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一巻(十九)

西征(十九)

 四日目の夕刻。

 近西州の山中にて、サレの一行十六人は馬肉に食らいついていた。

 昼過ぎに安全な場所を確保したサレは、オントニア[オルシャンドラ・ダウロン]に馬の荷を下ろすように命じた後、「すまないな」と馬のたてがみを()でてから、その首を切り落とした。

 従者たちは若き主の気が狂ってしまったのかと思ったが、サレは構わずに馬の解体作業に手をつけた。

 すると、他の者が見守っている中、ロイズン・ムラエソだけが小刀を取り出して手伝った。

 作業が進む中、馬を連れて来たオントニアが男泣きをしているのを見て、思わずサレは声を出して笑った。

「私はおまえが泣いているのを生まれて初めてみたよ。私が拾って来た時も、おまえは泣いていなかった」

「取った首は捨てさせられ。馬までもこんな目に会うなんて」

 「もともとお前の馬ではないだろう」と言いながら、サレは馬肉を食べやすいように順次切り分けた。


 七州は弓馬の国である。

 いくさ人は馬を家族のように扱うので、その肉を食べることはない。

 馬肉を食べなけれならないほど追い詰められた場合、それよりも死や投降を選ぶいくさびとの方が大半であった。

 サレ一行の中でも、馬肉を食べるなどという不名誉な行いをしたことのある者はいなかった。

 焼かれた馬肉にだれも手をつけないので、サレがまず頬張りはじめると、みなも嫌々ながら手をつけたが、一度口にしてしまうと、それからは取り合うように貪り始めた。

「肉で精をつけて、全員、ホアラに戻るぞ。いいな」

 サレの声に、従者たちが肉を食うのを止めて、無言でうなづく中、オントニアが「ちくしょう」と涙声で叫んだ。


 この日は、ゼヨジ・ボエヌの交渉のおかげで、村に泊まることができた。食事にもありつけたので、馬を食う必要はなかったのだが、サレは神とやらではなかったので、先のことなどは見通せなかった。

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