第1部 2章 能力試験
適正検査を行なう体育館へ着き、受け付けの教師の指示のもと、各クラスの検査場へと移動する。先程とは違いクラス全員で行うので、大所帯での移動となる。
体育館の端の方に5組と書かれた札がたって居たので、そちらに移動すると1人の教師が元気よく挨拶してきた。
「やぁ君達、本日5組を適正検査を担当する宮本千博だ!よろしく頼む! 私のことは宮本先生でも、千博先生でもちーちゃんでも好きなように読んでくれて構わない!」
勢い良く自己紹介をして来たのは宮本千博という女性教師だ。彼女は主に武器のメンテナンスや戦闘服の調整などをメインで行っている為、授業等には出ず生徒と一緒にいる時間は短いが、生徒からの人気は絶大だ。
その気さくな性格から悩み相談や恋愛相談など沢山相談を受けることがあり、相談者の後が絶たないらしい。
「適正検査の前に、君たちの戦闘服の調整を行いたいと思う! 順番に呼ぶから戦闘服と身体測定で使用した用紙をこちらに持ってこちらに来てくれ!」
呼ばれた順番に1人づつ戦闘服の調整を行っていく。
カプセル型の戦闘服調整用の大きな機械の中にあるマネキンに戦闘服をセットし、機械のすぐ横にあるパソコンに身体測定で測った内容を細かく入力していく。準備が終わり調整開始ボタンを押すと、カプセル全面の扉が閉まり中で機械音が響く。20秒程待つと扉が開き、調整の完了した戦闘服が出来上がっている。
1人あたり3分程時間がかかるのでクラス全員40人分をやるとなるとそれなりに時間がかかりそうだ。
ちなみにだが、この機会を開発したのは今現在5組の調整を行っている宮本千博その人だ。
元は手作業で行われていた戦闘服の調整だが、あまりのめんどくささに、自分で機械を作ってしまったらしい。
この発明は世界的なニュースになり、現在ではほとんどの企業、学校は調整にこの機械を導入している。
「全員分調整するとそれなりに時間がかかると思うから、もしお腹がへったら好きなタイミングでご飯食べて来てもいいからね! ただし、自分の番には必ず来るように!」
そしていよいよ調整が開始した。順番の早い人は並んで待っていたり、順番があとの方の人は座って雑談する人もいれば、食堂へと少し早めの昼食を摂りに行く人がいる。
雷音は順番的に呼ばれるのが早いので、何処にも行かずに大人しく順番を待っており、凛は呼ばれるのが最後の方になりそうなので、クラスメイトと雑談をして待っていた。
「そういえば凛ちゃんって、あの虎城って人とどういう関係なの? 良く話してる所見かけるけど?」
「それ私も気になる!見た目もちょっと怖くて、身長も高いからすれ違ったりすると、少しビビっちゃう。
それにいつも1人でいるし静かだから、凛ちゃんとは真逆の人ってイメージだから余計気になるかも」
仲良く雑談をしているとクラスの女子生徒に突然そんな話しを振られ少し驚いたが、雷音との関係性についてやんわりと説明する事にした。
「まぁ単なる腐れ縁って奴だよ。孤児院時代からの幼馴染。確かに見た目はちょっと怖い雰囲気あって、ムスッとしてるから余計に話しにくいとは思うけど、凄く良い奴だからさ、みんなも仲良くしてあげてね・・・・・・」
クラスメイトにそう答える凛だが、顔に浮かべる笑顔はどこか複雑な感情が混じったような苦笑いだった。
凛と雷音は昔からことある事に比べられ続けてきた。
誰にでも優しいく明るい性格でクラスのムードメーカー的存在の凛に対し、誰とも連まず暗い性格でいつも1人、クラスでは腫れ物扱いの雷音。
故に、2人の関係について周りからあれこれ言われることが多かった。『怖いから近寄らない方が良いよ』とか『関わらない方が良いよ』など雷音との仲を否定されるような事を言われる続けて来た。
それでも凛は、そんなにみんなに対して決して怒たりせずに、雷音の良い所を教えて上げたり、本当は優しい人だと言うことを伝え続けてきた。
凛にとって大切な友達であり、大切な家族である雷音をそんな風に言われるのがとても悔しかった。だから、周りからなんと思われようとも、なんと言われようとも諦めずに伝え続けた。
『私の大切な人』なんだと。
それから、色々な雑談をしていると順番が終わり暇そうにしていた雷音が凛の方へとおもむろに近づいてきた。
「飯行ってくるけど、お前はどうする?」
「順番まで、まだ時間かかりそうだし行こうな」
凛はクラスメイトに一時的な別れを告げ、先を行く雷音の後を追いかける。
時刻は11時を少し回った頃くらいだろうか。他の学年の生徒は授業中という事もあり、食堂には1年以外居らず席はガラガラだった。
雷音と凛はそれぞれのメニューを頼み、カウンターで出来上がるのを待っていると、雷音には聞き覚えのある声が食堂の入口の方から聞こえてきた。
「おーい雷音! 俺も混ぜてくれぇ〜」
一緒に食堂へ来ていたクラスメイト別れを告げ、こちらえと駆け寄って来る桐生に、嫌そうな顔を浮かべるながら大きなため息を吐く雷音。
そんな様子の雷音をどういう状況か分からずに雷音と桐生を交互に見ながら困惑する凛。
それもそのはずだ。
なぜなら、雷音にはまだ学校での友達が出来て居ないと思っていたので、話しかけてくる学生が居たら驚くのも仕方がない。
「えっと、雷音・・・・・・こちらの方は?」
「あぁ〜こいつ? 知らね」
2人の会話を聞いて居た桐生が、それは聞き捨てならと言いたげな表情で会話に割って入って来た。
「おい虎城! さすがにそれは酷くないね? 親友の俺にはもう少し優しくしてくれてもいいんだよ?」
「親友じゃねぇ、そもそも友達ですらねぇよ」
「ぐはぁ、相変わらずの塩対応が刺さる。 まぁ慣れたか別にいいんだけどさ」
ぐはぁと腹を刺されるよくな豪快なリアクションを決めながら更に絡んで行く桐生をめんどくさいそうに対応していると、
「あの・・・2人とも・・・ちょっといいかな?」
すっかり盛り上がって?いた2人は凛が居ることを忘れており、あたふたした様子の凛の声に我に帰った。凛の話しを聞くために1度冷静になり、首を縦に振り頷いく。
「あの・・・2人はいったい、どういうご関係で? 」
「友達です!」
「他人」
凛の質問に2人は全くと言っていいほど、違った答えを返した。そんな2人の答えに余計に困惑してしまったのか、更にあたふたし始め「えっ?えっ?」と繰り返すばかりで収拾がつかなくなり始めて居た。
その様子を見て申し訳なく思った雷音が、桐生との事を話し始めた。
「昨日寮で知り合ったんだ。騒がしい奴で悪い」
「おい!そこは、元気で優しくてイケメンなナイスガイって紹介してくれよ〜」
「いや、お前は騒がしくてやかましいアホで充分だ」
「相変わらず酷いな〜お前って奴。心の広い俺だから平気だけど、他の人なら激おこだぞ?」
「・・・・・・・・・」
「うっ、無言はやめてくれ・・・さすがに来るものがある」
自分意外とこんなに会話している雷音を初めて見た凛は、なんだかものすごく嬉しくなり、自然笑みがこぼれる。雷音に友達ができたのが余程嬉しかったのだろう。
「えへへ、良かったね雷音!」
と桐生と会話を続けている雷音に微笑みかける。
そんな凛の微笑みに少し気恥ずかしくなったのか目を逸らし、カウンターに置かれた自分の昼食を受け取り、空いてる席へと早足で歩いていく。
雷音の後をおいみんなで席に座り、昼食を食べ始める。
ちなみに、桐生もちゃっかり着いてきて一緒に昼食を摂っている。
「少し遅くなっちゃったけど、私守武凛。雷音とは幼馴染で同じクラスだよ。よろしくね!」
「俺は桐生真咲、よろしくね守武さん!クラスは3組だからあまり授業が一緒になる事はないと思うけど、見かけたりしたら気軽に声掛けて!」
お互い自己紹介とちょっとした挨拶を交わした後は、雑談をしながら昼食を楽しんだ。
昼食を摂り終わり、桐生と別て自分達のクラスが居る体育館へと戻る。
戻るタイミングが良かったのか、ちょうど凛の前の順番の人が調整を行っている最中だったので、ほとんど待つことなる戦闘服の調整を行うことができた。
クラス全員の調整が終わると、いよいよメインの適正検査の開始だ。
適性検査で行う主な内容は、強化服と呼ばれる身体能力を向上される戦闘服とは別の戦闘着を着用し、どれくらいまでの強化を受ける事が出るのかを試すというものだ。
強化服は狂獣と戦う際に身につけるもので、戦闘服の上から重ね着する事で、体への負荷を抑えながら強化を受けることができる。
「集まってもらっているところ申し訳たいのだが、1度戦闘服に着替えこの場所に再度集合してほしい! 制限時間5分、体育館の更衣室を使って構わないからそこで着替えてきたまえ!それではスタート!」
宮本先生の合図を受け皆更衣室へと急ぐ。
そして、5分後誰も遅れることなく準備を完了し適性検査が始められる状態へとなった。
「よし!それでは適性検査を初めて行く!やり方を説明するからよく聞いてくれ」
そう言うと、宮本先生はやり方を説明し始めた。
手順としてはこうだ。
5人ずつ強化服を着用する。準備が出来たら強化服で体の身体能力を上げていき、体への負荷がきつくなってきた所で強化を切る。そしてその強化値を記録する。その数値を元に個人用の強化服が作られ後日配布される。
簡単に説明するとかんな感じの流れだと宮本先生は説明を終えた。
言われた通りに適性検査を行っていき、雷音の番が回ってくる。
同じ順番の雷音意外の4人は、大体同じタイミングで脱落したが、雷音はまだ顔色1つ変えず強化を受けていた。そんな雷音を見て宮本先生は、
「虎城君、君すごいね。毎年沢山の新入生の適性検査を担当しているけど、ここまで耐えられる人はごく稀だよ」
口に笑みを浮かべ、雷音にそう伝える宮本先生の目は鋭い目付きで雷音を見据えて居た。
だが、そんなことは気にせず強化を受け続けた雷音の数値は、先に脱落した生徒の約2倍の数値だった。
周りの生徒からは驚きとそして嫉妬の声が上がった。少しの間5組のいる場所は騒がしくり、野次馬も群がり初めている。すると、
「みんな静かに、他のクラスに迷惑になっちゃうぞ!それと野次馬共は元のクラスに戻れ〜」
その言葉で一瞬にして体育館内は元の静かさを取り戻す。そして、適性検査は順調に進みその後は何事もなく終わった。
凛はと言うと、雷音程ではないがそれなりに高い数値を叩き出した。そして驚くべきことに雷音の次に数値が高かったのが十六夜楓だった。
普段は物静かな彼女だが、この時ばかりは自分の数値を見て少し驚きの表情を見せていた。
5組の適性検査終了後、強化の負荷で疲労が見えている生徒や思っていたよりも数値が伸びず悔しがる生徒を見て宮本先生は励ましの言葉をかける。
「みんなお疲れ様、結果が振るわず落ち込むものも居るとは思うが、今日の数値はあくまで今の段階での結果に過ぎない。これからどれだけ自分自身を成長させることができるかで、今後この数値は大きな変わってくる。だから諦めずに頑張って欲しい!」
そう告げ適性検査は終了した。