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四巻(三十三)

雪、とけて(二)

 青年[スザレ・マウロ]派と遠北州の同盟における戦略は、遠北州が近北州軍をサルテン要塞で足止めしている間に、都において青年派が良識[トオドジエ・コルネイア]派を破り、軍事政治の両面で都を掌握したのちに、西南州兵を近北州のマルトレへ派兵する、というものであったろう。

 しかし、その戦略に基づく行動は、サルテンと都の両方でうまく行かなかった。


 まず、サルテンの方だが、遠北公[ルファエラ・ペキ]は、近北公[ハエルヌン・ブランクーレ]とルオノーレ・ホアビアーヌに(せん)(どう)された、遠北州内の反ペキ派の挑発にはよく耐え、サルテンの攻撃へ集中していた。

 加えて、サルテンを守るホアビアーヌに、近北公の指示で援軍として駆けつけていた(ほく)()どの[クルロサ・ルイセ]のいくさ下手も(※1)、遠北公有利に働いた。

 西南州からの吉報が到着するまで、サルテンの前で踏ん張る、もしくは機会があればサルテンを奪うつもりであった遠北公にとっての誤算は、(とう)()どの[ルウラ・ハアルクン]であった。

 晩春[六月]、近北公の判断により、北左どのが援軍の役務を解かれ、代わりに東左どのがサルテンに入った。

 すると、東左どのは、遠北州軍の()(かん)、敵は守るばかりで攻めてくることはないという油断を()()り、近北公から与えられていた命令およびホアビアーヌの反対を無視して、入城したその日に夜襲を駆け、遠北州軍の虚を突いた。

 これに、遠北州軍はまったく対応ができず、サルテンの囲みを解き、逃げ散った。

 その敗走兵を、東左どのの片腕であるポウラ・サウゾの一隊が追うに追って、遠北公は危うく討ち取られるところであった。

 この遠北州の敗戦により、青年派の描いていた目論見は()(たん)した。



※1 北左どの[クルロサ・ルイセ]のいくさ下手も

 ルオノーレ・ホアビアーヌに「北左軍はいないほうがまし」と言われる始末であった。また、ホアビアーヌとクルロサ・ルイセは性格的に合わず、同じサルテン要塞内にいながら、意思の疎通が取れていなかった。

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