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一巻(二)

西征(二)

 ノルセン・サレはホアラにつくと、旅装を解くこともなく、父ヘイリプの屋敷に顔を出した。

 すると、具合のわるいことに、父と兄アイリウンだけでなく、重臣たちも集まって、ノルセンの都における噂の始末について話しあっていた。

 父ヘイリプに促されて、ノルセンは弁明を試みたが、口を開くまえに、兄アイリウンに殴り倒された。

 倒れたノルセンに、アイリウンは馬乗りになり、「この不忠者が。家名を汚して」と殴り続けた。

 しかし、アイリウンが本気だったのは最初の一撃だけだったので、ノルセンはたいした痛みを感じることはなかった。

 元々の家臣だけならば、そのような振る舞いを兄弟で演じる必要はなかったが、前の大公[ムゲリ・スラザーラ]から借りていた将兵たちに対する示しが必要だった。

 アイリウンは猪突猛進のいくさ人であったが、いくさ場を離れれば、つまらぬ暴力を振るうような、粗野な人物ではなかった。


「そのようなことをされては、あとでお母上(※1)がうるさいですよ」

 鬼の形相でノルセンを殴り続けるアイリウンを、良い頃合いで止めたのは、ゼヨジ・ボエヌ(※2)であった。

 「母上は関係ない」とアイリウンは鋭いまなざしをボエヌに向けはしたが、ノルセンから離れて、自らの席に戻った。

 座の中央で気絶しているふりをしていたノルセンを、ゼヨジらが評議の場から連れ出した。

 すると、それまで黙っていた父ヘイリプが立ち上がり、家臣たちに頭を下げ、次のようなことを言ったらしい。

「この度は息子が迷惑をかけた。将来は文官として七州の役に立てばよいと思っていたが、この度、大公様直々のご下命でいくさ場へ連れて行くことになった。みなの足を引っ張らぬように、私がよく言い聞かせておく。……みなも知っているとおり、あれは母親に好きに育てさせ過ぎたのがよくなかった。私の過ちだ」



※1 お母上

 ラエ・サレのこと。ボエヌ家の出。ヘイリプの正妻であり、アイリウンとノルセンの母。

 ノルセンの父であるヘイリプが一代で立身を果たすことができたのには、ラエの実家の後ろ盾が大きく、そのためにヘイリプは妻に頭が上がらなかった。

 サレ家とボエヌ家はともに騎士階級に属していたが、サレ家の家格が中の下であったのに対して、ボエヌ家は中の上に目されていた。


※2 ゼヨジ・ボエヌ

 ボエヌ家の出身。ノルセンの母ラエが本家の出であるのに対し、ゼヨジは分家の出。ラエの口添えでサレ家に仕えることになった。

 ラエが長男のアイリウンを嫌い、次男のノルセンを偏愛した結果、ボエヌ家の出であるゼヨジは、必然的にサレ家の中でノルセンの肩を持たざるを得ない立場にあった。

 サレ家の跡取りは兄アイリウンで決まっており、ノルセンの側にいることは立身のうえで不利であったが、ゼヨジはラエとノルセンによく尽くした。

 その折衝の才を活かし、サレ家で活躍した。

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