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一巻(二十九)

ホアラ(四)

 二千の兵を前にして、その要求の正当性について、サレ家の中で議論をしている暇はなかった。

 「たとえ、十倍の兵でも勝機はある」とオントニア[オルシャンドラ・ダウロン]は豪語し(※1)、サレもこの男がいればある程度はやれるだろうと見積もったが、彼に戦う意思はなかった。

 会議の席で、サレは次のように述べた。

「ホアラの住人が私にどこまでついて来てくれるのかが分からない。それに、運よく勝ったところで、ホアラに与える損害を考えると、それは住人にとって意味のあることなのか」

 対して、「それも一理ありますが」とポドレ・ハラグが言いかけたのを遮って、サレは話を続けた。

「西征で、二千人のうち、五人しかホアラに戻らなかったのだ。これ以上の迷惑はホアラの民にかけられない。……ゼヨジ。住人からの収奪をしないことを学者どの[イアンデルレブ・ルモサ]が確約するのならば、明日、サレ家はホアラを開け渡すと伝えろ」

 指示を受けたボエヌは頭を下げ、学者どのの待つ別室へ向かった。

 「譲り渡して、おれたちはどうするのだ?」とオントニアが問うたところ、「都に出るしかないだろう」とサレは答えた。

「都ねえ。(ほこ)の振るいどころはたくさんありそうだから、おれはいいけど。ほかの者はどうなのだろうな」

 「好きにさせるさ」と言いながら、サレは煙草を呑んだ。



※1 豪語し

 西征での活躍やホアラ周辺の野盗退治を受け、オルシャンドラ・ダウロンの声名は四方に鳴り響いており、改心した野盗の一部をもとにした直属の部隊も、サレから与えられていた。

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