四巻(三十一)
都、狂い乱れて(十三)
晩冬[三月]。
今の大公[スザレ・マウロ]は、薔薇園[執政府]でモウリシア[・カスト]の執政官着任式を執り行った(※1)。
だが、以下の三点を理由として、みやこびとは、モウリシアを執政官として受け入れるのに躊躇した。
一、[トオドジエ・]コルネイアが、自身が正当な執政官であるという主張を変えずに、コステラ=デイラの仮の執政府から、執政官令を出し続けていたこと。
二、スラザーラ本家の承認を得られていないこと(※2)。
三、着任式に使者を出したのが遠北州だけであったこと(※3)。
モウリシアの執政官僭称は、都の統治を混乱させるだけで、みやこびとに何ら益することがなく、実に罪深い愚挙であった。
早く近北州の雪が解けて、すべてのことに結着がつくことを希求しながら、サレは強い焦燥感と共に、晩冬の一月を過ごした。
※1 薔薇園[執政府]でモウリシア[・カスト]の執政官着任式を執り行った
モウリシアの執政官自称により、世にいう両執政時代がはじまった。
七州の歴史の中で、執政官がふたり存在したことはしばしばあったが、両者が都に並存したのは、この例だけである。
※2 スラザーラ本家の承認を得られていないこと
ハランシスク・スラザーラの叔父であるボルーヌは、モウリシア・カストの執政官着任を認めていたので、本文のような表現になった。




