく断言する私に、ユーステッド殿下は更に怒るのかも……そう思っていたんだけど、殿下は深く溜息を吐くだけだった。
「であれば、もっと自身の命を守ることにも気を配れ。何事を為すにも命あってこそだろう」
「む……」
それに関しては否定できない。ドラゴンのことになると他の事が頭から抜けるのは、自覚しても中々治せない私の悪い点だと思うけど……。
「とにかく、今後夜間に野外活動をするなら、明かりは絶やすな! 夜目だけを頼りに舗装も何もされていない場所を歩くなど言語道断だ! それから毒虫対策も徹底しておけ。毒にやられたら下手をしなくても死んでしまうぞ! そして何と言っても、拾い食いなんて真似は決してするな! 腹を下すだけでなく、単純にはしたない!」
「あ、はい」
いかん、何かお説教モードのスイッチ入れちゃったかもしれん。この人、こうなったら長いんだけど……。
「そして何と言っても健康管理は怠るな。健全な精神は健全な肉体にこそ宿る……まずは風呂にもまともに入らない不衛生な習慣と、サバイバル食ばかりの不摂生極まる食生活を見直すことだな」
「いや、私もお風呂には入るんですけど……」
ただそれよりも優先しないといけない事があるから優先順位を下げてるだけで、私が風呂嫌いみたいな偏見持つのは止めてほしい。
「後それから……昨日、ケイリッドのオリーブオイルが気に入ったと言っていたな?」
「え? まぁ、そうですね」
朝食に出てきた、ケイリッドのオリーブオイルに塩を混ぜた物を塗った丸パンも美味しかったし、私は気に入った。他領や他国に輸出する高級品だから、なかなか手が出せないのが惜しいくらいだ。
「食生活の見直しには、栄養価が高い食品が美味であると感じることが重要だと考えている。そしてケイリッドのオリーブオイルには、適量であれば健康に良いとされる栄養が多く含まれていると植物学者からお墨付きをもらったのだ」
「はぁ……」
「だから……お前一人が食する分のオリーブオイルくらいなら、確保しておいてやる」
そう言って、どこか恥ずかしそうに少し顔を赤くしてそっぽを向く殿下を見て、私は思った。
単にケイリッドのオリーブオイルが認められて嬉しいって言うのもあるんだろうけど、それ以上に、どうやら私は随分と心配を掛けてしまっていたらしい。
そのことを申し訳ないという気持ちにもなると同時に、少し嬉しくもなった。前世を含めたこれまでの人生で、ここまで私の事を真摯に心配する人なんて居なかったから……お説教されてるのに、悪い気分にはならない。
「それじゃあ、殿下の忠告に従って、オリーブオイルも有難く頂戴しましょうかね」
「うむ。そうしろ」
そんな会話をしていると、スサノオが引く船が港に着いた。
ポルトガのような漁村ではなく、セドリック閣下からきちんと事情が通達されている、辺境伯家が管理する軍港だ。おかげでドラゴンが現れたことにも大きな混乱が無く入港できたんだけど……。
「あれ……? 殿下、何か煙上がってません?」
地面よりも高い位置にある船の甲板から、遠くで黒い煙が天に向かって上る光景が見えたのだ。
それも焚火をしているなんて規模じゃない。何かが大量に燃えているとしか思えない、膨大な煙だ。
「殿下ぁっ! 一大事です殿下!」
その時、眼下から大きな叫び声が上がった。見下ろしてみると、そこには馬に乗って鎧を着ている辺境伯軍の兵士が居た。
皇族である殿下に対して礼を取る余裕もないとばかりに、馬に乗ったままの兵士は、必死な様子で甲板の上にいるユーステッド殿下に向かって叫ぶ。
「ケイリッド……ケイリッド周辺の防風林で、大規模な火災が発生しました!」
その叫び声に、周囲が一斉にザワついたのが分かった。
ケイリッドで火災……? あの林と一体化したような長閑な村で?
「それってかなり不味いんじゃ……!」
以前双眼鏡越しに見た、林と家屋とオリーブ農園の配置や距離感から察するに、林で大きな火災が起これば、家屋や農園も燃える可能性が極めて高いはず。火災なんかが起これば、辺り一面焼け野原にもなり得る。
「現在、水魔法による消火活動が行われていますが、火の勢いは異常なまでに強く、とてもではないですが抑えきれません!」
しかも、不可解な現象まで起こっていて、水魔法による消火が追い付かない状況にあるらしい。ただでさえ森林火災は雨でも消えにくいという厄介な性質があるのに、このままでは村や農園だけでなく、住民にまで被害が及ぶのも時間の問題だろう。
そう考えた時、私の視界にあるものが映り込んだ。
「殿下……手が……」
ユーステッド殿下が強く握った拳……その指の隙間から、ポタポタと血の雫が滴り落ちているのだ。
身の内の激情を、必死に抑え込もうとしている証拠だ。ただ拳を握るだけで溢れてきた血の量は、そのまま殿下がどれだけケイリッドの事を想っているのかを表している。
(災害だろうと人災だろうと、火が全てを焼き尽くすのも自然の摂理……それに巻き込まれて命が消える事に、私は善も悪も無いと思っている)
原因は分からないが、この火災が自然のものであればともかく、人災によるものであれば、法に基づいて生きる多くの人が、それを悪だと断じるだろう。
しかし、人間の悪意とは動物的な本能にこそ起源がある。人の内に他者を害することが前提の食欲や防衛本能が根差す以上、それが暴走することで理性や法を無視して悪が為されるのは、ある意味では自然的な事であり、究極的に言えば単純な善悪で測れることではないというのが、私の考え方だ。
(それでも、降りかかる火の粉を受け入れず、払うために戦うのも、全ての命が持ち得る権利だ)
そしてその為に頑張ろうとしている人を応援しようという気持ちくらい、私にだってある。
少なくとも、あの長閑で小さなケイリッドの村を、自分に誇りを与えてくれた大切な場所だと、そう私に語ったお小言魔人でお節介な皇子様の背中を押すくらいには。
「今すぐケイリッドへ向かうっ! 早馬の用意を――――」
「ちょっと待ってください殿下。火を消し止めるなら、より確実な手段を用意してから行きましょう」
そう呼び止める私に、ユーステッド殿下は焦燥感に溢れた表情を向ける。
「そう簡単に言ってくれるが、火が消えない以上は住民の避難を優先する他にないだろう!?」
確かに、人間の魔法では森林火災は簡単には消えない。地中にある根まで燃えることで、水が火種に直接届かないからだ。
……あくまでも、人間が使える魔法の規模で言えば。
「大丈夫です。私を……いいえ、ドラゴンの力を信じて、私と一緒に巨竜半島に戻ってください」
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結果から言えば、私は殿下を連れてスサノオの背中に直接乗り、最速で巨竜半島に戻ることが出来た。
この人が私のことをどう評価し、私の言葉をどう受け止めたのかは分からないし、今問い質すつもりはない。ただ私の言葉を受けたユーステッド殿下は、兵士に「自分が戻るまで火の手を留めるように」と指示を出し、私とUターンをして巨竜半島に戻ってきた。
「それで、どうするつもりだ? 水のドラゴンに消火を手伝ってもらうのか?」
「いいえ、水竜目のドラゴンの多くは水中を泳ぐ鰭竜科に属していて、内陸部にあるケイリッドでの消火活動に向いていません」
そもそも、水竜目のドラゴンは大半が海棲であり、放つ水は海水だ。そんなもので消火活動なんかすれば、ケイリッドの辺り一帯が酷い塩害を被ることになる。
「雲を作り、雨を降らせるドラゴンもいるのは確認できてるけど、森林火災に雨は効果的とは言えない。そこで協力を求めるドラゴンは、海やガドレス樹海を通らずにケイリッドに最速で向かえる飛行能力を持ち、水以外で消火活動に有効な属性を司るドラゴンです」
そして私はそれに属するドラゴンたちと、彼らが分布する地域を頭に入れている。
「ですがその場所はこの砂浜から遠く離れ、到着してもドラゴンに協力を要請するのも時間が掛かる。火災はスピード解決が重要であることを踏まえれば、正攻法で行くのは現実的じゃない……そこで活躍するのが、このジークです」
私が呼びかけると同時に、ローブに隠れていたジークが出て来て肩に乗った。
巨体揃いのドラゴンの中では非常に小さい種族に分類される、雷属性を司るこのドラゴンこそが、この事態を解決する最大のキーマンだ。
「憶えていますか、殿下。私がジークの種族名を、デンシンコリュウと名付けたと話した時の事」
「あ、あぁ。名前の由来は、タイミングを逃して聞けなかったが……」
私はドラゴンの種族名を付ける時、生態行動や外見から取って分かりやすいのを付けるようにしているが、デンシンコリュウはドラゴンの中では力が弱く、魔物に捕食されかねない種族だ。
体の小ささや魔力の低さゆえに、外敵も多く、独自の自己防衛能力を身に付ける必要性があったデンシンコリュウは、この巨竜半島でも特異な存在として進化していった。
「デンシンコリュウはね、自分が外敵に襲われる時になると、周囲にいる別種族のドラゴンに助けを呼ぶ力があるんですよ」
恐らく、別種族のドラゴンの子供が放つ思念波に似せた信号を、角を媒介に発しているんだろう。そうやって呼び出したドラゴンに外敵の排除をしてもらう……デンシンコリュウは、ドラゴンたちにとっての司令塔的な能力を有していたのだ。
「だから私は心を伝える小さな竜という意味合いを込めて、デンシンコリュウと名付けたんです」
私はそう解説しながら、魔法で生成した雷の魔石を与えながら、強いイメージをジークに送り込むと、それを受け取った小さな雷竜は角を媒介に辺り一帯が振動するような魔力の波動を放ち始めた。
デンシンコリュウの特筆すべきは、その別種族のドラゴンをも動かす伝達能力もだが、その範囲もまた目を瞠るものがある。
なぜなら、遠くの空を飛んでいたドラゴンも近くに呼び寄せる……そんな能力もあるのだから。
「普段はドラゴンの生活の邪魔をしたくないから、能力の行使は限定的に頼んでますけど……今日ばかりは特別サービスです。広範囲に呼びかけ、無差別に大勢のドラゴンに協力を呼び掛ける分、報酬として大量の魔石を用意するの手伝ってくださいよ、殿下!」
そうして、ジークの力で周囲のドラゴンを呼び寄せ始める事、僅か十数秒。
とあるドラゴンの群れが、私たちの前まで走ってやってきた。
「あれは……ハシリワタリカリュウの群れか!?」
現れたのは、先日ウォークライ領に現れたのと同じ種族のドラゴン、ハシリワタリカリュウの群れだった。
人を乗せて高速で移動も可能とする、走行能力に長けたドラゴンが来てくれたのはラッキーだったけど……その群れの中には、どこか見覚えのある小さな個体が三匹混ざっていた。
(……お礼に来たってところだったりするのかな)
いずれにせよ、最後に見た時から一日くらいしか経っていないのに、鱗や後ろ脚の筋肉の付き方がしっかりしてきている。
野生の馬や牛は生態の関係上、生まれてすぐに行動する必要があるため、成長速度が速いと聞くけど、そこはハシリワタリカリュウも同じってことか。
あれなら、もう成体のドラゴンに無理して速度を合わせてもらう必要も無いだろう。そんな推察を無意識の内にしていると、ハシリワタリカリュウの群れが私たちの前までやってきて、その内の二体が身を低く屈める。
「乗れってことでしょう。ビビってる暇はありませんし、とっとと行きますよ」
「だ、誰も臆してなどいない! 見縊ってくれるな!」
明らかにちょっと戸惑った様子を見せていた殿下に軽く発破をかけると、殿下はハシリワタリカリュウの背中に乗り、それに続くように私も、もう片方の個体に騎乗した。
「手綱や鞍は無いので、首に思いっきりしがみ付いてください。馬よりもずっと首の筋肉や体幹が発達しているので、締め上げるくらいの強さでしがみ付いて大丈夫です」
そう言いながらお手本のように実践すると、殿下もすぐにそれを真似して、ハシリワタリカリュウの首に両腕を回し、両足で背中を強く挟む。
安定しているとは言えず、非常に危険な乗り方だけど、緊急事態だから我慢してもらうしかない。それは殿下も分かっているのか、文句を言うつもりはないようだ。
「さぁて、それじゃあ覚悟は決まったみたいですし、精々振り落とされないように頑張ってくださいね、殿下」
「や、やはり振り落とされる可能性があるのか」
「生き物の背中に乗るんですから、そりゃその可能性もあるでしょう……と言っても、殿下にとっては想像以上の体験かもしれませんが」
殿下が普段使っている乗り物なんて、精々馬が最速だろう。
スサノオにも乗ったことはあり、その自動車並みの速度に、殿下は何度も声を上げそうになったのを私に悟られないようにしているのは知っているけど……走ることに特化したドラゴン、その真髄を殿下は知らない。
「丁度良い機会です。ドラゴンを軍事転用しようって言うんなら、このドラゴンの本気もぜひ体験してみてくださいよ」
私がそう言い終わると同時に……ハシリワタリカリュウは一歩目から、馬とは比較にもならない凄まじい加速を披露した。
そして二歩目、三歩目と数回に分けてどんどん加速していき、さながら新幹線のような馬鹿げた速度で平原を駈け、森林を抜け、崖を飛び越えて、私が思念波で指示した場所へと最短距離、ショートカットを連発しながら向かっていく。
「うぉおおおおおおおあああああああああああおおおおおおおおおおおおっっっ!?」
正面を向けば呼吸も出来ない速度を維持したまま、ジェットコースターなんて子供騙しな騎乗体験をすることになった殿下は、私の隣で必死にハシリワタリカリュウの首にしがみ付きながら、とんでもない悲鳴を上げている。
初めてドラゴンに騎乗して高速移動する割には、結構しっかり乗りこなせている。私なんて初めて乗った時は簡単に振り落とされたのに、やっぱり普段から乗馬とかしていると違うんだろうなぁ。
「大丈夫ですか殿下? さっきから凄い声出てますよ」
「だ、だっだだだだだだ、大丈夫なわけがないだろうぉうおおおおおおおおっ!? ここ、この乗り方! ほほほ本当に合っているのかぁああああああっ!?」
「いや、合ってるわけ無いじゃないですか」
そもそもの話、今回はロクな準備も出来ないまま竜に騎乗したのだ。
本当だったら、私の経験則や知識を基に専用の鐙や鞍、手綱を開発してからって思ってたのに……何も付けないままドラゴンに騎乗したら、乗り慣れていない昔の私みたいに振り落とされて怪我するのがオチである。
「大丈夫です殿下。こういう時の秘策もあります。岩に張り付くフジツボになった気持ちで、全身全霊でしがみ付くっていう作戦なんですけど……」
「それは策ではなく……ただの根性論と言うのだ、この馬鹿者がああああああああああああああああああああああああああっ!」
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