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二巻(一)

第一章 コステラ=デイラ(一)

 新暦八九三年盛春[五月]。

 ホアラを追われたサレ家一行は、各所で足止めを受けながらも、なんとかコステラ=デイラにつき、ヘイリプ・サレに与えられていた邸宅に入った。

 屋敷はならず者たちの巣となっていたが、二三人斬ると、すぐに出て行った(※1)。

 邸宅の掃除と補修を指示すると、サレはまず鹿()(しゅう)(かん)へ出向き、公女[ハランシスク・スラザーラ]に拝謁することにした。

 道すがらに市場を通ると、遠北公(※2)が近北公[ハエルヌン・ブランクーレ]から「巨人の口」[サルテン要塞]を奪い、門を閉じた(※3)とのうわさ話を聞き、「短い春」(※4)がおわったことをサレはさとった。



※1 すぐに出て行った

 当時、コステラ=デイラの治安は悪化していたが、サレが戻って来たことが知られると、その日から屋敷周辺の治安はよくなったとのこと。


※2 遠北公

 フファエラ・ペキのこと

 (えん)(ほく)(しゅう)(しゅう)(ぎょ)使()。「長い内乱」期を代表するいくさびと。ムゲリ・スラザーラの台頭がなければ、少なくとも北部州(近北州および遠北州)は手中に収めていたと評されている人物。

 八九三年四月、タリストン・グブリエラによるホアラ陥落の一報を聞いたハエルヌン・ブランクーレが、自身への敵対行為とみなして、南方へ兵を差し向けたのを知ると、病身を押して両州の州境にある「巨人の口」と呼ばれたサルテン要塞を奇策で奪い、そのまま近北州の州都スグレサにまで兵を進めたが、その包囲中に陣没した。

 ブランクーレは九死に一生を得、良将ルウラ・ハアルクンの活躍で侵攻軍を撃退したが、フファエラの長子ルファエラの(こも)るサルテン要塞を取り戻すことはできなかった。ルファエラの手により、要塞は補修を受け、その門は固く閉じられてしまった。

 なお、フファエラには毒殺説があり、犯人はハエルヌンもしくは、遠北州の名家ホアビアーヌ家のルオノーレとされている。しかし、これは俗説であろう。


※3 「巨人の口」[サルテン要塞]を奪い、門を閉じた

 「巨人の口」はサルテン要塞の異称。近北州と遠北州の間において、ゆいいつ軍隊の移動に適した山道に置かれた。二つの山の間を埋めるように造られた巨大な要塞であり、兵はその中を通って、両州を行き来した。巨大な門が威容を誇る、七州随一の要塞であった。

 もともとは、デウアルト家が遊牧民対策に建造させたものであり、遠北州の領地であったが、フファエラ・ペキがムゲリ・スラザーラに投降した際に、近北州の所属となっていた。

 フファエラによるサルテン要塞奪取の影響は大きく、ハエルヌン・ブランクーレは遠北州の動きを警戒して、南下の動きをとめ、タリストン・グブリエラによるホアラ奪取を事実上、黙認した。


※4 「短い春」

 「長い内乱」と「短い内乱」の間に、ムゲリ・スラザーラが生み出した安定期を「短い春」と呼ぶのは、この一節に基づく。

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