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二巻(二十一)

ウルマ=マーラ(二)

 塩賊を斬っているときは、死んだら生き返らないのが人間のよいところだと思っていたが、実際に賊の大半が死に絶えてしまうと、サレは仕事を失った。斬る相手がいなくなってしまったからだった。


 塩賊の大掃討を成功させると、執政官[スザレ・マウロ]の威名は七州どころかウストリレにまで鳴り響き、西南州における権威権力の基盤は強固なものに変じた。

 また、大掃討を立案した法務監どの[トオドジエ・コルネイア]と、西南州軍を指揮したモウリシア[・カスト]や外務監どの(※1)も名を高めた(※2)。

 法務官どのとモウリシア。同年代のふたりの活躍を横目で見ながら、生活の糧をうしなったサレの絶望は深かった。


 失意のサレに、ラウザドのオルベルタ[・ローレイル]が、白衣党の指揮者として迎える用意があることを知らせて来た。友人からのありがたい申し出であったが、どうしても平民の下で働く気に、サレはなれなかった。

 そして、夜逃げをするしかないと思っていたサレに追い打ちをかけたのが、妻ライーズの妊娠であった。


 ここにいたって、とうとう、サレは自分の信念と希望を曲げて、公女[ハランシスク・スラザーラ]へ泣きつくことにした。

 権威権力を高めた執政官が公女をどう扱うかわからない中で、彼女につくのは非常に危険であり、政争に巻き込まれれば、一族郎党が殺される可能性もあった。

 しかしそれは、逆に言えば、家を盛り返す機会にもなりうると、サレは思い込むことにした。



※1 外務監どの

 スザレ・マウロの異母弟オヴァルテン・マウロのこと。

 スザレを軍務、政務の両面で陰から補佐した人物。スザレ・マウロの軍事的成功は彼無くしてはなかったと伝わっている。その力量は広く認められていたが、スザレの他の側近との折り合いがわるく、軍務監の職をモウリシア・カストに奪われ、閑職である外務監に横滑りさせられていた。


※2 名を高めた

 モウリシア・カストの軍功については、本来、オヴァルテン・マウロに帰すべきものを、スザレ・マウロがオヴァルテンに頼み込み、寵臣モウリシアに箔をつけさせるため、彼のものにさせたという説がある。歴史の敗者であるモウリシアには、この手の話が多いが、真偽は不明である。

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