第10話〜謎の、キジトラの男〜
振り向くと、青色の上着と真っ黒なズボンをピシッと着こなした、キジトラのオスネコがいた。
もちろん、後ろ足だけで立っている。ボクと同じくらいの体格だ。
上着の下には白いワイシャツと、オレンジ色のネクタイ。宝石みてえに透き通ってる青い目をした、爽やかな雰囲気のネコだ。
さっきみたいな、嫌な感じの奴じゃなさそうだ。
だが、どっかで会った事があるような――?
「初めまして。僕は【プレアデス】。よろしくね」
言って、軽くお辞儀をする。
コイツも警察のヤツなのか。分かんねえが、ちゃんと名乗ってくれたし悪い気はしなかったから、ボクも名乗ることにした。名前は知れてるみてえだが。
「ボクはゴマだ。コイツは弟のルナ」
「ルナです」
「ご丁寧にありがとう。とりあえず、奥の部屋で話そう。ついてきて」
プレアデスとやらは、天井の灯りが所々消えかかった廊下の方へ、ボクらを案内した。
いまだ慣れねえ2足歩行で、ボクとルナはついて行く。
歩くたびにホコリが立ち上る廊下の奥に、1つの扉があった。
プレアデスが扉を開けると、そこは畳の小さな部屋だった。真ん中に、四角形の机が1つだけポツンとある。
また、尋問されるんだろうか。
「あったかいミルク入れるから、ちょっと待ってて」
プレアデスはテキパキとした動きで、たっぷりとミルクの入った皿をを2つ、机の上に出してくれた。
湯気がホクホクと立っている。
「おい、プレアデスとやら。何で、こんなにもてなしてくれるんだ?」
尋ねると、プレアデスは机を挟んだ反対側に座って、姿勢を正した。
「ゴマくん、ルナくん。君たちの事が知りたい。君たちが地上世界から来たというのは、本当なんだね?」
爽やかな声で言いながら、青い瞳で真っ直ぐに見つめてきやがる。
何だかコイツには、嘘ついたりテキトーな事言ったりする気にならねえ。
「ああホントだよ。むしろ地下にこんな世界があるってのが驚きだ。なあルナ?」
「……うん。僕らは地上で生まれて、ずっと地上で暮らしていました」
プレアデスは「なるほど」と頷いて、黒服が持ってたのと同じような光る板を取り出した。んで、また肉球でポチポチと光る面を触れてやがる。
「なあ、その光る板、何なんだ?」
気になって、ついつい聞いてしまう。
よくよく見てみると、その板は長四角で角が丸くなっている。踏み潰せば簡単に折れちまうぐらいの厚さだ。
「ん? ゴマくんたち、【ニャイフォン】を知らないの?」
「何だそれ?」
「これ1つで、電話、メッセージのやりとり、撮影、ゲーム、SNSとか色々できる機械だよ。地上世界では、そういうのは使われてないのかな……?」
プレアデスは、“ニャイフォン”とかいう板の光る面を見せてきた。
光の中には、カラフルな絵やら文字やら記号やらが、現れたり消えたりしてる。
そういえば同じようなもっとデッカいヤツを、ニンゲンがよく指でポチポチやってるのを見た事がある。
「よくそんなモンを器用に使いこなせるな」
「これがないと、生活するのに不便でしかたないよ。……てことで、ゴマくんたちにも“ニャイフォン”を持ってもらう。これからしばらく、僕と一緒に、ここ“ニャンバラ”で暮らしていくためにね」
そうか。これから、ボクらはプレアデスとやらと一緒に、このネコばっかりが住む地底世界で暮らしていくのか。
……は?
何でそーなるんだ!?




