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校注者の辞(一)
本書を読むうえでの留意点
本書は、ロナーテ・ハアリウへの報告として、サレが記したものである。
外部の者が読むことを考慮して、必要な配慮がなされている箇所もあるが、自身の内心や登場する人物の言動につき、赤裸々に書かれている。
合わせて、サレの置かれた立場や主観を排する努力の跡も見られるため、「短い内乱」について語る際の重要な史料と位置付けている史家が多い。
しかしながら、当然、立場や主観を完全に取り除くことはできていない。たとえば、サレ自身やスラザーラ家と対立した者に対する評価については、その点を差し引いて考える必要がある。
すべての史書に言えることだが、本書についても、書かれている理由、書かれていない意図について考えることが肝要である。