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二巻(三十一)

ウルマ=マーラ(十二)

 のちの経緯をみれば、モウリシア[・カスト]が執政官[スザレ・マウロ]に訴えていたように、サレが公女[ハランシスク・スラザーラ]に近づいた際、機先を制して彼を討つべきであったし、サレも(りょく)()(とう)の数が整うまで、その動きにおびえていた。

 しかし、何事もなく、体制を整えることができた時、その理由を、執政官の判断の甘さと、法務監どの[トオドジエ・コルネイア]がモウリシアの動きに反対してくれていたおかげだと思っていたが、そうではなかった。


 鹿()(しゅう)(かん)の改築を終えたサレが、ようやく一息つけたので、館の警固に当たっていたラシウ[・ホランク]を自宅に呼び出し、きつく叱りつけたときのことだった。

 ラシウは、前の大公[ムゲリ・スラザーラ]の()(じょう)(ほう)に逆らって決闘をし、倒した相手から巻き上げた金で剣聖[オジセン・ホランク]の酒代を稼いでいた。そのためにラシウには兄弟子と同じく「人斬り」の異名がつく始末であった。

 決闘のうわさを聞くたびに、サレはラシウをたしなめていたが、鹿集館の改築への対応に忙殺されて、彼の目が行き届かなくなると、妹弟子はすぐに決闘へ手を染めた。


 コステラ=デイラの行政全般にかかわる(なん)(えい)()()()いた以上、身内からそのような醜聞が出ては仕事に差しさわりがあったので、絶対にやめるようにサレはラシウに告げた。

 もちろん、口で言うだけでは意味がないことはわかっていたので、鹿集館の警固の役務に対して俸給を出すことを約束し、剣聖の世話は兄弟子のサレに任せることを誓わせた。

 ラシウが無言で頷いたので、書斎からの退出を許したサレは、決闘の禁止を含めて、大公の御定法を再度、みやこびとに知らしめる必要を感じ、その文案を練っていた。


 そのさなかに、家宰のポドレ・ハラグが部屋に入って来て、法務監どのの書状をサレに差し出した。

 その書状を読み進める中で、「執政官から、再度の西征の可否についてご下問あり」の一文が目に入ったとき、サレは全身の血の気が引いたのちに、はげしい怒りに襲われるまま、こぶしで机を思い切り叩いたため、右の小指が折れた。


 執政官がサレの動きに目を(つむ)っていたのは、手が出せなかったのではなく、ただ単に()(まつ)なこととして、その視界に入っていなかっただけであった。

「執政官は西征を成功させるため、執政官の権威をもって、東南公[タリストン・グブリエラ]と州内の旧勢力に和議を結ばせたうえで、公に(じょう)(らく)(うなが)すご様子」

 ハラグに向かって、法務監どのの書状を読み上げたサレは、書状を握りしめて、歯噛みした。

 タリストンが執政官と手を組み、都に来るとわかっていれば、公女の下になどつかなかったのにと、サレは自分の判断の甘さを恨んだ。

【修正情報】2023.10.01 10:45


二巻(三十)に下記の一文を追記。


※1 南衛府尉に就けてしまった

 職位は百騎長となった。




青切です。

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