一巻(二十一)
西征(二十一)
サレが目を覚ますと、大木にもたれかかる形で寝ていた。
眼前では、夕闇の中、オントニア[オルシャンドラ・ダウロン]が、細い道を利用して山賊たちを相手に鉾を振るっていた。
おそらく、西征でいちばん人間を殺したのはこの元捨て子であったろう。
サレ自身は憶えていないが、母ラエによると、まだ幼い時にどこからか連れて来たらしい。
「拾ってみるものだな」とサレは思った。
従者の何人かは既に倒れており、背中を合わせて防戦しているロイズン・ムラエソとポドレ・ハラグも山賊たちに押され気味であった。
サレはどうにか立ち上がると、懐の小刀をすばやく投げ、山賊のひとりの後頭部を刺した。
ひとつまちがえればムラエソやハラグを傷つけかねなかったが、サレに迷いはなかった。
つづけてサレは足元の刀を拾い、ふらつきながら立ち上がった。
すると、山賊たちがサレに近づいて来たので、左右に揺れながら、次から次へと切り捨てた。
十歩、サレが前へ進んだ間に、山賊の死体が六つできた(※1)。
その現実離れをした光景を目の当たりにして、残りの山賊たちが逃げ散っていくのを見ながら、サレは仰向けに倒れた。
※1 山賊の死体が六つできた。
目撃者であるロイズン・ムラエソの残した記録にも六人とある。彼は虚言を吐く人間ではなかったため、誇張ではなく、実際に記述の人数をサレは斬ったようだ。




