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二巻(十五)

雲行き(三)

「金を使いすぎたのは悪かった。しかし、実際におまえの留守中に怪しげな連中が屋敷の周りをうろつき、中には侵入する者もいたのだぞ」

 饗応の間で酒を飲みながら剣聖[オジセン・ホランク]がサレに告げた。

「その侵入した者はどうしたのですか?」

「二日前にラシウ[・ホランク]がうまいこと捕えてな。新しく地下につくった部屋に閉じ込めてある」

「また、妙なものをつくってくれましたな」

 ため息をつきながら、サレは野盗掃討の祝いとしてオルベルタ[・ローレイル]からもらった菓子を、「母上たちと一緒にお食べ」とラシウに渡すと、「疲れ切っておりますが、そのくせ者の顔を拝見させていただきますか」と立ち上がった。


 地下で柱に縛られていた男の体には、無数の拷問の跡が見えた。

 猿ぐつわをはめられている男が、無言でサレを見上げた。

「それで剣聖、すべて吐いたのですか?」

「わしは拷問術も一流なのじゃよ。なにもかも吐いたさ。依頼者はおまえがだれかと繋がっていないか、気になっているようだな」

「私が?」

「まあ、わからんでもない。距離を取っているとはいえ、公女[ハランシスク・スラザーラ]の乳兄弟であり、コステラ=デイラでそれなりの地位を築きつつあるからな」

「おろかな者たちだ」

 「それで、この男はどうするかね?」と剣聖が侵入者を(いち)(べつ)して問うと、サレは、「始末して、首を依頼者の屋敷にでも投げ入れておいてください」と答えた。

 その言を聞くと、男は猿ぐつわをはめられたまま首を横に振り続けたが、サレがみぞおちに蹴りをいれると気絶した。

 「わしがか?」と尋ねた剣聖に、「あなたがです」とサレは強い口調で応じた。

 弟子の頼みごとに、「怖い、怖い」とおどけながら、剣聖は刀を抜いた。


 翌日の朝、寝所で目覚めたモウリシア[・カスト]は、寝台のうえに転がっている生首と目が合い、人のものとは思えぬ声をあげたとのことだった。

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