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四巻(二十七)

都、狂い乱れて(九)

 盛冬[二月]に入るとすぐに、事態が大きく動いた。

 今の大公[スザレ・マウロ]が、勝手に執政官[トオドジエ・コルネイア]からその職を奪い、モウリシア[・カスト]に与えるという、理屈も何も通っていない暴挙に出た。

 この愚挙は、ボルーヌ[・スラザーラ]が(とり)(かご)[(てん)()(きゅう)]の中で騒ぎ立てはじめたのがきっかけで、最初は乗り気でなかった大公も、コルネイア憎しのあまりに、鳥籠の貴族や側近に引きずられる形で、最後にはモウリシアの好きにさせた。

 この機に乗じて、ボルーヌが、公女[ハランシク・スラザーラ]からスラザーラ家の家督を奪うために、鳥籠の中でいろいろと(かく)(さく)したらしいが(※1)、これは大公によって一蹴された(※2)。

 しかし、近北公[ハエルヌン・ブランクーレ]およびサレが、今の大公に敗れるようなことがあれば、ボルーヌとしては、娘にスラザーラ家の家督を与える千載一遇の機会であったから、州外に書状を送り続けるなど、策動を続けた。それを漏れ聞くたびに、サレとしてみれば、(いま)(いま)しいこと限りなかった。


 サレに対する敵対行為は、執政官の(せん)(しょう)だけに収まらず、一部の、物の道理の分かっていないみやこびとに迎合し、モウリシアのなまえで徳政令を発布した。

 その一報に接したとき、サレは自室にいたが、ポドレ・ハラグが話し終えると同時に、手にしていた煙管を折り曲げた。


 モウリシアの執政官着任と徳政令の発布。サレとしては、どちらとも受け入れられるはずがなく、大公からの宣戦と(とら)えた。

 事がここに至っては、都でいくさもやむなしと覚悟した。



※1 鳥籠の中でいろいろと画策したらしいが

 ハランシク・スラザーラの叔父であったボルーヌは、ムゲリの生前は彼の手による暗殺を恐れて、天鷺宮から一歩も外へ出なかった。

 その後、サレがコステラ=デイラにもどってくると、同じ理由で、また、天鷺宮に引きこもっていた。


※2 これは大公によって一蹴された

 ボルーヌ・スラザーラはスザレ・マウロと折り合いが悪かったため、モウリシア・カストに擦り寄ることで、自分の娘をスラザーラ家の当主へ就ける道筋をつくろうと考えたのであろう。

 なお、スラザーラ家の家督問題について、モウリシアがどのように考えていたのかは不明。

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