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三巻(五)

蜃気楼(五)

 二十四日のよる。

 [タリストン・]グブリエラ主催の大規模な酒宴が開かれることになり、西南州の百官が招かれたが、その中にサレの名がないことが波紋を呼んだ。

 サレの兄アイリウンと親しかったグブリエラの意向とも、出席を断られることを見越した学者どの[イアンデルレブ・ルモサ]の指図ともうわさされたが、一部のいくさびとはこの処置を不服として、酒宴への参加を取りやめた。


 薔薇園[執政府]で盛大な宴が催されているのと同時刻、サレは屋敷にて、オメルセン[・ヘレイル]どのと酒を()()わしていた。

 彼は、剣聖[オジセン・ホランク]と師を同じくする人物の孫弟子であり、今は近西州で槍などを教えて生活の糧を得ているとのことであったが、都に所用があるということで、サレの屋敷に逗留していた。

「百騎長どのを招かぬとは、東南公[グブリエラ]もつまらないお方ですね」

「たしかにつまらないお方ですが、つまらない人間というのはなかなかに恐ろしい」

 「……言葉に重みがありますな。しかし、鹿()(しゅう)(かん)の周辺は静けさに満ち、掃除が行き届いておりますな」と饗応の間から見える、水の澄んだ用水路を見ながら、オメルセンどのがサレの手際を褒めた。

 「公女さま[ハランシスク・スラザーラ]の願い通りにしたまでです」と応じたサレに、「百騎長どのの気質も影響しているのでは?」とオメルセンどのが問うた。

「みやこびとの評判は悪いようです。きれいすぎる川は魚に嫌われるとか何とか」


 しばらくの間、ふたりが雑談をしていると、足音とともに扉が開き、バージェ候[ガーグ・オンデルサン]の長子ホアビウ・オンデルサンが入って来た。

 「どうでしかた?」と言いながら、サレはオンデルサンの杯に酒を満たした。

「どうしたもこうしたもありませんよ。増長という言葉はあの男のためにあるのでしょうよ」

 ホアビウは一気に杯を空けると、乱暴に机の上に置いた。

 そして、オメルセンどのの方を向き、小声で言った。

「西征の話が出ました。グブリエラと執政官[スザレ・マウロ]は、反ノテ派の要請に応じ、州都クスカイサのロアナルデ・バアニとラール・レコを討つべきだと息巻いていましたよ」

 ホアビウが詳細を語り出すと、それを(さかな)にサレは無言で杯を進めた。

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