第40話〜正夢〜
母ちゃんの、仲間……?
まさか。
夢で見た場面が思い浮かぶ。
母ちゃんと一緒にいた刃物やら鎧やらを身につけたネコたち――。リーダーは、確かソールとかいう名前の白ネコだ。
そして、“星光団”と名乗り、光に包まれて変身して、敵の泥人形と戦ってたんだ。
そんでボクも“星光団”の仲間に入って、最強の力を持った“暁闇の勇者・ゴマ”に変身して、泥人形どもをぶっ潰したんだったな。
夢でルナと一緒にプレアデスと会った場面は、正夢になったんだ。ボクが“星光団”とやらの仲間入りして、一緒に敵と戦うのも、やっぱり正夢になるんじゃねえか――?
ボクは前足を組んで、色々と考えた。
最強の、“暁闇の勇者・ゴマ”として、今度は本当に敵をぶっ潰せるかも知れねえワクワクと――。
プレアデスのバカ野郎がボクらを騙して利用した事への、怒り――。
「……ニャンバラのアホども、絶対に許さねえ。この“暁闇の勇者・ゴマ”様が、絶対にぶっ潰してやる。ルナ、お前ももっと怒れ!」
「ギョーアンのユーシャ? 何言ってるの、兄ちゃん?」
「なあ母ちゃん! ボクも一緒に戦うぜ! 頼りにしてくれよな!」
母ちゃんが目を細めて、コクリとうなずいた気がした。そしてさっきから呆然としてるネズミたちの方に向き直って、話を続けた。
「私はニャンバラ軍に利用されたゴマ、ルナを止めるため、“ネズミさんの世界”へ、メルたちとともに急行しました。“結界”は私の力でも通過できませんが、幸いにもプルートの“ワームホール”が放置されていたため、“ネズミさんの世界”へ来る事ができたのです。そして優しき風の精霊ミランダさんの導きにより、私たちはこうしてゴマ、ルナと会う事ができました。……ネズミの皆さん、ゴマとルナの行ないを、どうかお許しいただけますよう……」
母ちゃんが頭を下げる。
「すまねえ、ネズミたち。物騒なマネして悪かった」
「ネズミのみんな、ごめんなさい」
ボクもルナも、一緒に頭を下げた。
ずっと黙っていたネズミのじいちゃんのダンが、返事をする。
「ああ……顔をあげとくれ。事情はわかりましたよ。そうですか、ずっと続いてた平和が、終わってしまうのですか……」
ダンじいちゃんが悲しそうな顔をする。何か胸が痛むぜ。
何で、何も悪いコトしてねえネズミどもが、ニャンバラのネコどもに酷い目に遭わされなきゃいけねえんだ。
「早く、この世界に住むネズミさんたちに、ニャンバラ軍の侵攻を知らせ、避難させなければなりません。“ネズミさんの世界”には、軍隊はありませんね」
「ああ、そのようなものはないですじゃ。もし、ムーンさんがおっしゃるようにネコさんたちに攻め寄せられようものなら、ワシらネズミ族は、一方的にやられてしまうじゃろう」
「こうしてる間にも、“その時”は迫っています。早急に策を考えなければなりません。……ひとまずは、私が伝えるべき事柄は以上です。遅くまで申し訳ありませんでした」
「いえいえ、知らせてくれてありがとうの……」
ネズミの末っ子のミライが、泣きそうな声で言う。
「ねえ、おかあさん、ねむたいよ……」
「ごめんねミライ。もう遅くなっちゃったわねえ……」
ミライに限らず、ネズミのガキどもはみんな眠そうにしてる。
コイツらも絶対、守ってやりてえ。
「チップたちは、もうお風呂はいって、寝るかい?」
「そうするー。お父さん、また聞かせて。センソウってなに? シンリャクってなに?」
「……ああ、またネコさんたちに聞くといいよ。じゃあお風呂の支度をしよう」
このあったけえ家族も、ネズミたちが平和に過ごしていたあの街も。
全て、ニャンバラのネコどもに、ブッ壊されちまうのかよ。
プレアデスといた時の――バクダンが降ってきて火の海になって、瓦礫の山になった、ニャンバラの景色を思い出した。一瞬でブッ壊される建物、真っ赤な火と黒い煙に包まれる街、逃げ惑うネコども……。あれと同じように、このネズミの世界も……!
ネズミの父ちゃんのピーターが、真剣な顔して頭を下げる。
「この事は、明日みんなに話すとしよう。ムーンさん、知らせてくれてありがとうございます」
「よろしくお願いします。情報の急な拡散は、混乱を招きますので、注意喚起の方法を考えねばなりませんね。街の市長のネズミさんには、私の仲間がこの事を伝えておりますので、避難経路などの指示があるでしょう。……では、ひとまず休みましょうか。寝る支度をしましょう」
「ネコの皆さん、ごゆっくり。おやすみなさい」
風呂から出てきたネズミのキョーダイが、寝る支度を始める。
ボクらも寝ようとした時、母ちゃんが「メル、みんな。もう少しだけ、聞いてください」と言って呼び止めた。
「“ネズミの世界”に攻め寄せようとしている、ニャンバラ軍の総長……。そのネコは、私の娘なのです」




