第43話〜始まった侵略〜
ボクとルナの“ニャイフォン”が、粉々にブッ壊されてるじゃねえか!
画面もバキバキに割られている。2つとも電源ボタンを押しても、ウンともスンとも言わなくなっていた。
「おい誰だ! こんな事した奴は!」
大声で怒鳴ると、後ろから母ちゃんの声が聞こえた。
「ごめんなさい、私です」
「え、母ちゃん!?」
「やったのは私です。あなたたちの居場所を、ニャンバラ軍に知られてはいけませんから」
そうだった。元々ボクらは、ニャンバラの奴らのスパイだったんだ。
ネズミと一緒にいる事をニャンバラの奴らに知られると、奴らに何されるか分からねえ。そうすると、ネズミたちも、ボクらの家族も、巻き込まれちまうだろう。
「それは仕方ねえな。ま、別にこんなモン、無くても何も困らねえし。……そうだ、母ちゃん。昨日の事……ネズミのガキどもにも、ちゃんと伝えなきゃいけねえよな。早くチップたちを呼んで――」
言い終わろうとしたその時、母ちゃんの胸元から、ピピピ……ピピピ……と、音がした。
母ちゃんの表情が引き締まる。
「……こちらムーン。そう、わかりました。すぐに向かいます」
「な……! どうしたんだ、母ちゃん!?」
「ゴマ! ルナ! ネズミの皆さんを集めてください!」
母ちゃんが、いつになく焦ったような顔を見せている。
「わかった!」
「兄ちゃん、急ごう」
ボクとルナは大慌てで、9匹のネズミたちを広間に集めた。
きっとただ事じゃねえぞ、これは。
「ネズミの皆さん、聞いてください。ニャンバラ軍の偵察部隊が、すでにネズミの都会【Chutopia2120】に、到着しているとの事です。今から私は、仲間の元へ向かいます。偵察部隊はまだ少数で、やはり“ワームホール”を通って来ているとの事です。“ワームホール”付近の守りを固め、偵察部隊を捕縛せよとの指令が出ました」
「何だって!? 母ちゃん、ボクらも……」
「ゴマたちは、ここで待ってて下さい。では、行ってまいります」
母ちゃんはすぐに、玄関のドアも開けっ放しで、飛び出して行っちまった。
大人のネズミたちは、母ちゃんの話がどういう事ニャのか分かったみてえだが、ネズミのガキどもは……。
「え、何!? 何があったの!?」
「お父さん、私怖い……」
「大丈夫、大丈夫だよ。みんな落ち着くんだ」
多分、何が起きてるのか、分かってねえ。
どうすべきだろうか。やっぱり、ちゃんと伝えなきゃいけねえな。
「兄ちゃん……」
「ルナ、ここは母ちゃんに任せるぞ」
「うん……」
「大丈夫だ、母ちゃんは、きっと強え!」
夢で見た、母ちゃん――。
とんがった紫色の帽子をかぶって、キラキラした丈の長え紫色の服を着て、木の杖を持って――。
4匹の仲間と、戦ってた。“星光団”と名乗って――。
あれも正夢だとしたら。
きっと、夢で見たような戦いが、始まるんだろう。
そして、ボクも、“星光団”の仲間として戦う事になるんだ。
最強の勇者――“暁闇の勇者・ゴマ”として――!




