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二巻(十三)

第二章 雲行き(一)

 サレは政治的な中立を守りつつ、塩賊退治でどうにか一党を養っていたが、年の改まった新暦八九四年からさっそく雲行きが怪しくなった。


 事の始まりは、薔薇園[執政府]が塩賊の退潮と税収不足を言い訳に、塩賊退治の報酬を出し渋りはじめたことだった。

 最初は報奨の額を減らされるだけあったが、結局、初夏[七月]になると完全に打ち切られた。


 サレは同じような境遇の者たちを集めて、薔薇園に救済を訴え出たが、薔薇園側で交渉に当たったモウリシア[・カスト](※1)は言を左右にするだけで金を出さなかった。

 モウリシアはどういうわけかサレを目の敵にしており(※2)、何度も求めていたサレの任官に異を唱えていたのもこの男であった。

 勝手に集めた私兵の扱いなどは薔薇園の(あずか)()らぬことだと言わる始末で、それでもサレは下手に出て、せめて任官をと求めたが、そのような余裕はないと断られた。

 サレはあまりな物言いに言葉がなく、他の者を残して、交渉の席から立った。

 その彼の腹立たしさは、サレが去ったあとの交渉で、モウリシアに組みやすいと思われた者たちが任官を許されたことで頂点に達した。



※1 モウリシア[・カスト]

 貴族。スザレ・マウロの側近。サレの最大の政敵となり、相争った。


※2 目の敵にしており

 モウリシア・カストが、サレと対立をはじめたきっかけは不明。

 各種の説の中で、貴族出身で気位の高かったモウリシアが、彼の考えるいくさびとらしからぬ行動を取るサレを毛嫌いしていたためとするものが有力ではある。

 また、刀術に優れていたモウリシアが、オジセン・ホランクに弟子入りを求め、断られたことを根に持ち、弟子であるサレを快く思っていなかったとする説も存在する。

 サレから見れば、モウリシアを敵に回して得をすることは何もなかったのだから、彼にとっては、生涯を通じての大きな災難であった。

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