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三巻(六)
蜃気楼(六)
二十五日。
[タリストン・]グブリエラが国主[ダイアネ五十五世]へ拝謁する予定であったが、体調不良を理由に断られた。
ただし、これは摂政[ジヴァ・デウアルト]の意向ではなく、生来病弱な国主はもう先が長くないのではないかというのが、衆目の一致するところであった。
そのため、グブリエラの側近である学者どの[イアンデルレブ・ルモサ]が名代として貢ぎ物を献じ、摂政がそれを受けとることで、国主への謁見の代わりとした。
東南州の治安回復に関して摂政は祝意を述べたが、その末尾で、東州公[エレーニ・ゴレアーナ]と遠北公[ルファエラ・ペキ]の両名を、国主の名で正式な州馭使に命じたことを、学者どのに知らせた。
これは、摂政のグブリエラに対する嫌がらせと思われた。




