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二巻(三十)

ウルマ=マーラ(十一)

 話は鹿()(しゅう)(かん)の改築が始まったころに戻るが、配下の兵を館から追い出されただけでなく、了解もなく改築がはじまったので、薔薇園[執政府]もただ傍観しているわけにはいかず、サレに苦情を申し立てたことはすでに書いた。


 しかし、サレから公女[ハランシスク・スラザーラ]の名前を出されると、不十分な保護しか行ってこなかったことがみやこびとに知れ渡っており、また、サレの件以外には政治に口を挟まない彼女の言を無下には扱えず、薔薇園は強い態度を取ることができないでいた。

 そのために、鹿集館の改築を事実上見過ごしていたわけだが、その間に出された召喚状の対応で、サレにとって都合の悪いことがひとつ起きた。


 薔薇園から様々な名目で抗議が行われ、責任者であるサレに出頭命令が出るたびに、彼は自分の責任を逃れるため、反論を示す親書を公女に書かせていたところ、何度目かで勘気を(こうむ)った。

 そこでサレに言わせれば余計な事をしたのが、家宰どの[オリサン・クブララ]であった。

 家宰どのは、摂政[ジヴァ・デウアルト]とバージェ候[ガーグ・オンデルサン]に話をつけ、サレをコステラ=デイラの警固を担う官職のひとつである、(なん)(えい)()()()けてしまった(※1)。


 これで、サレの行いは執政府の役務の一環という言い逃れを得たが、彼は一私人として、責任のない立場から公女の陰で動くことができなくなり、また、摂政と候に借りをつくることになった。

 候には、鹿集館にて薔薇園から派遣されていた衛兵を殺してしまったときに、サレが願ったわけではないが、モウリシア[・カスト]の追求から救ってもらった恩もあった。

 候に対する様々な借りが、都の勢力を巡って角逐をおこなっていた権力者たちの争いの矢面に、サレが立たされることにつながった。


※1 南衛府尉に就けてしまった

 職位は百騎長となった。

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