ゆめのなかで
きょうはわたしのたんじょう日だった。ケーキをたべて、くまさんのおにんぎょうをもらった。
たのしい一日だった。
おかあさんが「おやすみ」と言いながらわたしのおふとんをなおしてくれた。
「おやすみなさい」
と返すと、おかあさんはへやのあかりを消してくれた。それからもう一度、
「おやすみ」
と言って、しずかにへやのドアをしめた。
目をとじると、あっという間にねむりにおちた。
※
おとうさんの声がきこえてくる。その声が大きくなると、
「ひまり、たんじょう日、おめでとう!」
と言って、とつぜんわたしをだき上げた。
「大きくなったな、ひまり」
そう言いながら、わたしのかおをほほずりした。
おひげがちょっといたかったよ。
おとうさんがわたしをゆっくりおろすと、にっこりわらいながら、
「もう、行かなきゃ」
とバイバイと手をふった。
わたしもバイバイと手をふり返した。なみだがポロリとおちた。
「……」
おとうさんのすがたがぼやけてきて何を言ってるのか、よくわからなったけれど、とってもうれしかった。
そして目がさめた。
※
朝ごはんを食べているとき、おかあさんにおとうさんのゆめを見たことを話した。
「こんどの日よう日、おとうさんのところに行きましょうね」
「うん」
わたしがうなずくと、おかあさんはやさしくほほえんでくれた。