第14話〜デンセツの理想郷〜
プレアデスは視線を逸らして、外の景色に顔を向けた。
「地底世界には、ここ“ニャガルタ”以外にもネコたちが住む国がたくさんある。だけど今は……」
「どうしちまったんだよ。急に深刻な顔しやがって」
ヤツは溜め息をついて尻尾を大きく振ってから、続けた。
「僕らネコたちが生きていくために必要な資源が、地底世界から無くなりつつあるんだ。開発が進む過程で、植物がどんどん伐採されたり食糧になる生き物が乱獲されたりして、環境が破壊されてしまった……。それで、今は国同士で資源を奪い合うための戦争が起きてる。ここ“ニャガルタ”も、とても繁栄した国だったんだけど、今は他の国と戦争状態なんだ。僕らはいつか、地底に暮らせなくなってしまうかもしれない……」
ボクは、窓の近くへ駆け寄り、“ニャンバラ”の風景を眺めてみた。桃色の空の下で、所々煙が上がっているのが見える。
街の建物をぶっ壊しやがったのは、他所のネコどものせいって事か。
「ニャるほどな。どうりでどこもかしこも重苦しい雰囲気なわけだ。街をぶっ壊しやがった奴らめ、許せねえな」
「だけどね、ここだけの話……」
「ん?」
「地上のどこかに……」
突然、ボクの耳に息がかかる。
思わず、全身の毛が逆立っちまった。
「おいやめろ! 急に耳元でささやくな! ゾッとするじゃねえか!」
「あ、ごめんごめん。これは絶対に内緒の話なんだ。だから少しだけ我慢して」
「……チッ。じゃあさっさと話してくれ」
プレアデスは、ボクに窓際から部屋の真ん中へ行くように言ってから、窓をピシャリと閉めた。部屋が薄暗くなる。
「で、その内緒話って何だよ?」
「“地上世界”にね、【伝説の理想郷】があるんだ。資源もたくさんあって、戦争もなく、誰も彼もが平和に暮らす世界。ニャンバラじゅうで噂になっていてさ。でも、その証拠になる物は何もなくて」
耳がムズムズする。クソ、さっさと全部言え!
「でもね、僕の知り合いに科学研究者がいて、彼が自作のマシンで地上へ行った時、実際にその“伝説の理想郷”を見たと言うんだよ」
……ったく、何言い出すんだコイツは?
デンセツの理想郷?
誰も彼もが平和に暮らす世界だと?
あ、もしかしてボクの棲家のガレージの事か。
ボクの家族みんな平和に暮らしてるもんな。
だがプレアデスの口から飛び出たのは、ボクの想像と全然違うものだった。
「そこは、【ネズミたちが平和に暮らす世界】。僕たちと同じように、服を着て言葉を話し、道路や建物を築き上げたネズミたちが暮らす世界が、地上のどこかに存在するんだ」




