九重宗佑という男②
九重家をこの世から消すか、家族をこの世から消すか。
じいちゃんの誇らしそうな顔が頭によぎったが、迷わず家族を助けることを選んだ。
Kが記憶操作を行うところを隣で見ていた。
BAKUに関わる人間の記憶の中から九重という名前は抹消された。
俺は二条宗という名前になった。
Kが用意した名前だ。
『あんた何がしたいんだ?』
Kの目的を知るため質問をしてみた。
『...俺は八神香織と契約している魘魔を助ける。そして、力を借り共に恐怖で支配する世界を作る』
話してくれる割合は半々だったが、あいつはゆっくり語った。
二条宗としての生活が始まってみると他の師団長は八家で嫌だったが、それを鼻にかけることはない人達だった。
若いのに優秀な人材が集まっていた。
中でも八神香織は群を抜いていた。
憧れる思いもいつからか、兄から妹へ。
汚れた俺には眩し過ぎるくらい輝いて見えた。
自分の経験や知識それら全てが他の師団長達より劣っているように思えたが、毎日が新しい発見の連続で段々楽しくなってきた。
そんな毎日の中で、ふと思うのだ。
“俺が二条宗ではなく九重宗佑のままだったらどんな関係になったいただろうか”と。
そんなものはただの空想で現実になることはない。
八神香織から寮の屋上に呼び出された。
久々に本当の名前を呼ばれてドキっとした。
彼女は俺の正体に気がついていた。
全部話したかったけど、あいつに見られているか分からない。
聞かれたことにだけ答えた。
「...助けて...」
本当は自分自身で決着を着けるべきなのは分かっている。
強過ぎてかっこいい彼女に情けなくも助けを求めた。
八神香織はフッと笑った。
「当たり前。この2年間、一緒に過ごしてきた仲間でしょ」
騙していたのに当たり前と言ってくれることに涙が出た。
「ありがとう...」




