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一巻(二十三)

西征(二十三)

 十日目、晩夏[九月]十六日の朝。

「山中に小屋があり、その付近に食料も埋めてある。こちらの出す条件を聞いてくれるのならば、その場所を教えてやってもいい」

 村の長老の提案に、ゼヨジ・ボエヌは無言でサレを見た。

「その条件とやらは?」

 「この子を連れて行ってほしい」と長老は、彼の後ろに立っていた少年をサレに紹介した。

「孤児でこの村では頼る者がおらん。少し乱暴者だが、見どころがないわけではない。本人もいくさびとになりたいと言っている」

 怜悧そうな目をした少年に、サレは目を落とした。

 「どうしたものかな」とサレがポドレ・ハラグに顔を向けたところ、オントニア[オルシャンドラ・ダウロン]が「本人がついて来たいのならば好きにさせればいいだろう」と口を挟んだ。

 サレは少年とオントニアを交互に見てから、再度「どうしたものかな」とつぶやいたのち、少年に声をかけた。

「名は?」

「オーグです」

「ラーゾ村のオーグ坊や。我々と行きたいかね」

 主になるかもしれない男の問いかけに、オーグは大きくうなづき、「はい」と返事をした。

 「将来なかなかの美丈夫になりそうですし、この村に置いておくのはもったいないように思いますが」とボエヌが妙なことを言った。

 その意見をそのまま受け入れたわけではないが、ノルセンはオーグ(※1)を連れて行くことに決めた。

 話がまとまり、喜んでいる少年の表情には、まだあどけなさが大分残っていた。



※1 オーグ

 オーグ・ラーゾ。長じて智勇兼備の良将となり、サレの長女を(めと)る。

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