第44話〜ゴマ、出撃!〜
ニャンバラ軍。
一体、どんな奴らニャンだろうか。ネズミの街は、無事で済むんだろうか。
母ちゃんの仲間――多分、“星光団”――が、ネズミの街を守ってくれるんだろうか。
「みんなー、夕ごはんできたわよ……あら、ムーンさんは?」
「……街にニャンバラの軍隊が来ているから、それを止めに出かけたそうじゃ。とりあえず、明かりを暗くして、とりあえずごはんにしよう」
ダンじいちゃんは、ネズミのガキどもに聞こえないように声をひそめて、ネズミの母ちゃんのマリナに伝えた。
いつもと違う、何となく落ち着かねえ雰囲気の夕飯時だ。
「いただきまーす!」
「しーっ! みんな、今は外に出ないでね」
ネズミの父ちゃんのピーターは、声をひそめた。
「え、何で?」
「詳しくは、ごはんの後で話すから……」
「何か、嫌な予感がするよぅ……」
……やっぱり、ちゃんと話した方がイイんじゃねえか? ガキどもは勘が鋭いんだからよ。
そう思いながら飯を食ったが、あれだけ美味かったネズミたちの料理の味が、全くしねえ。
母ちゃんが座っていた場所を見ると、四角い箱みてえな機械が置きっぱなしにされていた。機械から時々、ボソボソと声が聞こえる。通信機か何かだろう。
メルさんがそれに気がついて、機械を拾った。
「母さん、これ忘れて行ったみたい。私、行ってくる!」
「ちょ、メルさん?」
メルさんは飯を半分以上残したまま、バタバタと玄関へ向かった。
「わたしも〜行くから〜。ゴマたちは〜いい子に待っててね〜」
「じゅじゅさん! おい! 危ねえぞ!」
メルさんに続いてじゅじゅさんも、母ちゃんを追って、玄関から出て行っちまった。
じゅじゅさんは、太っちょな体の割にすばしっこいから、ニャンバラの奴らに見つかっても逃げ切れるとは思うが、それでも心配だ。
慌ただしいとこを見せちまったから、ネズミのガキどもを余計に不安にさせちまうじゃねえか。思った通り、泣き虫のナナは涙を浮かべながら、ダンじいちゃんにすがった。
「ねえ、どうしたの? おじいちゃん、何か知ってる?」
「……言わなければいけないようじゃな」
辛い瞬間だ。
戦い、争いを知らねえガキが、とうとう現実を知らなきゃいけねえ時が来てしまった。
ダンじいちゃんはひと呼吸した後、ゆっくりと、
「地底世界のネコ族“ニャンバリアン”が、わしらが住むこの世界を乗っ取るために、攻めてくるんじゃ」
と言った。
一瞬の沈黙。
長男のトムが、首を傾げながら聞き返す。
「……え、乗っ取るって? 僕らが住む家も、街も、ネコさんたちに横取りされるということ?」
「そうじゃ……地底に棲む悪いネコたちが、当たると痛い弾や、斬られると痛い刃を持って、わしらの住む街を横取りしに、やって来るんじゃよ……」
ダンじいちゃんがあからさまに怖い顔をして言うもんだから、ネズミのキョーダイはみんな完全にビビっちまっている。お伽話じゃなくてマジの話なんだから、そこはもう少しマイルドに言ってやろうぜ、ダンじいちゃんよ……。
「こわい、こわいよう……お父さーん!」
「大丈夫、ここまでは襲っては来ないさ」
「ああ、ムーンさんとその仲間たちが、上手くやってくれるはずじゃ。信じよう」
さあ、この状況だ。
ボクがどういう決断をするか。決まってるよな。
「ルナッ! やっぱりボクらも行くぞ!!」
「は!?」
「さあ立てルナ! モタモタしてる場合じゃねえんだ! お前頭イイから一緒に来て、色々と助けてくれ!」
「ちょっと! さっき母さんに任せようって兄ちゃん言ったじゃん! 何でだよー!」
ボクはルナを無理やり引っ張って、玄関へ向かった。
「状況が変わったんだよ! ネズミのガキどもがあんニャに怖がってて、何もしねえでいろってのか!?」
「ちょっと、ダメだよ! 待ってなさいって母さんも言ってたじゃ……ああもう引っ張んないでよ!」
案の定、ユキとポコが止めようとしてくる。
「ゴマ! ルナ! 待って、危ないよ!」
「ダメだよゴマー! うう、何が起きてるの? 怖いよ……!」
だがボクはその声を無視し、ルナを連れて、玄関から飛び出した。
母ちゃん、メルさん、じゅじゅさん。
ボクも戦うんだ。
最強の勇者――“暁闇の勇者・ゴマ”になるんだ。
きっと、これも正夢ニャんだ!
待ってやがれ、ニャンバラの馬鹿野郎ども――!!
第2部〜ネズミたちの住む理想郷編〜 了




