表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/322

一巻(二十)

西征(二十)

 その後も、国道を避け、山中の村落を転々としながら、ノルセン[・サレ]一行は西南州を目指した。

 村には泊まれなかったり、泊まるのを避けたりしたこともあったが、何とか東進を続けることができた。

「おまえさんは交渉というものがよくわかっている。相手に与える物は少なすぎてもだめだし、多すぎてもいけない」

 泊めてくれたある村の長老がゼヨジ・ボエヌをそのように褒めた。


 その交渉を行う上で、ボエヌはノルセンからいくつか注意を受けていた。

 適切な対価を必ず、無理やりにでも渡すこと。

 争いになりそうな場合は引くこと。

 村の女を近づけさせないこと。


 ノルセン一行は確実に西南州へ近づいていたが、州境を前にして、その数はとうとう十人にまで減っていた。

 山賊の襲来で死んだり、村に留まることを選んだり、悲観して首を吊ったりと、理由は様々であった。その中には、ノルセンが生まれた時から見知った顔もいた。

 次はだれかと考えている最中、当のノルセンが倒れた。


 「剣聖[オジセン・ホランク]との修行で何度か死にかけても生き残った身だ。これくらいの難事は何でもない」と言っていたノルセンだったが、山中で喉が渇いたあまりに泥水を(すす)った結果、熱に襲われ、オントニア[オルシャンドラ・ダウロン]の背中を借りる身に陥った。


 ノルセンの母親であるラエはどういうわけか、長男アイリウンを愛さず、次男ノルセンを溺愛した。しかし、甘やかしはしなかった。

 女傑と呼んでいいこの女性は、都にて剣聖の知遇を得ると、彼のたまった酒代を払う代わりに、十歳の次男を弟子にしてもらった。

 「これまでどれも話を断って、私は弟子という者をもったことがない。私の修行は才がなければ死ぬかもしれんが、それでもよろしいか」という剣聖の条件をラエは呑んだ。

「それまでの人間でしかないのならば、早く死んだ方がこの子のためです」

 そう言い放った母の言を、ノルセンは長じてからも夢でよく聞いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ