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狂獣戯画  作者: ばーぼん
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第1部 1章 新たな門出

 入学式後の帰り道。雷音と凛は2人並んで寮へと向かって歩いて居ると

 

「仲良くなれそうな人はいた?」

「・・・特にはいないな」

 

 凛の唐突な質問に、いつもの素っ気ない態度でそう答える。

 

「『特には』とか言ってるけど、本当はめんどくさくて誰とも関わりたくないだけでしょ? 雷音は昔っからそうだもん」

「・・・まぁ、そうだけど何か?」

 

 図星を突かれたのか、少し不機嫌気味になりそう答える。

 凛とは幼少頃から一緒に育った幼なじみが故に、大抵の事はお見通しなのである。

 

「まぁ無理に誰かと仲良くなれとは言わないけどさ、1人か2人位は仲良くなっておいてもいいんじゃない?クラスで小隊組んで模擬戦闘実習とかあるらしいし・・・」

「そんの時は適当に誰かと組むから気にすんな」

 

 第1高校では狂獣との戦闘に備えて学校側が用意した狂獣を模した機械人形と模擬戦闘を行う訓練が定期的に行われており、更に生徒同士で対人戦闘の訓練も行われる。

 狂獣と戦う戦士を育成する学校でなぜ対人戦闘の訓練を行うのかと言うと、狂獣と戦う戦士になれなかった場合に人間相手の問題を解決する部署に配属されても大丈夫な様に対人戦も訓練しているのだ。

 

「心配だなぁ・・・」

「別に、クラスに友達がいない訳じゃない」

「・・・・・・友達できたの!? 誰々?」

 

 思いもしなかった返答に目を大きく見開き驚き、思わず大きい声を出してしまう。

 そして、凛の問に対してまたしても思いもしなかった返答が帰ってきた。

 

「・・・お前」

「・・・・・・・・・・・・えっ、何て?」

「いや、だからお前だって」

「えっ・・・なっ・・・・・・は?」

「だからお前だよ、凛。お前が居れば別に友達が出来なくても大丈夫だろ」

 

 そう雷音告げると数秒後の沈黙の後に凛の叫びが鳴り響いた。

 

「・・・あぁぁぁぁぁぁーーー!」

 雷音の突拍子もない返答に、顔を耳まで赤くし、これでもかと言うぐらい叫びながら、少し前を歩く雷音の背中を何度も叩く。

 

「痛えから、そう何度も叩くな!」

「うるさいバカ雷音!」

 

 興奮状態になった凛をなだめ、少し少し落ち着きを取り戻した所で、雷音は凛になんで怒って居るのか質問することにした。

 

「なんで怒ってるんだよ、いったい俺がお前に何をしたって言うんだ?」

「うるさい、なんであんたはそう恥ずかしげもなくあんな事が言えるのかな?」

「あんな事ってなんだよ?」

「うっ・・・・・・えっと・・・」

「なんだよ」

 

 口篭る凛に対して間髪入れずに問い詰める。

 

「それは・・・その・・・自分の口から言うのは、恥ずかしいと言いますか・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「無言の圧力をかけてくるのやめてよ。もぉわかった言うよ」

 

 頬を赤く染め、指と指を絡めモジモジしながら雷音の問に答える。

 

「私がいれば良いって、急に言うから」

「いや俺は『大丈夫』て言ったんだが?」

 

 雷音のその言葉対して、食い気味に凛は反論する。

 

「意味は同じようなもんでしょ! 全く、あんな事言ってて恥ずかしくならないの?」

「別に何も。小さい頃から俺とお前はずっと一緒だったし、それに本当の事を言って何が悪いんだ? 孤児院の頃はよく2人だけで遊んでたし、寝る時だって一緒だったから、俺的にはお前が近くに居るのは普通だし、家族だから。お前と居れれば別に友達はいらない」

 

 普段は口数が少なく無愛想だが、たまにこうして口数が多くなる時がある。そういう時は大抵、普通の人からしたら恥ずかしくて言えない様なセリフをなんの躊躇いもなく突然言ってくるのだ。

 

「昔はそうだけどさ、でも私達ももう子供じゃないし・・・それに私は雷音の事・・・・・・」

 

 最初は覇気のあった声で話していたが、凛の声は徐々に小さくなり、雷音に聞こえないくらい小さな声でぼそりと呟いた。

 

「なんか言ったか?」

「何も言ってないよ!バカ雷音!」

「そっか・・・なんて言うかこうして2人で歩いていると、お前が孤児院に入ったばかりの頃を思い出すな」

「うん、そうだね」

 そう言いながら2人は、孤児院に入ったばかりの頃の懐かしい話をしながら歩みを進め、時には言い合いをしながら寮への帰路へとついた。

 

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