2 隠された指紋
翌朝、俺は再び現場に向かった。
鏡を調べたことでトリックの大枠は分かったが、仕掛けた犯人を特定するにはさらなる証拠が必要だ。
ビルの管理人に会い、ここ数週間の間にこの部屋に出入りした人物のリストを確認した。
「掃除業者が最近鏡を動かした形跡があったな…と言っても、一時的な清掃だろう。あとは備品の点検業者くらいだ。」
俺はその中でも特に防犯カメラの点検業者に目をつけた。映像の死角を作るためには、カメラの角度を知る者が必要だったからだ。
「防犯業者の詳細を教えてくれ。」
管理人が示したリストの中に、一件だけ妙に目立つ名前があった。
その業者は短期契約で、防犯カメラの調整を行った直後に契約を解消している。
「これは…」 俺はその業者に関連するデータを全てコピーし、事務所を訪ねることにした。
事務所に到着すると、扉には閉鎖中の札が掛けられていた。
しかし、俺は魔石の光を頼りに中を探る。
「《隠された痕跡を浮かび上がらせろ》。」
魔石の力で、扉や机の上に残された微かな指紋が視覚化される。
その中に、一部だけ不自然に拭き取られた跡があった。拭き取り方が雑なため、わずかな指紋が残されている。
俺はその指紋を魔法で記録し、次に進むべき場所を考えた。
「犯人は痕跡を消したつもりだが、甘いな。」
次は、この指紋の持ち主に辿り着くため、さらに行動を開始する必要がある。
だが、その途中で思いもよらない別の証拠が俺を待ち受けていた。