妖精のご主人様
ささやく唄が聴こえる。
ーーおんなのこは何で出来てるの?
それはね、あまい砂糖菓子と良い香りのお花で出来てるの。
小さな手が箱の中から取り出したのは、白くてすべすべした縦長の二頭身で出来ている人形。
ーーおんなのこには何があるの?
それはね、小さなトゲとちょっとしたスパイスがあるの。
小さく口ずさみなから、細くて小さい手で上から下まで、右から左へ、表から裏へ…順々にひたすら優しく撫でられて形作っていく。撫でながらひとつひとつのパーツが作られる。
髪と目は黒、肌は白く、頬は淡い薔薇色、唇はふっくらした桃色。手足は細くて長い。
ーーさあ、仕上げましょう
身体の中心には、甘い砂糖の結晶を一欠片。そこにジンジャーシロップをひとたらし。
ーーできた、できた
妖精のシュガードール
ーー目をあけてごらん
「何をしましょうか、ご主人様?」
これから小さな妖精と、甘くてちょっぴりピリッとしたシュガードールの物語が始まる。
シュガードールは妖精の言うことを聞くだけ。
だって、妖精がシュガードールのご主人様なのだから。