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四巻(三十五)

雪、とけて(四)

 遠北州敗れるの一報をもたらした細作に十分な報奨を与えて、一日休ませたのち、再度、(ずい)(どう)へ送り出して、ウベラ[・ガスムン]の元へ送った。

 もちろん、彼一人に任せるわけにはいかなかったので、夜ごとに細作を送り出したが、無事にウベラのところへたどり着けたのは、最初の者だけであった。

 なお、この送り出しをしている間に、隧道の先にある住居が(せき)()(とう)の家探しを受けてしまい、隧道は使えなくなってしまった。それをうけて、外部との通信は完全に遮断されてしまった。


 遠北州の敗北を受けて、サレが次に行ったのは、()(ぼく)の締結であった。

 青年[スザレ・マウロ]派の兵はコステラ=デイラに近づかず、(りょく)()(とう)のみで作業を行うことを認めるのならば、防壁の撤去は受け入れる。

 モウリシア[・カスト]の執政官退任は譲らないが、その後任を今の大公[スザレ・マウロ]の一任とし、[トオドジエ・]コルネイアには政界を引退させる。

 サレはバージェ[ガーグ・オンデルサン]候を仲介役に、大公へ修正案を提示し、彼がそれを受け入れたので、和睦がなった。

 サレは、コルネイアと、サレが(めかけ)に産ませた男子(※1)を母親と共に人質として差し出し、期日までの和睦の条件の履行を約束した(※2)。



※1 サレが妾に産ませた男子

 サレの子であったかは不明。人質として受け取った青年派も半信半疑であったようだ。人質に送られたのちの、母子に関する史料は見つかっていない。


※2 期日までの和睦の条件の履行を約束した

 どういう話し合いや思惑があって、コルネイアを引退させ、人質として差し出したのかはよくわからない。

 サレとコルネイアが仲たがいをした結果とする史家もいるが、その後の両者の関係を見る限り、その可能性はきわめて低い。

 サレの書き振りだと、コステラ=デイラの攻防戦は良識派の優位に進んでいた印象を与えるが、しょせん少数対多数の戦いであり、その優位性は薄氷の上のものに過ぎず、和議を破ってもコルネイアが殺されることはないと踏んでいただろうが、彼を人質に出さなければ、青年派が納得しなかったのだろう。

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