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二巻(三)

コステラ=デイラ(三)

 午睡から公女[ハランシスク・スラザーラ]が目覚めるのを待った後、サレは拝謁した。

 常のように身分ある女性がつけるべき(かずら)(※1)をつけず、短髪のままの公女は、めずらしく長々と、サレの参上が遅いことを叱責した。

 サレは家宰どの[オリサン・クブララ]に代わり、家中のことを見るように命じられたが、世情や人情の機微に疎い公女にもわかるように、家宰どのに対するような曖昧な返答はせず、はっきりと断りを入れた。

 「おまえの言っていることの意味がわからない」と公女は静かに癇癪を起したのち、次のように話をつづけた。

「外がうるさくて本が読めない。何度も周りには言っているのだが、一向によくならない。代わりの手立てをおまえが考えろ」

「そうは言われましても、公女。一介のいくさびとに過ぎない私には手立てがありません」

「私の名前を使えばいいだろう。金がいるなら、父上からいただいた宝石がいくらでもある。好きに使え」

 公女が書物だらけの部屋の隅にあった、埃まみれの小箱を指さした。

 サレは視線を向けただけで箱には近づかず、「警固の件については、私の方からも薔薇園[執政府]に掛け合ってみます」と言い、そそくさと書斎を出て行った。

 「サレは公女に乳兄弟として近づいて金を好きにした」とみやこびとにうわさされることは、家名を保つために、サレとして避けたいところであった。公女は、大公[ムゲリ・スラザーラ]の死を受けて、七州で五指に入る金持ちとなっていた。



※1 鬘

 若年者には奇異な表現に思えるかもしれないが、身分の高い女性が地毛のまま、客と会うようになったのは、ハランシスク・スラザーラがはじまりである。

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